不動のレギュラーになる壁。矢澤に訪れた試練。8/7 ファイターズ振り返り
■ 数少ないチャンスに託された矢澤の一打
8月7日、西武戦。今井→甲斐野→平良という継投リレーの前に、ファイターズ打線は沈黙した。わずか2安打、0得点。手も足も出なかった試合──
そう言ってしまえばそれまでだが、あの日、たしかに訪れていた“ひとつの分岐点”があった。
4回表、ノーアウト満塁。バッターボックスには矢澤宏太。俊足の彼に求められたのは、長打でなくとも何かしらの“前進”だったはず。だが、結果はダブルプレー。グラウンドがざわめいた。
ただ、そのプレーには「表に見えない要素」があった。矢澤は打球直後、ベースラインの内側を走っていたため、送球と交錯しそうになり、走路を外側に逸らす。
その瞬間の“膨らみ”と減速が、タイミングに微妙なズレを生み、併殺を招いた。本人の脚力を考えると、本当に紙一重だった。
■ 届きそうだった守備と、埋まらなかった数センチ
8回裏の守備も、同じような“惜しさ”が残る。ライトの守備位置から矢澤は速い打球に対し素早く反応。スピードは十分で、落下点にも向かっていた。が、捕球が出来なかった。ヒットになった打球がきっかけで、3連打、そして決勝点が生まれた。
あれが“取れていれば”というプレーだったのは確かだ。追いついていた時点でファインプレーものだった。
でも、「矢澤なら取れたかもしれない」と感じさせるほどの能力を持っているからこそ、その届かなかった一歩が、より重く映る。
走力や反応だけでは補えないものがある。数センチの位置取り、プレーごとの判断、そのすべてがアウトとセーフの境目になる──それがプロの世界の厳しさだと、あらためて思わされる。
■ ベンチスタートに託される「もう一つの役割」
この日、矢澤はベンチスタートだった。だが、それは補欠という意味ではない。野球は、スタメン9人だけで勝てるスポーツではないからだ。
松本剛のアクシデントにより、2回裏から急きょ出場が決まる。序盤の途中出場というのは、準備が整いきらない中でいきなり結果を求められる難しい場面でもある。
それでも、その出番が“矢澤に来た”という事実は大きい。用意されていない者に、チャンスは巡ってこない。そのこと自体が、彼がどう見られているかを物語っている。
■ 埋まらなかった悔しさを、次にどう変えるか
この試合、矢澤に与えられたプレー機会は、どれも勝敗に関わる場面だった。結果にはつながらなかったが、巡ってきたこと自体が偶然ではないと思いたい。
打席、守備、走塁。その一つひとつをどう受け止め、次にどう変えていくか。足りなかった数センチを埋める努力の先に、また次のチャンスが来る。
あの悔しさを、どう昇華してくれるのか。そこに、選手としての価値が見えてくる気がする。
1人1人の選手にもこの記事の矢澤のように色んな試練がやってくる。
それを乗り越えていった先に「優勝」が見えてくるはずだ。
