収束する世界
「あ゛あ゛ん!? テメェらァ……何しやがったよコラァ!! この超天才がてめーらごときの攻撃でんな深手負うわけねーだろタコがァッッ!! 何しやがったァッッ!!!!」
「さあ、なんだろうな。生憎敵にこちらの戦力をべらべらと解説するほど酔狂ではないのでね。何もわからんままさっさと死ぬがいい」
〈黒き宿命の吟じ手〉を構える〈鉄仮面〉。
だが――
「バーニング天才パンチ!!!!」
赤熱する巨大な拳が周囲を燃え上がらせながら凄まじい速度で迫ってきた。
「ちッ――」
素早く横によけるヴォルダガッダ。
そこへ悪夢のごとく剛風をまといながら飛来した敵が、爆速の膝蹴りをかましてくる。
瞬間移動した〈鉄仮面〉が間に割って入り、黒い刃を閃かせる――
「なにッ」
が、今度は一方的に跳ね飛ばされた。
ヴォルダガッダは叩き込まれる膝蹴りを〈終末の咆哮〉で受ける。
全身の骨を砕かんばかりの衝撃が走り抜け、吹き飛ばされた。
望まぬ滞空が数瞬つづき――それが終わらぬうちに、目の前に敵が追いすがってきた。大気を引き裂きながら走って追いかけてきたのだ。
「野郎ォッ」
こいつ、本能的に気づきやがった。〈鉄仮面〉の行動妨害は、動きのはじめ――速度がまだ乗らぬうちに斬撃を叩き込むことで成される。つまりいったん速度に乗ってしまえば、〈鉄仮面〉はこいつに何もできないのだ。
「しゃらああああああああああああッッ!!!!」
豪速のあまり鮮明には見えない奴の拳に対して、大戦鎌を正面から叩き込む。歪曲した紅刃の切っ先が、過たず拳と正面衝突した。
一方的に押し負ける。
「ぐぁッ!!」
だが、押し返された〈終末の咆哮〉の柄がヴォルダガッダの体を押し、直撃を免れる。
拳圧でまくれあがる地面。そこに大戦鎌の刃を打ち込んで楔とし、どうにか地面に着地。
直後に襲いくる敵影に対し、ヴォルダガッダは鎌を分離させて交差し、耐え忍ぶことしかできなかった。
「だらららららららららららららららららァッッッッ!!!!」
超連撃。一発一発がヴォルダガッダを曳き肉に変えてなお余りある威力の拳が、無数に分裂して見えるほどの速度で叩き込まれてくる。
交差した柄の狭間から来る衝撃波が肉を裂き、骨を打ち、ヴォルダガッダの肉体を見る間に崩壊させてゆく。
だが、それでも、なお、紅蓮の闇が勢いを増して燃え盛った。
――あァ、
「生きてイる――オレは今生きていルぞおおおおおおおおおッッ!!!!」
連撃に切れ目などない。ないなら作ればいい。
ヴォルダガッダは、全身を覆う黒き魔鎧に意志を通わせた。
ダークエルフが鍛造した一品ものの魔導具である。魔法の領分は破壊と変容であり、何かを守る術式など存在しないが――この鎧には強烈な衝撃反応術式が刻まれており、撃ち込まれた攻撃に対して破壊呪文を自動発動することで相殺を行うのだ。
当然――攻撃的な運用も可能である。
足元の地面を、思い切り踏みしめる。衝撃に反応して呪文が発動。足元に破壊の魔力が炸裂した。
地面が一瞬、球状に膨れ上がり――炸裂。
「うぉっ!?」
ヴォルダガッダもろとも敵はすり鉢状に抉れた地面に落下した。こんな常識外れの存在でも、重力には縛られているのだ。
連撃が、止まる。
「――動きを、止めたな?」
静かな、おぞましいほどの情念が滴る声。
黒い幻炎が揺らめき、〈鉄仮面〉の姿が敵の周囲で瞬くように現れては消え、行動阻害を再開する。瞬間移動の連発と、極みに達した剣腕は、歩く災害とでも言うべき敵のすぐそばにまとわりつき、動作の開始を精密無比に潰してゆく。特別なことなどなにもしていない。目線を読み、呼吸を読み、体重移動を読み、相手のモーションが速度に乗って手に負えなくなる前に叩き潰す。
超絶技巧の円舞と言えた。この世の誰にも、あの真似はできまい。
腹の底から咆哮を上げ、ヴォルダガッダは大戦鎌を振り上げ、全体重を込めて振り下ろす。
大岩を砕く一撃は、その余波だけで周囲に亀裂を刻み、敵の肩口に小さな傷をつけた。
「クソがァ……テメェらああああああああッッ!!!!」
敵は激昂して〈鉄仮面〉に掴みかか――ろうとして脚を斬りつけられ、バランスを崩す。
「もはやいかなる行動も許さん。そのまま削れ死ね」
ヴォルダガッダと〈鉄仮面〉は、入れ代わり立ち代わり神統器を繰り出し、敵を封殺し続けた。
「はッ!! 笑えるなそれェ!! こんなペースでちんたらやってたら俺を殺すのに一週間はかかるでべっ!!」
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