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進呈、さくらの香り

うすのろ日記 2026.3.6 (金) cherry blossom scent


化粧品店の前を歩いていたら、「新発売の桜の香りのトワレです」と、香りが染み込ませてある本の栞みたいな紙を渡された。
スタッフが私の顔をじっと見ているので、仕方なくその紙を鼻のそばへ近づける。
これが桜の香り?
長年生きていて何度も春を過ごしてきたけど、桜並木の下を幾度となく歩いた経験があるけれど、桜の香りって感じたことがない。
本当に感じたことがある人っているのだろうか。
あの女性スタッフははっきりと「桜の香りです」と言った。
何を根拠にそう言っているのだろうか。
人はイメージで香りも作り出すことができる。
『桜の香りってこんなのだったらいいのになぁ』という感じで作った香りだった。

その売り場を離れて、捨てるところがなかったのでその紙をバックの中に入れる。
帰宅してバックの中身を全部出したら、桜の香りというやつがバックの中のあらゆるものに染み付いていた。
とりわけ、文庫本にそれは多く残っていた。
そんな香りのする内容の本ではないので、困った。
甘く堕落しそうな桜の香りというやつを嗅ぎながら、厳しく辛く悲しい物語を読む。

この香りだけではなく、桜が日本中を巻き込んで大騒ぎする季節がそろそろやってきそうだ。
どうかお手柔らかにと、お願いしたい。




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イトカズ 読んでいただきありがとうございます。 書くこと、読むこと、考えること... これからも精進します。