「何度言えば分かるの?」が逆効果になる理由
■正しいことを言っているのに伝わらない理由
部下に対して、正しいことを伝えている。
納期を守ってほしい。
報告を早めてほしい。
品質を上げてほしい。
同じミスを繰り返さないでほしい。
もっと自分で考えて動いてほしい。
言っている内容は間違っていない。
むしろ、仕事をするうえでは必要なこと。
それなのに、なぜか伝わらない。
部下の表情が固くなる。
その場では「分かりました」と言う。
でも、行動は変わらない。
そんな経験はないでしょうか。
■正しさだけでは、人は動かない
仕事では、正しい指摘が必要です。
ルールに反している。
顧客との約束にズレがある。
品質基準を満たしていない。
チームの方針と違う動きをしている。
こうした場面で、管理職は伝えなければなりません。
ただし、正しいことを言えば必ず伝わるわけではありません。
人は、言葉の内容だけでなく、
「どんな関係性の中で言われたか」
を受け取っています。
同じ言葉でも、信頼している相手から言われるのと、
普段から否定されていると感じる相手から言われるのでは、受け止
め方が変わります。
■「分からせよう」とすると、防御が生まれる
伝わらないとき、管理職はさらに説明を重ねたくなります。
「だから、こういうことなんだよ」
「前にも言ったよね」
「普通に考えれば分かるよね」
「何度言えば分かるの?」
言っている側は、理解してほしいと思っています。
しかし、受け取る側は、
責められている。
否定されている。
見下されている。
そう感じることがあります。
相手を分からせようとするほど、相手は防御に入ります。
防御に入った相手には、正しい内容も届きにくくなります。
■まず、相手の見えている世界を確認する
正しいことを伝える前に、確認したいことがあります。
それは、相手がどのような前提で動いていたのかです。
なぜその判断をしたのか。
何を優先したのか。
どこで迷ったのか。
何が分からなかったのか。
どの情報を持っていなかったのか。
これを確認すると、管理職側にも見えていなかった背景が出てくる
ことがあります。
本人の理解不足かもしれません。
情報共有の不足かもしれません。
指示の曖昧さかもしれません。
優先順位の認識違いかもしれません。
相手を理解することは、相手の言い分をすべて認めることではあり
ません。
正しく状況を把握するために、相手の見えている世界を確認するこ
とです。
■厳しいことほど、関係性が必要
管理職には、厳しいことを伝えなければならない場面があります。
基準を下げてはいけない。
改善を求めなければならない。
本人に責任を自覚してもらう必要がある。
だからこそ、関係性が必要です。
普段から話を聴いてくれる。
一方的に決めつけない。
事実を見てくれる。
成長を期待してくれている。
そう感じられる関係性があると、部下は指摘を受け取りやすくなり
ます。
厳しさは必要です。
ただし、威圧や否定で伝える必要はありません。
■伝える目的を確認する
何かを指摘する前に、自分に問いかけたいことがあります。
今から伝えることは、何のためか。
イライラをぶつけるためか。
相手を言い負かすためか。
自分の正しさを証明するためか。
それとも、相手の成長とチームの成果につなげるためか。
目的が変わると、言葉が変わります。
「なんでできないの?」ではなく、
「次にできるようにするために、どこを確認しようか」
「前にも言ったよね」ではなく、
「前回と同じズレが起きているから、原因を一緒に見たい」
「ちゃんとして」ではなく、
「この仕事では、ここまでの品質が必要だと考えている」
伝え方は、選べます。
■チェックリスト
□ 正しいことを言う前に、相手の状況を確認しているか
□ 「分からせよう」とする口調になっていないか
□ 指摘の目的が、改善や成長に向いているか
□ 人格ではなく、事実と行動を扱っているか
□ 日頃から話を聴く関係性をつくっているか
正しいことを言っているのに伝わらない。
その原因は、内容ではなく、関係性や伝え方にあるかもしれません。
管理職に必要なのは、正しさを手放すことではありません。
正しさが届く状態をつくることです。
※似たような状況で整理に迷っている場合は、
テキストでの個別相談も行っています
