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ドイツ語が読める人は「戻らない訳」をしている?|ドイツ語が読める人の頭の中を知る ー精読で「戻らない訳」を習得しようー

みなさん、こんにちは!はじめまして。ニーナです。

18歳のときに第二外国語でドイツ語を始め、難しくて嫌になりながらもなんとか学習を続け、ゲーテC2 と独検1級(二次試験満点)を取得しました。今ではドイツ語の読解が大好きです。こんなおもしろい言語がある世界に生まれてよかったです。

日独協会にて、ドイツ語講座後のホワイトボードと

さていきなりですが、ドイツ語を学習しているみなさん。
次のドイツ語の文を日本語に訳してみましょう。A2かB1くらい、ドイツ語検定で言うと3級くらいのドイツ語を知っていれば訳せるでしょうか。

📖 Ich denke, dass es wichtig ist, Deutsch zu lernen, weil es dann möglich           wird, auf Reisen nach Deutschland mit anderen auf Deutsch zu   
      kommunizieren.

さてどうでしょうか。例えばこんな訳になりましたか?

  • ドイツ旅行の際にほかの人とドイツ語でコミュニケーションを取ることが可能になるので、ドイツ語を学ぶことは重要だと思います。

これでももちろん、「きれいな日本語訳」としてはよいのですが…

ドイツ語を理解するときのおすすめは、こんな訳を取ることです。

  • 私は思う、|(何を?)それは重要だと、|(「それ」って何?)ドイツ語を学ぶこと(は)、|(なぜ?)なぜなら|それが|そのとき|可能になるからだ、|(「それ」って何が可能になる?)旅行で|ドイツへの|ほかの人と|ドイツ語で|コミュニケーションをとること(が可能になるからだ)。

※元のドイツ語です

📖 Ich denke, dass es wichtig ist, Deutsch zu lernen, weil es dann möglich
      wird, auf Reisen nach Deutschland mit anderen auf Deutsch zu
      kommunizieren.

何を変えたのかと言うと、ドイツ語の語順どおりに、後ろに戻らず訳したのです。

多くの人は、文を最後まで読んでから「きれいな日本語」に整えようとするでしょうか。
でもあえてそうせず、ドイツ語の流れのまま日本語にしています。

さて、ドイツ語を学習しているみなさん、「ドイツ語の文章が読めるようになろう」「読解力を鍛えよう」というとき、何をしますか?単語ひとつひとつの意味を調べてたくさん覚える?もちろんそれもいいかもしれません。

でも、こんな経験はないでしょうか。

  • 単語の意味をひとつひとつ辞書で引いてはみたが、文章全体の意味が分からない…

  • なんとなくこんな意味かなとは思ったけど、選択問題でいつも間違えたものを選んでしまう…

「全体としてなんとなく分かる気がする」だけでは、うまくいかないことがあります。ではいい感じに全体を日本語に訳して理解した方が良い?それは AI に任せれば一瞬で済みます。では人間がやるべき「読解学習」とは、なんでしょうか。

それは、「文の流れのまま、戻らないで処理して文を理解できるようになる」ことです。

私は生徒さんやドイツ語を学ぶ仲間たちに、自分が理解するためであれば「きれいな日本語訳はいらない」ということを伝えています。欲しいのは「きれいな訳」ではなく、「ドイツ語をドイツ語として、そのままの流れで解読する力」です。

つまり「戻らない訳」で理解する、という技術が、読解にはとても重要です。

ではもうひとつ、ドイツ語を日本語に訳してみましょう。戻らない訳の練習です。

📖 練習 ①
      Wichtig sind die Höhe des Schreibtisches, die von der Größe des       
      arbeitenden Menschen abhängt, und der richtige Stuhl.

出典:Mit Erfolg zum Goethe-Zertifikat A2 Übungs- und Testbuch mit Audios, Ernst Klett Sprachen GmbH, 一部改

これを「きれいな日本語訳」にするとこんな感じかもしれませんが…

  • 作業する人の体格に合わせて調整された机の高さと、適切な椅子が重要だ。

欲しい訳は、こんな訳ではないですよね。
特にドイツ語では文頭にある wichtig (「重要だ」)なんて、この「きれいな訳」だと文末に置かれてしまいます。「戻らない訳(文の流れのまま、戻らないで処理する訳)」としては微妙です。

こんな感じの訳にするとよさそうです。

  • 重要であるのは|高さだ|作業机の、|(どんな「高さ」?)大きさに|働いている人の|依存する(そんな机の高さだ)、|そして|適切な椅子だ。

ドイツ語の文の流れのまま、戻らないで訳してきたことがおわかりいただけるでしょうか。

「戻らないで訳す」ためにもうひとつ必要な考え方があります。

精読の「肝」は、「単語ひとつひとつの存在意義を確認すること」です。特に「動詞」に注目します。ドイツ語は動詞が王様です。動詞を見つけ、動詞の活用の形に合う主語(1格)を見つける。これで文の骨格(なにが・なにする)が分かる。
あとは前置詞や再帰代名詞などを取りこぼさないように「なぜこの単語がここにあるのか」を問い続けます。それはまるで単語一つひとつに「ここで何をしているの?」「この文でのあなたの存在意義は何?」と尋ねるような作業です。

例えば今回の例文なら、まずは以下の動詞に注目していかなければいけません。

① sind (主文の動詞)
② abhängt(関係文の中の動詞)

① の sind は、不定詞(辞書に載っている形)は sein です。sein が、主語を何に持つときに活用されている形でしょうか。,,wir” あるいは ,,sie(Sie)” のときの形ですよね。ここでは ,,wir” も ,,Sie” も文脈として登場していないので関係ないとして、主語は ,,sie(彼ら・それら)” になりそうです。つまり、「2つ以上のものが主語になるはずだ」と考えて読むと…この文の主語(1格)のひとつめは ,,die Höhe” ですが、文末にある ,,der richtige Stuhl” も1格で主語だということが分かるのです。ということで、,,die Höhe” が登場した時点で、「おや?これは単数形だから、ということは後で少なくとももう一つ主語になるものが登場するはずだ」と予測しながら読むことが出来るようになります。

② abhängt は、関係文 ,,, die von der Größe des arbeitenden Menschen abhängt,” の中の動詞です。この動詞 abhängen をぜひ辞書で引いてみてください。コンビネーション表現として、,,abhängen von 3” が見つかるはずです。この動詞 abhängen は、動詞ひとつで意味を作っているのではなく、,,abhängen von 3” で「3次第である」「3に依存する」と訳さなければならないのです。
確かに、関係文の中に von がありますよね。ということは、ここでは「von der Größe に依存する」…「大きさ次第である」というイメージで訳せそうです。こういった「動詞の要求」いわば「動詞(王様!)の命令」は、全部「辞書」に書いてあります。辞書を引き、見出しの訳だけでなく隅々まで読むこと。これもとても大事です。
後ろにくっついている ,,des arbeitenden Menschen” は、男性名詞 Mensch の単数2格です。ちなみに Mensch は男性弱変化名詞なので、単数ですが Menschen という形になります。

また、以下にも注目できると、よりよい「戻らない訳」が出来そうです。先ほどの②の中で説明したものもあります。

③ des Schreibtischesの ,,des”
④ ,,, die”
⑤ ,,von”
⑥  ,,des arbeitenden Menschen”

③は男性名詞 Schreibtisch の2格。
④は関係代名詞ですね。先行詞は die Höhe です。 des Schreibtisches は先行詞ではないですよ。関係代名詞が,,, die” という形の時点で、先行詞は女性名詞か複数形の名詞に決まるのです。そして関係文の動詞の形を見れば(abhängt )、この関係代名詞は単数の名詞を先行詞に持っていることが分かります。
⑤と⑥はさきほどの②の説明に登場しましたね。

ということで、以上を踏まえるとこんな訳になるということなのです。(再掲)

📖 練習 ①
Wichtig sind die Höhe des Schreibtisches, die von der Größe des arbeitenden Menschen abhängt, und der richtige Stuhl.
戻らない訳:重要であるのは|高さだ|作業机の、|(どんな「高さ」?)大きさに|働いている人の|依存する(そんな机の高さだ)、|そして|適切な椅子だ。

きれいな訳:作業する人の体格に合わせて調整された机の高さと、適切な椅子が重要だ。

「文の流れのまま、戻らないで処理する」がなんとなく伝わるでしょうか。

私はこの作業を、手書きノートでやることをおすすめしています。以下、わたしが作った手書き精読ノートです。

※見やすいように、左側と右側には同じ文を書いています。自分で学習用にノートを作る場合は、一度読みたい文を左側のようにスペースを広く取りながら書き取り、右側のように書き込みを入れていけばOKです。

「ドイツ語が読める人」、それも「すばやく読んで理解できる人」は、きっと頭の中で「きれいな日本語」に訳して読んだりなどしていないのです。「戻らないで訳」して、そのまま処理している。戻って読まない。

「戻らない訳」は技術です。最初はなかなかうまくいきませんが、一度身につければ、どんなレベルになっても一生使える技術です。「戻らないで内容を理解できる」という能力はリスニングにも重要、さらに「ドイツ語らしい文を作る」基礎になる考え方なので、作文やスピーキングの基礎にまでつながります。少し大げさに聞こえるかもしれませんが、全ドイツ語学習者に知ってほしい、ドイツ語力を底上げするかなり効果的な方法なのです。

精読は、私が愛してやまない学習法であり、ドイツ語学習の肝だと信じている技術です。
今月はその技術の一部を皆さんに紹介します。ぜひドイツ語の読解の面白さを体験してください!

次回、精読のための重要なステップ、「写経」のお話をしていきます。

次回扱う文

📖 練習②
      In der ersten Woche haben ein paar Studenten eine Willkommensführung
      für uns ausländische Studierende gemacht. Sie haben uns die Uni
      gezeigt: die Bibliothek, die Cafeteria und die Multimedia-Räume.
      Hamburg habe ich dann alleine mit dem Stadtplan kennengelernt.

出典:Goethe A2 Modelltest https://www.goethe.de/pro/relaunch/prf/materialien/A2/A2_Modellsatz_Erwachsene.pdf


この記事を書いた人:
ニーナ(セキザワユカ)


公益財団法人日独協会ドイツ語講師。筑波大学人文学類卒業、会社員経験や在ドイツ日本国大使館勤務などを経て、現在筑波大学大学院在学中(言語学専攻)。1995年生まれ、栃木県出身。 ドイツ語の上達支援アドバイスやゲーテ試験・独検対策が得意。YouTubeチャンネル「ドイツ語だいすきクラブ」は登録者19,000人を超える。 資格:Goethe-Zertifikat C2、ドイツ語技能検定試験1級(二次試験満点)

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