悪魔先輩との親睦
僕は、できれば距離を置こうと思っていた。
別部署だったし、関わることもないだろう。
そう思っていた。
でも気づけば、可愛がってくれる先輩の1人になっていた。
彼は突然、
「お前、出張連れてくから。」
と言い出し、周りを困惑させるような人だった。
別部署なのに。
今思えば、好きな音楽やカルチャーが似ていたことが、距離を縮めた理由だったのかもしれない。
当時、僕が何度も聴いていた曲がある。
今でも聴くたびに、あの頃を思い出す。
その曲にはこんな歌詞があった。
「もしも結果だけが全てなら人生もただ生まれて死ぬだけだ」
この一節が、とにかく刺さった。
歌詞をそのまま真っすぐ受け止める僕は、
「ここ、めちゃくちゃ刺さるんですよね。歌い方も好きだし、このリリックにやられちゃってます。」
そんな話を悪魔先輩によくしていた。
すると先輩は笑いながら言う。
「ANARCHY最高だよな。」
そこから悪魔先輩節が始まる。
「俺はいつも思うけどさ。
仕事に学歴なんて関係ねーよな。
俺も中卒だし。」
少し間を空けて、
「お前より俺仕事できんだろ。」
そういたずらに笑う。
僕はしっかり愛想笑いした。
今思えば、ああいう何気ない会話の積み重ねが僕と悪魔先輩の距離を縮めた気がする。
悪魔先輩との思い出は、本当にたくさんある。
その中で影響を受けた一つは仕事との向き合い方だった。
悪魔先輩は、忙しいふりをする人が嫌いだった。
だから自分も、必要以上に忙しそうには見せない。
手が空けば、
「俺、今空いてるから手伝うよ。」
そう言って自然に人の仕事を引き受ける。
その姿勢が格好よかった。
だから僕も、仕事を抱えてるふりをやめた。
手が空いたら皆の仕事を手伝う。
困っている人がいたら声をかける。
そんな働き方を少しずつ真似するようになった。
今でもそれが自分の指針になっている。
音楽には、不思議な力がある。
一曲聴いただけで、その頃の景色も、人も、会話まで思い出させてしまう。
今でもこの曲を聴くと、悪魔先輩のとの日々を思い出す。
今は別々の道を歩いている。
それでも、あの頃にもらった言葉や背中は、今でも僕の中で生き続けている。
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