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星海の断章 - 第1話「シグナルX」

西暦2143年。
地球の外縁軌道上を周回する深宇宙観測ステーション〈パイシーズ〉の受信アンテナが、二百年ぶりに「それ」を捕らえた。

信号は、周期的な脈動と不規則な間隔を繰り返す――まるで、解読不能な心拍のようだった。
周波数は水素の共鳴線に近く、エネルギーの発信源は太陽系の外縁、オールトの雲の彼方に位置している。そこには既知の恒星も惑星も存在しない。

観測主任のリオラ博士は、データを解析するうちに違和感を覚えた。
信号は単なる電磁波ではない。構造の中に**「三次元座標」**らしきパターンが織り込まれているのだ。
それは、宇宙空間における一点――地球からおよそ光速で3年かかる場所を示していた。

そして、奇妙なことに気づく。
この座標は、かつて人類が送り出した無人探査機〈エンデバーVII〉が消息を絶った位置と、完全に一致していた。

博士は冷静に呟いた。
「……あれは、帰ってきたのか?」

だが、信号はそれだけではなかった。
最後の断片に、音声に変換可能な波形が残されていた。
再生すると、低く響く声がひとことだけ囁いた。

「見ている」

ステーションの観測窓の向こうで、星々は静かに瞬いていた。
その光のひとつが、わずかに動いたように感じたのは、彼女だけだったのだろうか。

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