見出し画像

全上場企業の株主資本コスト(Ke)ランキング!

WACC(加重平均資本コスト)は、株主資本コストKeと、税効果を反映した負債コストKd×(1−法定実効税率)を、時価ベースの資本構成に応じて加重平均したものです。

beluuga.aiは、この構成要素の一つであるKeを全対象企業について緻密に計算しており、企業ごとの画面でその内訳(Rf・β・ERP)まで確認できます。

このデータを使って、国内上場企業3,512社(銀行・証券・保険等の金融機関、REITを除く)をKeでランキングしてみました。

最も高い会社はAbalance(太陽光パネル製造事業、3856)のKe=47.39%、最も低い会社は北陸瓦斯(9537)Ke=4.38%でした。

詳細な計算方法や前提条件はこちらの記事をご覧ください。

上位100社。101位以下はデモ登録(無料)後、ご覧いただけます。

高いKeには、相応のリスク要因があります

上位に並んだ会社を見て「財務面のリスクが高い会社では」と直感的に思うのは、あながち的外れではありません。

ただし、CAPMが株主の要求リターンに織り込むのは、株価の総ボラティリティや企業固有のリスクではなく、分散投資でも取り除けない「市場連動リスク(システマティック・リスク)」です。

CAPMはKe=Rf+β×ERPという式で表され、βは、その企業の株式リターンが市場全体の変動にどの程度反応するかを示す感応度です。Keが高い企業では、このβが高く推計されています。

高Keの背景には、財務レバレッジ、景気循環性、事業リスク、営業レバレッジ、推計βの不安定さなど複数の要因があります。業種平均のβを個社のD/E(有利子負債÷株式時価総額)でリレバーする計算式(βL=βU×(1+(1−法定実効税率)×D/E))を使っている以上、D/Eが高いほどKeが上がる関係は計算式に組み込まれています。

今回上位に並んだ企業では、高いD/Eが、計算上Keを押し上げる主要因になっています。1位のAbalanceはD/E=7.1倍、5位の日産自動車はD/E=7.1倍、4位の日本板硝子はD/E=12.4倍です。

株主は債権者より弁済順位が低い残余請求権者です。業績やキャッシュフローが悪化したときも、元利払いは株主への分配に優先されます。そのため負債が多いほど、株主に帰属する利益やキャッシュフローの変動は増幅されます。

ただしこれはあくまで市場連動リスクの一因であり、Keの高さが直接、その会社の債務不履行リスクや資金繰りの危険度を測っているわけではありません。

この数字は、ある一時点のスナップショットです

D/E(有利子負債÷株式時価総額)の分母は、その日の株価そのものです。

他の計算条件(有利子負債額・アンレバードβ・法定実効税率・Rf・ERP・発行済株式数)が変わらないと仮定すると、株価の下落だけでもD/Eは機械的に上昇し、リレバードβを通じて推計Keが上昇します。

ランキング1位だったAbalanceについて、2026年8月9日時点のKe=約46.2%を起点に試算すると、他の条件が一定の場合、株価が10%下落すればKeは約50.2%、20%下落すれば約55.2%となります。逆に、株価が20%上昇すれば約40.2%となります。

ただし、これは瞬間的な値動きだけの話ではありません。その価格水準が一定期間続いている場合、市場が企業の財務状況や業績見通しを継続的に評価した結果である可能性があります。

ただし市場価格には、負債や業績以外にも成長期待、金利、需給、流動性、ニュースなど多様な要因も反映されます。

なお、この「株価に応じて機械的に動く」という性質は、今回上位に来ている会社群(実測データの信頼度が低く、業種平均から個社のD/Eで再計算している会社)に特に強く当てはまります。大多数の会社では、一定期間の株価収益率から推計した実測βを使用しているため、今日の株価水準がD/Eを通じてKeに直接反映されるわけではありません。ただし、推計期間の更新に伴い、最新の株価変動がβへ徐々に反映されることはあります。

ただし、Keは株主の要求収益率の推計値であり、企業の収益力そのものではありません。

次回は、このKeを実際の収益性(ROE)と比較し、株主資本コストに届いていない企業がどれだけあるかを見ていきます。


データの前提

  • 集計対象: 国内上場3,512社(銀行・証券・保険等の金融機関、REITを除く)

  • 株価・時価総額基準日: 2026年8月5日

  • Keの算定基準日: 2026年8月5日(Rf=2.80%、ERP=5.14%、法定実効税率=30.62%)

  • LTM対象期間: 各社直近12ヶ月(決算期は各社ごとに異なる)

  • 出典・算定: beluuga.ai

国内上場約4,200社を横断分析できるのがbeluuga.aiです。企業ごとのKe・WACC分析を無料デモでお試しいただけます。


執筆・算定: 竹内 真二

ベルーガエーアイ株式会社 創業者・代表取締役。1998年よりM&A業務に従事。リーマン・ブラザーズ、モルガン・スタンレー(東京及びニューヨーク)、自身創業のPEファンド等での実務経験をもとにbeluuga.aiを開発。

この記事は noteマネー にピックアップされました

noteマネーのバナー