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問いのチカラと失敗する勇気

 ファシリテーターとは、答えを持たない人のことだ。

 けれど、私たちはいつも正しい答えを求められる社会の中で生きている。
 上司は「結論を出せ」と言い、会議では「落としどころ」を探す。
 だからこそ、LEGO® SERIOUS PLAY®(レゴ・シリアスプレイ)の場に立つと、ほとんどの人が最初に戸惑う。

 「……何をつくればいいんですか?」
 問いに対して、正解がないことに、不安を覚えるのだ。

 だが、LEGO® SERIOUS PLAY®のファシリテーターは微笑んで言う。
 「あなたが思う今の状況を、形にしてみてください」
 その瞬間、参加者の手が動き出す。
 そして、思いもよらなかった自分自身の答えが、ブロックの上に立ち上がる。

 人は、正解のある問いではなく『考えざるを得ない問い』に出会ったときに成長する。

 LEGO® SERIOUS PLAY®の問いは、その構造を巧みに利用している。それは『知識を問う』ものではなく『意味を問う』ものだ。
 「あなたにとって、理想のチームとは何ですか?」
 「この組織を動かしている見えない力は何でしょう?」
 「この問題を、もし動物で表すなら?」
 答えは誰にもわからない。
 けれど、手を動かすうちに、確かに何かが見えてくる。

 LEGO® SERIOUS PLAY®では、ファシリテーターが一方的に導くことはない。むしろ、場の流れを信じ、参加者の手を信じる。それは、制御ではなく、信頼の構造だ。

 問いを投げ、沈黙を待つ。
 そして、誰かが語り始める瞬間を、見守る。

 驚くべきことに、沈黙の中で起こる思考の準備こそが、最も豊かな時間なのだ。

 ブロックを見つめるまなざしの奥では、脳が全速力で動いている。
 そして、形になった瞬間、誰もが自分の言葉を見つける。

 そのとき、ファシリテーターの仕事は、もう半分終わっている。

 このメソッドが教えてくれるのは、問いのチカラである。
 良い問いは、心を動かす。
 それは、閉ざされた構造に小さなひびを入れるようなものだ。

 「正しい答え」を求める問いは、構造を固定する。

 けれど「どうしてそう思うの?」と問うことで、構造は自ら動き出す。
 LEGO® SERIOUS PLAY®の問いは、まるで扉のようだ。
 開くとき、世界が変わる。

 だが、そのためには「失敗を許す場」が必要になる。

 LEGO® SERIOUS PLAY®が創り出す空気の中では、誰もが「やってみる」ことを許される。
 積みすぎて崩れてもいい。
 言葉を選び間違えてもいい。
 むしろ、その崩れの中にこそ、新しい意味が隠れている。

 私がファシリテーションの現場で見た最も印象的な瞬間は、ある管理職の言葉だった。


 「これまで部下の意見をまとめることばかり考えていたけれど、今日は聴くってこういうことなんですね」
 彼のモデルは、倒れた塔と、その下に支える小さなブロックだった。
 崩れることを恐れていた自分を、形が教えてくれたのだ。

 失敗する勇気。
 それは、構造を変えるための第一歩だ。
 LEGO® SERIOUS PLAY®のテーブルの上では、失敗が罰ではなく、発見になる。壊して、つくり直す。壊すたびに、少しだけ世界の見え方が変わっていく。

 ファシリテーターに必要なのは、うまく進める技術ではない。
 むしろ、信じて待つ技術だ。
 問いを投げたあと、相手が考え、沈黙し、手を動かし、そして語り出すまでの時間を信じる。
 その信頼が、対話の構造を支える。

 LEGO® SERIOUS PLAY®の現場には、必ず静かな瞬間がある。
 誰も話さず、ただ手を動かす。だが、その沈黙の奥に、最も重要な変化が芽生えている。問いが、形を通して人の内側に届いているのだ。

 「問い」は、相手を変えるものではない。
 相手の中に動く構造を生み出すものだ。

 その変化を信じて待てるかどうか――それが、LEGO® SERIOUS PLAY®を扱う人に求められる覚悟だと思う。

 正解を探す時代は、もう終わった。
 これからの時代を動かすのは、“問いを立てる人”だ。
 LEGO® SERIOUS PLAY®が教えてくれるのは、そのための勇気だ。
 失敗を恐れず、構造を壊し、問いで未来を組み直す。

 ――それが、ブロックで考えるということなのだろう。


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レゴ®シリアスプレイ®メソッドと教材活用トレーニング修了
認定ファシリテータ:加々本裕樹

次回は第6回「遊びながら、世界をつくり変える。」
──LEGO® SERIOUS PLAY®が導くのは、会議術ではなく、思考の革命。
“遊び”の力で、私たちはどこまで世界を再構築できるのか。

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