なぜあの時私はYesと言ったのだろうか


本日の気温26度。湿度は低く、カラッとした快晴。こちらの夏は最高of最高。
そんなことを電話で話すと日本の茹だるような暑さで溶けている妹にいつも羨ましがられる。そうでしょうそうでしょう。なんせエアコンなしで寝られますからね。寝起きの顔もさらさら、爽やかなもんです。
日本に住む妹からの「今日は漁港に行って特盛海鮮丼を食べた!」やら、「並んでやっともっちゅりんを手に入れた!」やら、説明なしでどーんと送られてきた鰻重(土用の丑の日)の写真やらにいつも歯をぎりぎりさせているので、このくらいの自慢は許されるだろう。妹は美味しいものを通年食べられるのに対して、私がこの天国なような季節を楽しめるのは夏の間だけなのだから。美味しそうな写真に歯をぎりぎりさせるだけしかない冬に備えてエネルギーをチャージしているってわけ。
そんな自慢したくなるこちらの天国を堪能するぞ、と海岸沿いをドライブ。その途中で小腹が空いたのでフラっとパブに寄ってみた。
こう言う時お酒を呑まない(呑めない)夫と一緒になってよかったなと思う。心置きなくビールが呑める。夫は夫でハンバーガーが目当てなので無理して私に付き合っているわけでもなくお互いWin-Winの関係なのだ。午後3時と言う微妙な時間のハンバーガーは夫のスナック枠なのか、それともこれを夕飯とする気なのか、おそらく絶対100%前者なのだけどこう言う時は目を瞑る。
***
私たちの車が駐車場に入ると同時に、パブから男女5人組のグループが出てきた。すぐに目が合い、5人の視線が私たちの車を追ってくる。
「なんか見られてるね。アジア人が珍しいのかな?」と、自意識が過剰気味な私に対し、「いや、みんなこの車に見惚れてるに違いない。」と、先日買い替えたばかりの愛車が美しすぎる故だと言い張る夫。
なーんてね、とお互い笑いながら車から降りてパブへと歩き出す。
「この車の赤色に見惚れちゃったわ!」
どうやら夫が当たっていたらしい。夫が片眉をくいっと上げて得意げにこちらを見てくる。
愛車を褒められて気をよくした夫は声をかけてきた女性にまずはお礼を、そして車種を選んだのは自分なんだと話しだし、愛車をどれだけ気に入っているか自慢を挟み、最後に「でも色は妻がコレと言うので自分に選択権はなかったんだ(やれやれ)」と私をオチに使い、鮮やかにスモールトークをまとめ上げた。5人グループから笑いが起こる。
場があたたまった。ちょっと汗ばむほどに。
赤色を褒めてくれた女性が、そういえばね?とつづけて話し出す。
「私の母がね、新しく黒い車を買ったのよ。」
あなたもですか、と私たちは耳を傾ける。
「だけどね…そしたら、2日後に亡くなったの。」
一瞬の静寂。いきなりの変化球に先ほどまでの汗がひっこむ。
これは私の出る幕ではないと早々に口をきゅっと結ぶ妻の隣で、間髪入れずに夫が口を開いた。
「それは…赤い車にするべきだったね!」
…
…
…正気か?と隣の夫を見る私。
その瞬間、静寂だった駐車場が爆笑に包まれた。
赤色を褒めてくれた女性も「Exactly!(ほんとそれ!)」と手を叩いて笑っている。これがこの国の笑いの正解だったのか…
難易度が高すぎて私だけ心臓がヒュッってなった。
***
去り際、ジョーク酔いでぐったりしている私にグループの中の一人が話しかけてきた。
「赤を選んだってことは…もしかしてあなた中国人?」
そうド直球にステレオタイプな事を聞いてきた彼の瞳からは絶対そうに決まっている!我ながら名推理だ!という期待がキラキラと溢れ出ている。
私は知り合いの中国人(n=3)のことを思い出した。
ひとりの愛車は赤だし、もうひとりの自転車は赤だし、さらに別のひとりは誕生日には赤い下着を身につけると言っていた。たしかに、彼ら(n=3)にとって赤は特別な(時もある)色なのだろう。ふむ。
…イエス
そう言って小さく頷くと、男性はとびきりの笑顔を見せた。つられて私も口角を上げる。
私はよそ様のアジア人ステレオタイプをひとつ強固なものにして、そのままパブへと歩き出した。
夫が何か言いたそうにこちらを見ている。
日英表記のLINEスタンプを作ってみました。
良ければ見てやってください😌
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ここまで記事を読んでいただきありがとうございます。
いただいたチップは一時帰国のための資金として使わせてもらいます!そろそろエネルギーチャージが必要なので…
