無人島転生 第9話 「ついに温泉完成!でも問題発生」
「今日こそは絶対に温泉を完成させる!」
エリが朝の洞窟で拳を振り上げた。髪の毛は相変わらず短いままだが、表情は希望に満ちている。
大失敗から二ヶ月。四人は温泉への夢を諦めていなかった。
「前回の反省を活かして、今度は違う場所を探しましょう」
ユミが手作りの島の地図を広げる。竹紙に木炭で描かれた地図には、前回掘った井戸に大きく「×」印が付いている。
「聖なる泉の周りをもっと詳しく調べたんだ」
タケシが報告する。この二ヶ月で日焼けして、完全に島民らしい逞しさを身につけている。
「北西80メートルの場所、地面がめっちゃ熱いんだよ」
「足で踏むとほんのり温かいレベルじゃなくて、本当に熱いんです」
アヤが確認を取る。事務職らしい慎重さで、データを記録した竹の板を見せる。
四人は希望を胸に、新しい候補地へ向かった。
「うわ、本当に熱い!」
エリが地面に手を置いて驚く。
「これは期待できそう!前回とは全然違う!」
「地熱の強さが明らかに違いますね」
ユミが看護師らしく慎重に温度を確認する。
「これなら温泉の可能性が高いです」
タケシが改良版の掘削道具を取り出す。
「今度は石の刃も鋭く研いだし、木の柄も丈夫にした。前回の教訓を活かしたぜ」
「分業制も前回の反省で改善しました」
アヤが作戦表を見せる。
「30分交代制で疲労を軽減、掘る場所も正確に印をつけます。効率化です」
「よし、今度こそリベンジだ!」
四人が気合を入れて、掘削開始。
前回の経験を活かした四人の動きは格段にスムーズだった。
「おお、前より全然掘りやすい」
エリが汗を拭いながら言う。服装も島生活に慣れて、動きやすい格好になっている。
「土質も前回より柔らかいみたいです」
ユミが土の状態を分析する。
「やっぱり場所選びが重要だったんだな」
タケシが納得しながら、力強く掘り進める。
一時間後、深さ50センチに到達。
「順調順調!」
アヤが記録を取りながら励ます。
「前回はここまで来るのに3時間もかかったのに」
二時間後、深さ1メートル。
「前回より断然早いペース!」
エリが興奮している。
「このまま行けば、本当に温泉が見つかるかも!」
三時間後、深さ1メートル50センチ。
そのとき…
「あ、なんか水の音が…」
エリが作業の手を止めて耳を澄ます。
「本当だ、チョロチョロって音がする」
ユミも気づく。
「水が出てきたぞ!」
タケシが興奮して叫ぶ。
穴の底から、温かい水が湧き出してきた。
「今度は…」
四人が恐る恐る手を浸す。
「あったかい!」
「本当にあったかい!」
「やった!温泉だ!」
「ついに成功した!」
四人が抱き合って喜んだ。エリとユミ、アヤとタケシ、そして四人全員での群れ抱擁。
汗と土にまみれた四人だったが、その表情は最高の笑顔だった。
しかし、喜びもつかの間。現実的な問題が浮上した。
「でも、これだけじゃ入浴できないよね」
エリが冷静になって指摘する。
「深さが足りません。せめてお風呂の高さくらいは欲しいところです」
ユミが看護師らしく衛生面を考慮して提案する。
「周りも石で囲って、お湯が逃げないようにしないとな」
タケシが建設現場の経験を活かして設計を考える。
「温泉設備の建設プロジェクトですね」
アヤがワクワクしながら言う。
それから一週間、四人は温泉設備作りに没頭した。
穴をさらに深く掘り、周りを平らな石で囲み、腰掛け用の石を設置。
竹で作った簡易的な脱衣所も完成させた。
「ついに完成!四人の秘湯!」
エリが感動で涙ぐむ。
「美肌効果もありそうな、いいお湯ですね」
ユミが湯質をプロらしくチェックする。
「俺たちが一から作った温泉だ」
タケシが誇らしげに胸を張る。
「皆さん、本当によく頑張りました」
アヤが四人の努力を労う。
しかし、ここで大問題が発生した。
「えーっと…誰から入る?」
エリが何気なく問題提起したとたん、四人が沈黙。
空気が急に重くなった。
「男女一緒は…」
ユミが顔を赤らめる。
「さすがに混浴は…」
アヤも困惑して俯く。
「俺は別に構わないけど」
タケシが言いかけて、三人の女子の鋭い視線に射抜かれる。
「いや、ダメだろ、普通に考えて」
慌てて訂正した。
「じゃあ、公平にくじ引きで決めましょう」
アヤが建設的な提案をする。
「それがいいね!」
エリが賛成する。
「でも、男子一人、女子三人じゃ不公平では?」
ユミが指摘する。
「じゃあ、一番を引いた人が最初に一人で入る。残りは後で相談」
アヤがルールを決める。
四人で竹の棒を使ったくじ引き。
「せーの!」
四人が同時にくじを引く。
「あ…俺が一番だ」
タケシが短い棒を見せる。
「タケシの勝ちか」
エリが苦笑い。
「じゃあ、タケシが最初に入って、私たちは後で」
ユミが仕方なく言う。
「なんか申し訳ないな…」
タケシが遠慮がちに言う。
「いえいえ、くじ引きで決めたんですから」
アヤがフォローする。
「じゃあ、行ってきます」
タケシが照れながら温泉に向かう。
三人は少し離れた場所で待機することにした。
「あー、気持ちいい!」
タケシの満足そうな声が聞こえてくる。
「おー、これは確かに最高だな!疲れも取れるし、体もポカポカする」
しばらくして、女子三人の間に微妙な空気が流れ始めた。
「なんか…寂しくない?」
エリが呟く。
「そうですね。せっかくみんなで作ったのに」
ユミも同感だった。
「一人で入ってるタケシも寂しそう」
アヤが心配そうに言う。
「でも、男女一緒は…」
ユミが顔を赤らめる。
「みんなで作った温泉なのに、一人ずつしか入れないなんて」
エリが不満そうに言う。
「タケシも一人で入ってて楽しいのかな?」
三人が温泉の方を見つめる。
確かにタケシの声は聞こえるが、どこか寂しそうに聞こえた。
「ねえ…」
エリが意を決したように口を開く。
「みんなで一緒に入りたくない?」
「え?」
ユミとアヤが驚く。
「でも、男女一緒は…」
「目をつぶってもらえばいいじゃん!」
エリが提案する。
「そ、そんな…」
ユミが顔を真っ赤にする。
「でも確かに、せっかくみんなで作ったのに」
アヤも複雑な表情。
「一人ずつじゃ、なんか寂しいよね」
エリが続ける。
「タケシだって、本当は寂しいと思う」
三人が温泉の方を見つめる。
「目をつぶっててもらって、みんなで入る…」
ユミが考え込む。
「お湯に浸かってれば、そんなに見えないし」
アヤも悩んでいる。
「よし!行こう!」
エリが決断する。
「え?本当に?」
「みんなで作った温泉だもん。みんなで入らなきゃ意味ないよ」
三人が顔を見合わせる。
「でも、絶対に目をつぶってもらうって約束で」
ユミが条件を出す。
「もちろん!」
エリが頷く。
「じゃあ…行きましょうか」
アヤも決心がついたようだ。
三人はタオル代わりの布を持って、そっと温泉に向かった。
「タケシ!」
エリが声をかける。
「え?どうした?」
タケシが振り返ろうとする。
「ダメ!こっち見ちゃダメ!」
三人が同時に叫ぶ。
「え?え?」
タケシが混乱している。
「目をつぶって!絶対に振り返らないで!」
ユミが指示する。
「わ、わかった!何が起こってるんだ?」
タケシが目をつぶったまま温泉に浸かっている。
「みんなで入りたくなったの」
エリが恥ずかしそうに説明する。
「え?みんなで?」
「でも絶対に見ちゃダメよ!」
アヤが念を押す。
「見ません!見ません!」
タケシが必死に目をつぶったまま答える。
三人がそっと温泉に入る。
「あ…温かい」
エリが小声で呟く。
「本当に気持ちいい」
ユミも小さく感動する。
「みんなで入ると…なんか特別な感じ」
アヤがしみじみ言う。
四人が同じ温泉に浸かっている。
タケシは頑なに目をつぶったまま、三人は恥ずかしそうにしながらも嬉しそう。
「やっぱりみんなで入る方がいいね」
エリが満足そうに言う。
「そうですね。一人じゃ寂しかったです」
ユミも同感だった。
「タケシはどう?」
アヤが聞く。
「俺も…一人は寂しかった」
タケシが正直に答える。
「みんなでいる方が楽しい」
四人の間に、特別な一体感が生まれていた。
しかし、そんな特別な時間に事件が発生した。
「もうちょっと温度を調節してみようかな」
エリが良かれと思って魔法を使おうとする。
「ちょっと待って、エリの魔法って…」
ユミが止めようとしたが、時すでに遅し。
エリが温度調節魔法を発動。
「熱っ!」
突然お湯が熱湯に変わった。
四人が慌てて立ち上がる。
「うわああああ!」
「見ちゃダメ!」
三人が叫ぶが、タケシは目をつぶったまま。
「冷たっ!」
今度は氷水レベルに下がる。
「熱っ!冷たっ!熱っ!冷たっ!」
温泉の温度が激しく変動して、四人が大騒ぎ。
「エリ、魔法止めて!」
ユミが叫ぶ。
「止め方がわからない!」
エリがパニック状態。
温度変化に慌てた四人が、うっかり距離が近くなってしまう。
「あ…近い」
アヤが慌てる。
「目、つぶってる?」
ユミがタケシに確認。
「つぶってます!でも、なんか温度が…」
タケシも困惑している。
「落ち着いて!深呼吸して!」
アヤが必死にエリを落ち着かせようとする。
なんとか魔法を止めたエリ。温泉は元の適温に戻った。
「はあ…はあ…やっと止まった」
エリが疲れきっている。
「もう、エリったら」
ユミが苦笑いしながら言う。
「でも、みんなで大騒ぎして、なんか楽しかった」
エリが悪びれずに笑う。
「確かに、忘れられない初温泉になりました」
アヤも笑いながら同意する。
「俺も目をつぶったまま大騒ぎするの、初めてだ」
タケシも笑っている。
四人が同じ湯に浸かって、同じトラブルを体験したことで、不思議な一体感が生まれていた。
温泉が適温に戻り、四人は改めてゆっくりと湯に浸かった。
「やっぱりみんなで入ると格別だね」
エリがしみじみ言う。
「そうですね。一人だと寂しかったです」
ユミも同感だった。
「みんなで作った温泉だから、みんなで入らないと意味がないですよね」
アヤも満足そうだ。
「俺も一人は寂しかった。やっぱりみんなでいる方がいい」
タケシが正直な気持ちを話す。
ただし、まだ目はつぶったままだ。
「でも、ちゃんと目をつぶっててくれてありがとう」
ユミが感謝する。
「当然だろ。約束は約束だ」
タケシが律儀に答える。
湯気の中で、四人がそれぞれの距離を保ちながら、でも確実に一緒にいる実感を味わっていた。
「お肌もすべすべになってきた」
エリが腕を撫でながら言う。
「温泉の効果って本当にあるんですね」
アヤも湯の感触を楽しんでいる。
「疲れも取れるし、心も温かくなる」
ユミがリラックスしている。
「みんなでいると、それだけで特別な感じがする」
タケシも同じ気持ちだった。
四人の間に、新しい形の絆が生まれていた。
男女という境界を越えて、でもお互いを尊重し合う、特別な関係性。
「これからもみんなで入ろうね」
「湯けむりで目をつぶってなくてもあまり見えない気がする」エリが提案する。
「でも、ちゃんとルールは決めましょう」
ユミが現実的な話をする。
「目をつぶるのは基本として…」言いかけると、
「見えないって、タケシかわいそうだよ」
タケシは目をつぶったまま黙り込む。
だれも何も言わない。
しびれを切らしてタケシが「みんながいいよって言うときだけ目を開けるよ」
その意見にみんな賛成した。
四人がそれぞれのペースで温泉から上がった。
「あー、生き返った」
エリが髪をタオル代わりの布で拭きながら言う。
「お肌もすべすべになりました」
ユミが頬を触って確認する。
「みんなで入った温泉は格別でした」
アヤがしみじみと感想を述べる。
「俺も最高だった。やっぱりみんなでいると違うな」
タケシも満足そうだ。
湯上りでほんのり赤らんだ四人は、それぞれが特別な美しさを放っていた。
共同作業で作り上げた温泉を、四人で分かち合った特別な体験。
「これからは毎日みんなで入ろう」
エリが提案する。
「そうですね。でも、きちんとルール通りに」
ユミが念を押す。
「もちろん。お互いを尊重し合って」
アヤも同意する。
「約束は絶対に守る」
タケシも真剣に答える。
四人の間に、新しい信頼関係が生まれていた。
四人で温泉を見つめる。
「でも、これはこれでいいよね」
エリが前向きに言う。
「そうですね。みんなで温泉に入れるなんて、二ヶ月前は夢みたいでした」
ユミが感慨深く言う。
「これからは毎日温泉に入れるんだな」
タケシが嬉しそうに言う。
「温泉ライフの始まりですね」
アヤがまとめる。
夕日が温泉の湯面を染めて、幻想的な光景を作り出していた。
湯気がゆらゆらと立ち上り、オレンジ色の光に包まれている。
「きれい…」
四人が見とれる。
「明日も入ろうね」
エリが提案する。
「もちろんです」
ユミが頷く。
「毎日が楽しみになるな」
タケシも同意する。
「皆さんとなら、どんなことでも楽しくなりますね」
アヤが微笑む。
「今度は温泉マナーを作りましょう」
ユミが提案する。
「おお、それいいな」
タケシが賛成する。
「温泉十ヶ条とか?」
エリがアイデアを出す。
「皆さんで決めましょう」
アヤがまとめる。
四人は温泉を囲んで、これからの温泉ライフについて楽しく話し合った。
「入浴時間は30分まで」
「使用後は清掃する」
「入浴前は体を洗う」
「お互いのプライバシーを尊重する」
次々とルールが決まっていく。
星空の下、湯気が立ち上る温泉は、四人の新しい憩いの場となった。
温泉完成の喜びと、四人の絆がさらに深まった一日。
現代人の贅沢な悩み「混浴問題」も、四人なりの解決方法を見つけることができた。
「温泉があるだけで、生活が豊かになった気がする」
エリがしみじみと言う。
「本当ですね。ちょっとした贅沢ですが、心が豊かになります」
ユミが同意する。
「明日からの楽しみが一つ増えた」
タケシも嬉しそうだ。
「みんなで作った温泉。これからも大切に使いましょう」
アヤが四人の気持ちを代弁した。
四人の島生活に、新たな楽しみと絆の深まりをもたらした温泉。
これからも四人の憩いの場として、大切な思い出を作り続けていくことだろう。
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