無人島転生 第5話 「服は一着だけ問題の大惨事」
四人の島生活も軌道に乗り始めた頃、ユミが朝の身だしなみチェックをしながら、重要な問題を指摘した。
「皆さん、最近服が汚れてきませんか?」
エリが自分の白い布の服を見下ろす。確かに、泥汚れ、食べ物のシミ、汗染みなど、様々な汚れが蓄積されている。
「そういえば、結構汚いかも」
「俺のも、建設作業で泥だらけだな」タケシが袖の汚れを確認する。
「清潔感を保つためにも、洗濯が必要ですね」アヤが事務的に分析する。
「よし、洗濯しよう!」エリが元気よく提案した。
しかし、タケシが重要な事実を指摘する。
「ちょっと待てよ。俺たち、服って一着しかないよな?」
四人が顔を見合わせる。
「え?」
「あ…」
「そういえば…」
転生時に着ていた白い布の服。それが、文字通り「全財産」だった。
「脱いだら…裸になっちゃう」エリが青ざめる。
「代わりの服も、下着もありませんね」ユミが医学的事実を淡々と述べる。
「でも、このまま汚れた服を着続けるのは不衛生です」ユミが続ける。「皮膚病の原因にもなりますし、他の病気のリスクも…」
「じゃあ、どうすればいいの?」アヤが困惑する。
四人で対策会議が開催された。
「一人ずつ、順番に洗濯するしかないんじゃない?」エリが提案する。
「その間、脱いだ人は…?」タケシが恐る恐る聞く。
「大きな葉っぱとかで隠すしかないでしょうね」ユミが現実的に答える。
「葉っぱ一枚で?」アヤが不安そう。
「他に方法ないし…」
こうして、前代未聞の「順番洗濯プロジェクト」が始まった。
「誰から行く?」
四人で顔を見合わせる。誰も進んで裸になりたくない。
「じゃんけんで決める?」エリが提案。
「それは…」ユミが躊躇する。
「くじ引きにしましょう」アヤが代案を出す。
「いや、俺が最初にやるよ」
タケシが男らしく申し出た。
「男は度胸だからな。これくらい平気だ」
強がっているが、声が少し震えている。
「本当に大丈夫ですか?」ユミが心配そう。
「大丈夫だって。男の裸なんて、大したことないだろ」
「でも、恥ずかしくないんですか?」エリが素朴な疑問。
「恥ずかしくないよ…俺は男だぞ?」
実際には、タケシは相当恥ずかしかった。
まず、隠すための道具探しから始まった。
「大きな葉っぱはどこだ?」
タケシは森を歩き回って、体を隠せそうな大きな葉っぱを探す。
「これはどうかな?」
バナナの葉のような大きな葉っぱを見つけたが、実際に体に当ててみると…
「小さい」
「もっと大きいのを探しましょう」ユミがアドバイス。
「これは?」
今度はさらに大きな葉っぱ。でも破れやすそう。
「破れたら大変です」アヤが心配そう。
「じゃあ、何枚か重ねて使う?」
「それは良いアイデアですね」
結局、タケシは大きな木の板を見つけてきた。
「これなら確実だろ」
盾のような板を抱えるタケシ。
「でも、重そうですね」ユミが心配。
「男の力を舐めるなよ」
いよいよ、タケシの洗濯タイム開始。
「覗いてもいいぞ」
「覗きませんよ」エリが答える。
「当然です」ユミも同意。
「プライバシーは尊重します」アヤも約束。
川辺に向かうタケシ。女子三人は新たな家として見つけた洞窟で待機。
しばらくして、タケシの声が聞こえてきた。
「うわあああ!」
「どうしました?」ユミが心配して声をかける。
「板が重すぎて、バランス崩した!」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫だけど…板が川に落ちた」
女子三人、顔を見合わせる。
「隠すものがなくなっちゃった?」エリが小声で聞く。
「そういうことになりますね」アヤが冷静に分析。
「タケシさん、葉っぱを使ってください」ユミが提案。
「葉っぱって、どれだ?」
「適当な大きな葉っぱを」
しばらくガサガサという音が聞こえる。
「これでどうだ?」
が、大丈夫ですか?」
「まあ、なんとか…見たけりゃどうぞ!」
タケシの洗濯が終了し、今度は服が乾くまでの待機時間。
「乾くまでどのくらいかかりますか?」タケシが洞窟から聞く。
「天気次第ですが、3~4時間は必要でしょうね」ユミが答える。
「3〜4時間?」
「そんなに長いんですか?」アヤも驚く。
「現代だったら、乾燥機で30分なのに」エリが現代生活を懐かしむ。
結果、タケシは葉っぱ一枚で3時間以上過ごすことになった。
「退屈だ…」
「我慢してください」
「葉っぱって、意外と風通しがいいんだな」
「当然です」ユミが医学的に答える。「繊維じゃないので保温性はありません」
「もっと早く言ってくれよ」
1時間経過。
「まだ乾かない?」
「まだですね」
「俺、限界かも」
そこに突然の雨雲。
「あ、雨が降りそう」エリが空を見上げる。
「洗濯物を取り込まないと」ユミが慌てる。
「でも、タケシさんが…」
「緊急事態だ!みんな洞窟に避難!」タケシが叫ぶ。
雨が降り始めて、四人とも洞窟に避難することになった。
洞窟の中。
服を着た女子三人と、葉っぱ一枚のタケシが同じ空間に。
「あの…」
「えーっと…」
「すみません…」
気まずい空気が流れる。
「タケシさん、寒くないですか?」ユミが心配して聞く。
でも、視線はしっかりと違う方向を向いている。
「寒いけど、我慢する」
「葉っぱの布団お貸ししましょうか?」アヤが提案。
「ありがたい」
葉っぱの布団を渡そうとするアヤだが、タケシの方を見ないようにして手探りで渡す。
「あの、こっちです」
「どっち?」
「えーっと…」
結局、エリが仲介して毛布を渡すことに。
「これで少しはマシかな」
葉っぱの布団に包まったタケシ。でも、相変わらず下は葉っぱ一枚。
「あっ、火を付ければいいんだ」洞窟の入り口で焚火をはじめる。
「おぉあったかい」タケシは感謝するように拝む格好をする。
雨が強くなってきて、洗濯物もずぶ濡れ。
「これは、乾くのがさらに遅くなりますね」ユミが軽く言う。
「マジで?」タケシの声に絶望感。
「少なくとも半日は必要でしょう」
「半日?」
タケシの洗濯実験は、予想以上の長期戦になってしまった。
通り雨が止んで、ようやくタケシの服が乾いた頃には夕方になっていた。
「やっと着られる」
「お疲れ様でした」
「次は誰の番?」
四人が顔を見合わせる。タケシの苦労を見ていた女子三人は、誰も進んで名乗り出ない。
「明日にしませんか?」アヤが提案。
「そうですね。今日は疲れました」ユミも同意。
「私も、タケシの大変さを見てたら、ちょっと…」エリも躊躇。
「よし、明日はエリの番だな」タケシが決めつける。
「え?なんで私?」
「俺が今日やったから、次はエリだろ」
「そうね」次は自分とばかりに頷いた。
翌日、エリの洗濯の番がやってきた。
しかし、エリのアプローチは、タケシとは正反対だった。
「えーい、もう面倒くさい!」
エリは服を脱ぐと、隠すものを探すことなく、そのまま堂々と立っていた。
「エリさん?」ユミが慌てる。
「どうしたの?」
「その…隠さなくて大丈夫ですか?」
「誰も見てないし、別にいいじゃん」
エリの楽観的な性格が発揮された瞬間だった。
「でも、恥ずかしくないんですか?」アヤが心配そう。
「最初はちょっと恥ずかしかったけど、慣れちゃった」
「慣れって…」
「開放的で気持ちいいよ♪」
エリは普通に歩き回っている。
「服って、結構窮屈だったんだなあ」
「エリさん、せめて葉っぱくらいは…」ユミが提案。
「面倒くさいよ〜」
でも、無意識のうちに手で隠すような仕草をしているエリ。完全に平気というわけでもなさそう。
「タケシ、見ちゃダメよ」
「見てないって」
タケシは必死に別の方向を向いている。
エリの洗濯時間も、通り雨に見舞われて長期化。
でも、エリは雨の中で踊りだす。
「雨って気持ちいいね」
「風邪を引きますよ」ユミが心配。
「大丈夫、大丈夫」
結局、エリも半日以上、全裸で過ごすことになった。
三日目、ユミの番。
ユミのアプローチは、エリとは真逆の完全防御作戦だった。
「まず、隠すための準備を完璧にしてから脱ぎます」
ユミは大きな葉っぱを何枚も集めてきた。
「上半身用、下半身用、側面用…」
葉っぱを体に固定するため、木の棘を安全ピン代わりに使用。
「これなら完璧です」
葉っぱで完全武装したユミの姿は、まるで葉っぱの鎧を着ているようだった。
「すごい技術力ですね」アヤが感心。
「看護師時代に包帯を巻く技術を応用しました」
でも、歩くたびに「ガサガサ」「パサパサ」と音がする。
「ユミさん、音がすごいです」エリが指摘。
「機能性を重視したので、音は仕方ありません」
「まるで歩く森みたい」タケシが苦笑い。
ユミの洗濯時間中、葉っぱが風で飛ばされそうになるハプニングも。
「あ、上半身用が!」
「大丈夫ですか?」
「なんとか…でも、一枚足りなくなりました」
予備の葉っぱで補強するユミ。
「完璧主義って大変ですね」エリが感想。
「安全第一です」
四日目、最後のアヤの番。
アヤは効率性を重視したアプローチ。
「葉っぱを無駄なく使用して、機能的なデザインにします」
器用に葉っぱを体に巻いて、サロンのような形に。
「これなら動きやすくて、見た目も自然ですね」
「おお、なんかオシャレ」エリが感心。
「事務職時代に習った、効率的な作業手順の応用です」
でも、風が吹くとサロンの巻きが緩んできて、ヒヤヒヤする。
「あ、ちょっと緩んできた」
「手で押さえないと…」
「大丈夫ですか?」
「なんとか…でも、計算より風が強いですね」
アヤの洗濯中、突然野生動物(リスのような小動物)が出現。
「きゃ!」
驚いたアヤが動いた拍子に、サロンの巻きが解けた。
「危ない!」
とっさにエリが駆け寄って、アヤを支える。
二人とも、一瞬密着状態に。
「あ…」
「え…」
気まずい空気。
「す、すみません」
「い、いえいえ」
四人全員の洗濯が終わった夜。
「みんな、お疲れ様」
「大変だったね」
「でも、服がきれいになって気持ちいい」
「清潔って大事ですね」
四人でその日の体験を振り返る。
「みんな、隠し方が全然違って面白かった」エリが感想。
「エリさんの開放的さには驚きました」ユミが苦笑い。
「ユミちゃんの完全武装も見事だったな」タケシが評価。
「アヤさんの器用さも素晴らしかったです」
「でも、一番大変だったのはタケシさんでしたね」アヤがフォロー。
「最初だから、手探りだったからな」
「でも、1日ひとりしか選択できないなんて非効率だよな」
「そうね」みんなが賛同する。
「次回はもっと効率的にやりましょう」ユミが提案。
「次回?」エリが聞き返す。
「服は定期的に洗わないと」
「うわあ、またやるの?」
「当然です。衛生管理は重要ですから」
四人は顔を見合わせる。
「せめて月一回くらいにしない?」エリが交渉。
「週一回は必要です」ユミが譲らない。
「間を取って、二週間に一回は?」アヤが調整案。
「それなら…」タケシも納得。
こうして、四人の「定期洗濯プロジェクト」が制度化されることになった。
「でも、慣れてきたら、案外平気になるかもね」エリが前向きに言う。
「そうですね。人間の適応力は素晴らしいです」ユミが医学的に分析。
「次回は、もっと効率的にしないとな。男は一人だし」タケシが決意。
「隠し方の技術向上も大切ですね」アヤが同意。
夜空を見上げながら、四人は今日の出来事を笑い話にしていた。
「現代人って、服に依存しすぎてたのかもね」エリがしみじみ言う。
「確かに。服がないだけで、こんなに大変だなんて」
「でも、だんだん慣れてきた」
「人間って、適応する生き物なんですね」
文明の利便性を改めて実感しつつ、原始的な生活への適応も学んだ四人。服一着だけの生活は、想像以上に複雑で、でもちょっぴり楽しい挑戦だった。
「明日は何をしようか?」
「とりあえず、今日はぐっすり眠ろう」
「清潔な服で眠るのって、気持ちいいですね」
「次の洗濯日まで、汚さないように気をつけよう」
四人の無人島生活は、また一つ新しい日常を獲得したのだった。
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