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【つながるメタフィクション】note大陸漂流記 第二章──灯りを消す者と、灯りを掲げる者

🖋 はじめに
このシリーズは、noteの世界をモチーフにしたメタフィクションシリーズです。実在のnoteクリエイターさんや出来事をもとに、筆者が感じた印象を物語として象徴化して展開しています。現実と創作のあわいを漂いながら、人の表現が放つ“光”を、寓話というかたちでnoteを大陸に見立て旅していきます。

📜諸国見聞録──第二国『灯りを掲げる国』
この章で訪れるのは、海辺に築かれた小さな村を中心とした国です。ここには、かつて小人の国を逃れた者たちが集い、再び生活を築き上げています。彼らは互いに支え合い、倒れた屋根を直し、壊れた舟を組み直し、やがて新しい船を作り上げています。

この国では「与えられる舟」よりも「自ら作る舟」が重んじられます。出来合いの舟は一時の便にはなっても、すぐに軋み、行き先を選ぶ自由を奪ってしまうからです。けれど、自分の手で削り出した舟は、どこへでも漕ぎ出せる力を持ち、また同じ思いで作る仲間と知恵を分かち合うことができます。

人々を導くのは、この国を治める女性元首です。彼女は、困難に立ち向かう者に道を示し、迷う者に寄り添い、何よりも「灯りを掲げる者」であろうとします。暗闇の中で灯を消して惑わす者を遠ざけ、行く先を照らし出す者――それが、この国に生きる人々が仰ぐ理想なのです。


⏮ 前回のあらすじ

第一章でふたりが漂着したのは、小さな声が国を動かす「小人の国」でした。
そこでは、民の囁きが集まれば巨人すら縛り、英雄と持ち上げられた者も一夜にして罪人へと落とされます。Bell noteはその風向きに翻弄され、英雄から処刑寸前の身へと転じましたが、寅子の機転により脱出に成功しました。
小さな声に縛られる危うさを思い知ったふたりは、夜明けとともに国を後にし、やがて辿り着いたのは、壊されたものを直し、自らの手で舟を作る人々が暮らす集落でした。


第二章──灯りを消す者と、灯りを掲げる者

海辺の村に漂い着いた寅子とBell note。
砂浜には潮の匂いと木屑の香りが混じり合い、風に乗って木槌の音や笑い声が響いていた。

思えば、あの浜辺に打ち上げられ、小人に囚われ、裁きに巻き込まれ……そしてようやく逃げ延びて、ここまで来た。振り返れば、すべてが夢のようでありながら、どれほど頬をつねっても目は覚めない。夢にしては生々しく、現実にしてはあまりに異様だった。――どうすれば「日常」に戻れるのか。この非日常に囚われたままでいるわけにはいかない。あの日常へ――どうにかして戻らねばならない。
その手がかりを誰かが知っているかもしれない。いまは、そう信じて進むしかなかった。

「進むには、まず足がいるな……」Bell note はつぶやく。
徒歩には限界がある――そう思ったとき、ふと目に映ったのは海辺で組み上げられていく舟の骨組みだった。木槌の音が潮風に混じり、板を打つ響きが腹に伝わる。
「舟……か?」

そこでは、小人の国から逃れてきた人々が、再び暮らしを立て直していた。
板を組み合わせて家を建てる者。草を束ねて屋根を葺く者。舟の骨組みに縄を締める者。
その一つひとつが、かつての恐怖を乗り越えようとする証のようだった。

Bell note は丸太を削る鋭い音を耳にして、肩を落とした。
「舟はほしいけど、俺には無理だな……。とらこ、俺は根気がないんだよ。木を削るなんて、絶対に続かない」

寅子はくるりと振り返り、口元をつり上げた。
「また弱音? ベルさんって、すぐ『無理だ』って言うのよね」
腰に手を当て、木屑の舞う方角を指差す。

「あの人たちを見て。舟を作るって、自分で未来への切符を手に入れるようなものなの!」

Bell note は目を瞬かせた。「切符、ねえ……」

「そう。自分で作れば、どこへ進むか自分で決められるでしょ」
寅子が笑うと、ちょうど陽に照らされた木屑が舞い上がり、金の粉のようにきらめいた。

Bell note は目を細め、その眩さに目を逸らす。
「俺には、あんなふうには無理だな」

寅子は一歩近づき、Bell noteの背を軽く叩いた。
「だからこそ挑戦する価値があるの。やってみないとわからないんだから」

そのとき、村の広場にひとりの行商人が姿を見せた。
背には大きな木箱を負い、笑顔は陽光よりもまぶしいほどに朗らかだった。

「おや、おや! 見慣れぬ旅の人たち!」
行商人は人懐っこい声を張り上げた。
「舟が欲しいんだろう? いいところに来たね。ちょうど今、完成品キットを特別に譲ろうじゃないか!」

彼は手際よく木箱の蓋を外し、中身を誇らしげに見せびらかした。
そこには板切れや帆布がきちんと並び、さらに立派な推薦状や購入者の署名簿までが揃えてあった。
どこかで見覚えのある名も混じっており、素人目にはいかにも信頼できそうに見える。

行商人はいかにも信頼できそうに見えるが…

「ほら、有名な造船師の推薦もあるし、すでに百人以上が買っているんだ。しかも、今なら無料で始められる!」

「無料だって、とらこ!」
Bell note の目が一気に輝いた。
「有名な造船師が薦めてるなら、間違いないかもしれない。しかも百人以上が買ってるって……みんなが持ってるなら欲しい」

寅子は腕を組み、行商人とBell note を交互に見やった。
「ふうん……そうやって“みんな持ってる”って言葉に弱いんだから。ベルさんの悪いクセよね」

Bell note は口を尖らせた。
「だって、とらこ……百人以上が買ったんだぞ。きっといいものに決まってる」

行商人はにんまりと笑い、さらに甘い言葉を重ねた。
「ほらご覧なさい、この署名簿を。ずらりと並んだ名前! これだけの人に選ばれているんだ。あんたも買うのは自然なことさ。今だけは特別に、材料一式を“無料”で配ってる。手を出さない手はないだろう?」

寅子は眉をひそめ、足元の砂を蹴った。
「無料で始められる、ねえ……。そのあと何が待ってるのか、ちゃんと聞かないと怖いわよ、ベルさん」

しかし Bell note の耳には、もうほとんど入っていなかった。

「これなら、面倒な作業をせずに舟が手に入るかもしれない。すぐに旅立てる舟が……」
労を惜しむ心と、早く楽になりたい願いが重なり、行商人の甘い言葉に絡め取られていく。

寅子はそんなBell note の横顔をのぞき込み、眉をきゅっと寄せた。
「ベルさん、本気で信じてるの? ほんとに大丈夫かなぁ……」

寅子は両手を腰に当て、呆れたようにため息をついた。
「……ベルさん、そうやってすぐ流されるんだから。
そもそも“無料”なんて言葉、世の中で一番高くつくものかもしれないのに」

Bell note は聞いているようで、ほとんど耳に入っていない。
「無料……すぐに舟が……」
その響きだけが頭の中をぐるぐる回り、視界が狭まっていく。

寅子は首をかしげ、片方の頬を指でつついた。
「ほら、ベルさん、しっかりしてよ!」

しかし、彼の心は甘い幻影に吸い寄せられていた。


そのとき、背後から静かな声が届いた。
「その舟、本当に安心できるの?」

波音とともに響いたその声は、急かすでもなく責めるでもなく、ただ事実を確かめようとする大人の響きを帯びていた。

振り返ると、そこに一人の女性が立っていた。
黒髪は夜の海のように滑らかで、緑の瞳は濁りなく澄んでいる。
派手さはないが、花を散らした衣装は落ち着きと品をまとい、立ち姿は浜辺に揺れる一本の大樹のようだった。

まるで一本の大樹のようだった。

Bell note は思わず姿勢を正す。
「とらこ……誰だろう、この人」

寅子は首をかしげ、肩をすくめた。
「村の人っぽいけど……でも、なんだか空気が違うね。静かなのに、みんなそっちを見ちゃう感じ」

女性は人々の視線を気にも留めず、ただ穏やかに行商人へ言葉を重ねた。
「本当に役立つものなら、言葉をこんなに並べずとも価値が伝わるもの…」

その声は柔らかかったが、砂浜に落ちる小石のように、波紋を広げて周囲の心を打った。
行商人の笑顔がわずかに揺らぐ。

「推薦状?」
女性は紙を指先で持ち上げ、光にかざした。
「字体が同じですね。百人の署名? これもぜんぶ同じ筆跡…」
視線を落としそっと指差す。
「それに――“無料で始められる”と謳いながら、肝心の帆は『別料金』って小さく書いてある」

広場の空気がざわついた。
Bell note は顔を赤らめながら呟く。
「べ、別料金……? 全然気づかなかった」

寅子は腰に手を当ててニヤリと笑った。
「ほらね、ベルさん。都合のいい言葉ばっかり見て、細かい字はいつも読み飛ばすんだから」

商人の額に汗がにじむ。
周りの村人たちも、互いに顔を見合わせ始めた。

Bell note はますます小さくなり、足元の砂をいじりながらこぼした。
「……また騙されるところだったのか……」

寅子が笑い飛ばす。
「騙される“ところだった”じゃなくて、もう半分は購入済みだったでしょ、ベルさん」

広場に小さな笑いが広がり、商人の取り繕った笑顔は次第に崩れていった。

「困っている人につけ込んで、都合のいい言葉だけ並べ、結局は“買わなければ分からない”と脅すやり方――それは、灯台を消して『こっちだ』と叫ぶ詐欺師と同じです。本当に人の役に立ちたいのなら、暗闇で灯りを奪うのではなく、灯りを掲げて道を示すべきでしょう」

群衆がざわめき、商人の顔から笑みが消える。
「チッ……覚えてろ」
そう吐き捨てると、行商人は荷を荒々しくまとめ、砂を蹴立てて退散した。

広場には静けさが戻り、波の音だけが響いた。

寅子はその様子に目を輝かせ、思わず拍手を送った。
「すごい! かっこいい!」
その声は子どものように真っ直ぐで、聞いていた人々の顔にも笑みが広がる。

Bell note は冷や汗を拭いながら、肩をすくめた。
「……あぶなかった。完全に飲み込まれるところだったな」

女性は二人に向き直り、静かに微笑んだ。
「大丈夫。あなたたちだけじゃないのよ。ここには、小人の国から逃れてきた人や、道に迷った旅人がたくさん訪れるわ。私は――ルーシア・ノートン。このルー国を治め、行き場をなくした人に旅のルートを示す役目を持っているの」

その名を口にすると、浜辺の風がふわりと吹き抜け、まるで森の葉擦れのような温もりが広場を包んだ。

Bell note はきょとんとした表情を浮かべる。
「ルーシア……ノートン……なんだか立派な名前だな」

寅子は小首をかしげ、にこっと笑った。
「じゃあ……ルーシアは長いし、ルーさんも堅いから……うん、ルー……ちゃんでいいかな?」

女性は目を細め、楽しげに肩をすくめた。
「ふふ、それでいいわ。みんなそう呼ぶのよ」

こうして「ルーシア・ノートン」は、二人にとって親しみを込めた「るーちゃん」となった。

「舟が欲しいの?」
ルーシア・ノートン――るーちゃんは、穏やかに言葉を紡いだ。
「うーん……今ある舟は、もう持ち主が決まっているから譲れないの。でも、作り方なら教えてあげられるわ。自分で作った舟こそが、どこへでも自由に行ける舟になるのよ。このnote大陸ではね」

寅子が手を打って笑う。
「いいじゃない、ベルさん! 自分の舟で自由に旅するなんて、わくわくしない?」

Bell note は少し口ごもり、苦笑いを浮かべた。
「……そうは言っても、材料を集めるのって、簡単じゃないだろう? 俺にできるのかな」

るーちゃんはふわりと微笑み、遠くの丘を指差した。
「ほら、あの丘の上に大きな木が見えるでしょう。その木の近くに森に囲まれた国があるの。舟に必要な木は、そこで手に入るわ。ただし、森を治める人たちに許しを得てからにしてね。きっと譲ってもらえる」

Bell note は丘を仰ぎ見て、少し気後れしたように息を吐いた。
「……なるほど、そういう道筋か、大丈夫かなぁ…」

寅子はにっこりと笑い、Bell noteの肩を軽く小突いた。
「心配ばっかりしないの。森に行くのも手がかりを探す冒険の一部だよ! さあ、行ってみよう!」

さあ、行ってみよう!

大きな木の葉は風に揺れ、ざわざわと囁くように二人を送り出していた。

丘の向こうに揺れる大きな木の梢を見やりながら、二人は新たな国へと歩みを進めた。

🌙 予告譚
舟を得るには、まずその材料を集めねばならぬ。
るーちゃんの指し示す丘の上には、大きな木がそびえていた。
「舟に必要な木は、その森にあるわ。ただし、森を治める人たちに許しを得てからにしてね」――そう言い残し、彼女は静かに微笑む。

さてさて、Bell noteと寅子は木を譲り受けることができるのか。
森を治める人々とは、いったい何者なのか。
その奥には、まだ彼らの知らぬ試練と出会いが待っている。
いずれ明らかになるだろう――。

……続きは、また次回の講釈で。


👤今日のnoteクリエーター「るーちゃん」さん

るーちゃんさんのnoteを読んでいると、今回の物語に登場した「灯りを掲げる人」という姿が自然と重なります。孤独に傷ついた人に対して、小さな灯をそっと差し出す。あるいは、不安に立ちすくむ人に寄り添いながら背中をそっと押す。その語り口は決して押しつけがましくなく、読み手に安心感を与えます。

彼女のnoteには、noteの実用的な知恵のnoteもあれば、遊び心のあるちょっとおふざけなnoteもあれば、心が折れそうなときにどう立て直すかという等身大のnoteも並んでいます。ひとつひとつの記事が、まるで浜辺に置かれた道しるべのようで、「ここにも帰ってこられる場所がある」と教えてくれています。

挑戦を始めたい人にも、疲れた心を休めたい人にも。るーちゃんさんのnoteは、次の一歩を照らす灯舟になるはずです。

なお、今回はこのシリーズのテーマ設定の一環として、noteクリエーターのるーちゃんさんをモチーフにした人物を物語に登場させていただきました。
実際の活動やご本人とは異なる“創作上の設定”が含まれていますが、あくまでひとつの読み物として読者とるーちゃんさんご自身に楽しんでいただきたいとの思いからの工夫のつもりなのです。
何卒、温かい目で、ご容赦頂けますことを切に願います。

万一、私の意図しないところでお気を悪くされた点があれば、心よりお詫び申し上げます。
ただ、るーちゃんのnoteから受けた個人的印象は、「この物語の中で出会うなら、きっとこんな設定なのだろう」と自然に思えたからでした。
その点、重ねてご理解いただければ幸いです。


🔔Bell

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