⏱️タイムトラベルフォトブック|振り返り✈️北海道 登別グランドホテル&札幌 旅の記録
旅の記憶というのは、時が経つほどに少しずつ輪郭を失っていくものです。風景も出来事も、気づけばぼんやりと霞がかかったようになり、あの日の空気感もどこか遠くへと流れていってしまいます。けれど、不意に写真をめくると、その一瞬に封じ込められた光や声、肌に触れた空気までもが、不思議なほど鮮やかによみがえってくることがあります。
このエッセイシリーズ「タイムトラベルフォトブック」では、そんな写真の記憶を手がかりに、過去の旅へと小さな時間旅行を試みています。
第7回となる今回は、2015年1月末、一泊二日で真冬の北海道を訪れた旅。登別の湯けむりと、札幌の雪景色。妻とふたりで巡った、寒さの中にあたたかさを感じる旅の記憶を、写真とともに振り返ってみたいと思います。
2015年の初めごろ、日本では円安がじわじわと進んでいて、「なんか海外が高くなったなあ」と感じることが多くなっていました。海外からの旅行者にとっては「日本のバーゲンセール!」というタイミングだったので、当時はいわゆる“爆買い”も話題に。一方、日本人にとっては円高のころに比べて海外旅行のハードルがちょっと上がってしまい、「じゃあ国内でゆっくりしようか」という空気があったように思います。そんな流れもあってか、北海道のような国内観光地が再び見直され脚光を浴びていた時期でもありました。
あれから10年が経ちましたが、驚くことに今(2025年)も円安傾向は続いています。コロナ禍や世界情勢、いろんな要因が重なって、「一時的なもの」だと思っていた円安が、なんだか“常態化”してきたようにも感じます。旅行好きにとってはちょっと寂しい話ですよね。
そんな時代背景も思い返しつつ、今回は2015年1月末に一泊二日で訪れた北海道・登別と札幌の旅を、いつものように写真を手がかりに振り返ってみたいと思います。当時の空気感や、最期にあった想定外まで、のんびりたどっていけたらと思います。
北海道・登別と札幌の記憶 〜初日〜
2015年1月31日・土曜日|旅のはじまりは羽田空港から
2015年1月末当時。ふたりともなかなか休みが取りづらい日々のなか、ぽっかり空いた週末を使って、ささやかな北海道旅行を計画しました。登別温泉と札幌を巡る、一泊二日のちょっとした弾丸旅。それでも、旅に出るとなると自然と心が軽くなってくるものです。
最初の一枚は、羽田空港の出発ロビーで撮った電光掲示板の写真でした。そこには「帯広・釧路便 欠航」の文字がしっかり映っていて、今見返してもドキリとする一枚です。
——というのも、この何気ない写真が、後に自分にも降りかかる“ある出来事”の、いわば静かな予告のようにも思えてくるからです。
その想定外な出来事については、最後でお話しするとして、ひとまず今は、旅のはじまりを追いかけていくことにしましょう。まだこの時点では、そんな結末になるなんて、思いもよらなかったのですから。

空港の電光掲示板をあとにして、次の写真は新千歳空港から登別に向かうバスに乗り込んだときの一枚でした。雪景色を窓越しにぼんやり眺めながら、ようやく「北海道に来たなあ」と実感が湧いてきた瞬間です。旅のテンションは、ここから徐々に上がっていきます。
バスのシートに体を預けてホッとしたタイミングで、空港で買っておいた空弁を広げました。写真に写っていたのは、ウニ、カニ、サーモン、イクラがぎゅっと詰まった贅沢なちらし寿司。見た目の彩りだけで気分が上がる、まさに“北海道らしい”海鮮づくしの一品でした。なかでもイクラの粒がしっかり立っていて、プチッと弾けるたびに旅の始まりを祝ってくれているような気がしたのを覚えています。
こうして、バスの揺れとともに、美味しいものと雪景色の旅が静かに動き出しました。


新千歳空港からバスに揺られること約1時間、私たちは登別温泉へと向かいました。車窓から見える雪景色に心を躍らせつつ、旅の始まりを感じていました。
登別温泉グランドホテルに到着すると、まず目に飛び込んできたのは、ホテルの入口に立つ迫力満点の鬼の像。
このホテルは1938年創業の老舗ホテルで、昭和天皇や上皇陛下も宿泊されたことがある「登別の迎賓館」として知られています。館内には、ローマ風の大浴場や日本庭園を望む露天風呂があり、食塩泉・硫黄泉・鉄泉の3つの泉質を楽しむことができます。
ホテルの前で鬼の像と一緒に記念撮影をしながら、これから始まる温泉旅に胸を膨らませていました。この地での滞在が、日常の喧騒を忘れさせてくれる特別な時間になることを期待して、私たちはホテルの中へと足を踏み入れました。
部屋でひと息ついた後、さっそく温泉へ。登別グランドホテルの大浴場は、硫黄泉や鉄泉など、異なる泉質の湯船がいくつもあり、まさに温泉のテーマパークのよう。露天風呂では、雪景色を眺めながらの湯浴みが楽しめ、心身ともにリラックスできました。
夕食は、ホテル自慢のバイキング。北海道の旬の食材をふんだんに使った和洋中約70品の料理が並び、目移りしてしまいます。特に人気なのが、目の前で焼き上げる「星空の黒牛」のステーキや、揚げたての天ぷら、そしてカニの食べ放題。新鮮な魚介類を使った刺身や寿司も絶品で、ついついおかわりしてしまいました。

デザートコーナーでは、ホテル特製の焼きたてバームクーヘンが提供されており、ふわふわの食感と甘さ控えめの味わいが食後にぴったり。他にも、季節のフルーツや一口サイズのケーキなど、種類豊富なスイーツが並び、最後まで満足のいく食事となりました。
食後は再び温泉へ。夜の静けさの中、湯船に浸かりながら旅の疲れを癒し、心地よい眠りにつきました。
北海道・登別と札幌の記憶 〜2日目〜
2015年2月1日(日)|登別の朝
翌朝、登別は、雪景色が一層深まっていました。朝食会場に向かうと、和洋折衷のブッフェが用意されており、特に焼きたてのパンコーナーが印象的でした。クロワッサンやバターロール、デニッシュなどが並び、まるでパン屋さんのような品揃えでした。香ばしい香りに誘われて、ついつい手が伸びてしまいます。また、地元の食材を使った和食メニューも豊富で、北海道ならではの味覚を楽しむことができました。朝からしっかりとエネルギーをチャージし、満足感に包まれながら食事を終えました。

朝食後は、ホテルの前で少し雪遊びを楽しみました。大きな雪だるまをみたり、雪合戦をしたりと、童心に帰ったようなひとときでした。


その後、チェックアウトを済ませ、札幌へ向かうバスに乗り込みました。車窓から見える雪景色を眺めながら、次の目的地への期待が高まりました。
バスに揺られること約1時間半、札幌の街が見えてくると、窓の外には一面の銀世界が広がっていました。次の写真は、札幌に到着した直後に撮ったバス停の風景。降り立った瞬間、キリッと冷たい空気に包まれ、身体がしゃんと引き締まるような感覚になったのを写真をいていると思い出します。足元にはふかふかの新雪、視界の先には白く染まった街並み。これぞ北海道の冬、といった風情です。
そのまま、次の目的地である「サッポロビール博物館」へ。雪道を走るバスに揺られながら向かいました。寒さに肩をすくめつつも、ビールのことを考えるとちょっと気分が上がってきて、午後の札幌散策が本格的に始まる予感がしていたと思います。


サッポロビール博物館での見学を終えた後、敷地内にあるサッポロビール園へと足を運びました。
このビール園は、明治時代の面影を残す赤レンガ造りの建物で、北海道遺産にも指定されています。園内には複数のレストランホールがあり、それぞれ異なる雰囲気とメニューを楽しめます。私たちが訪れたのは「開拓使館」。

ここでは、北海道名物のジンギスカンを堪能できます。特製のジンギスカン鍋で焼き上げるラム肉は、臭みが少なく、柔らかな食感が特徴です。また、サッポロビール園限定の生ビール「サッポロファイブスター」も提供されており、ジンギスカンとの相性は抜群です。
今回のツアーには、サッポロビール園で使えるクーポンが組み込まれており、ジンギスカンを無料で楽しむことができました。ビールとジンギスカンの組み合わせは、北海道ならではの贅沢な体験で、旅の思い出に深く刻まれました。ビール園の雰囲気や料理の美味しさは、写真や言葉だけでは伝えきれないほど。


このあと向かったのは、札幌といえばここ。代名詞的存在、時計台でした。
札幌の街をぶらぶら歩いていると、不意に現れる白い壁に赤い屋根の洋館。まわりの高層ビル群に囲まれて、ちょっと肩身が狭そうにも見えるんですが、それでもやっぱり存在感は抜群です。観光地のど真ん中、というよりも、街角の交差点にぽつんとあるその姿は、何ともいえない風情がありました。

中に入ると、昔の写真や資料が展示されていて、思いのほかしっかりとした博物館仕様。名前の由来や、元々は札幌農学校の演武場だったこと、アメリカ製の機械で今でも動いていることなども、軽く学んできました(こういうのは、あとで人に話す時の小ネタにちょうどいいんですよね)。
ただ、正直いえば展示よりも、外で見た雪の中の時計台のほうが、よっぽど印象に残っています。特に赤い屋根と白い雪のコントラストがきれいで、妻と撮った記念写真も、なかなかいい出来でした。
札幌の街のど真ん中で、ただ静かに時を刻み続けるこの建物。観光地としては地味かもしれませんが、こういう“札幌の時間の芯”みたいな場所が、意外と旅の記憶には残るものです。
札幌の夜、どうしても外せないお店がありました。それが「成吉思汗だるま 本店」。
このお店との出会いは、妻が札幌出張の際、地元の方に教えてもらったのがきっかけ。それ以来、札幌を訪れるたびに足を運ぶ、我が家の定番スポットとなっています。
「だるま 本店」は、すすきのの路地裏にひっそりと佇む、カウンターのみの小さなお店。

開店前から行列ができるのも納得の人気ぶりです。店内に入ると、目の前に七輪がセットされ、羊脂と玉ねぎ、ネギが乗せられたジンギスカン鍋が登場。
こちらのジンギスカンは、毎日仕入れる新鮮なマトン肉を使用し、創業以来変わらぬ手作りの特製タレでいただきます 。マトン特有のクセが少なく、旨味が凝縮されたお肉は、ビールとの相性も抜群。
この日も、寒さを忘れるほどの熱気と美味しさに包まれ、満足のひとときを過ごしました。「だるま 本店」は、札幌の夜を彩る、我が家にとって特別な場所です。
「だるま」でジンギスカンを頬張りながら、「やっぱりこの味は別格だなぁ」と幸せに浸っていたそのとき、不意にスマホに通知がひとつ。画面を見ると、JALからのメール。タイトルには「ご搭乗予定便に関するお知らせ」の文字。

ん? と思いながら開いてみると、「悪天候のため、羽田行きの出発を見合わせております」とのこと。まだ欠航ではないものの、嫌な予感が胸をかすめます。
とはいえ、目の前には焼き上がったマトンとキンキンに冷えた生ビール。「とりあえず、食べ終わってから考えよう」と気を取り直して最後までしっかり満喫しました。
食後、駅に向かう途中でもう一度スマホが震えます。恐る恐る画面を開くと、先ほどの不安が現実に。そこにははっきりと、「本日ご搭乗予定の便は欠航となりました」の文字。
その瞬間、なんとも言えない空気が周囲に流れました。写真こそ残っていませんが、あの時の冷たい風の感触、妻と顔を見合わせて「えっ…」と呆然とした表情、はっきりと記憶に焼きついています。
翌日以降の便への振替案内が添えられていたものの、翌日は平日。私はどうしても仕事の都合があり、選択を迫られることになります。まさか札幌の夜が、こんな展開を迎えるとは夢にも思いませんでした。
妻は、幸いにも翌日まで休みを取っていたので、余裕の表情。しかし、慌てたのは私の方でした。
翌朝、どうしても外せない商談が東京で控えていたのです。どんなに状況を説明しても“欠航で来られませんでした”は通じない相手。さぁどうする——。
そのとき私が下したのは、なかなかに大きな決断でした。
「……電車で帰ろう。」
当時はまだ北海道新幹線など開通していない時代。私は妻を札幌駅近くのビジネスホテルにひとまず預け、ひとり東京を目指すことに。旅の終わりのはずが、ここからまさかの“陸路の旅”が始まったのです。
夜通し走るローカル線をひたすら乗り継いで、函館へ。そこから青函トンネルを抜け、夜明け前の盛岡へ到着。眠気と寒さに包まれながら新幹線に乗り換え、記憶があいまいながらも、なんとか東京駅にたどり着いたのは朝の8時ごろ。ギリギリ間に合いました。
──そして、この旅行を最後に、我が家では「冬の北海道はやめておこう」が暗黙のルールになりました。
もちろん、北海道の冬は素晴らしい。温泉も、雪景色も、ジンギスカンも最高です。ただし、土日で行こうなんて軽く考えてはいけません。自然は甘くないということを、身をもって学んだ旅でした。
みなさんも、もし冬の北海道を計画されるなら、どうかもう一泊、余裕をもって。そう、できれば“飛行機が飛ばなくても笑っていられる旅”を計画しましょう😂
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