百名山を半分位登った山好きが浄土平ハイキングで撤退した話し
岩陰に身を潜め「ここまでだ」と思った…それほどの強風だった。
そうだ、魔女の瞳を見に行こう
細かい予定がたくさんあって、ゆっくりできる休みも遠出もできないGWが平常運転だ。2025年も例に漏れず平常運転だった。
そんな中、日本屈指のシーニックドライブウェイ「磐梯吾妻スカイライン」が開通したニュースが届いた。隙間時間は05/03(土)の夜と05/04(日)終日だった。1泊1日なら何とか行けそうだ。
一切経山の山頂から魔女の瞳を見る。
一切経山は、磐梯吾妻スカイラインの要所である浄土平からの登山が一般的だ。冬は雪深いので、熟練の技術が必要な険しい登山になる。残雪期となる開通時期は、軽アイゼンやチェーンスパイク(チェンスパ)で雪渓歩きの登山になる。
目玉の景観が、真っ青な水を湛える「五色沼」が作る絶景「魔女の瞳」だ。残雪期は瞳が白く雪で覆われるが、溶けた部分は薄青く「開眼」し、また美しい景観だ。他の山域では「ドラゴンアイ」も有名だ。
2025/05/04(日)アタックを決めた。
日中の予定をこなし、前日夕方に郡山に向かって出発した。知人に教えてもらった名店地元中華の「中国料理 珍満」さんでしっかり食べて、道の駅で安達で車中泊仮眠、翌朝の磐梯吾妻スカイラインのゲートオープンに合わせて向かう前のめりな計画だ。
道の駅に着くと霧雨が降り不穏な雲が上空を覆っていた…。
山に上がるも…

「道の駅 安達」は広大な駐車場と24時間営業のファミリーマート、早くからやっている食堂が特徴だ。コンビニと食堂で食料を調達して、山へ上がった。磐梯吾妻スカイライン高湯ゲートのオープン08:00には、何台もの車が並んでいた。
次々にゲートを潜る車列、ずっと先まで数珠繋ぎになっていた。標高を上げるとどんどん街が小さくなった。
磐梯吾妻スカイラインが再開通しました!
— 福島県観光物産交流協会 (@fukushimatweet) April 25, 2025
アリゾナっぽいけど福島です! pic.twitter.com/HQeFbA82Wz
「日本のアリゾナ」と公式も言っている。確かに昔行ったアメリカ西部のグランドサークルみがある写真だ。素晴らしいシーにックドライブウェイを走り目的地の浄土平の駐車場に着いた。少しばかり料金所渋滞していたが、ビジターセンターの目の前に停められた。がしかし…
山の上は真っ白で小雨と強風だった。

殆ど山の方面に足を向けるグループはなく、登山には厳しい状況だと認識できた。午前中のアタックは諦め天候の回復を待った。仮眠だけだったので、トランクルームと後部座席をフラットにして改めて横になった。
ずっと強風の風切り音が鳴り続けていた。
うつらうつらしながら時折外を見ると濃霧になったり霧雨が巻いたりと状況は改善しなかった。かくして、登山を終え磐梯吾妻スカイラインのゲートクローズまでに抜けられるリミットが過ぎて行った。
ハイキングだけでも楽しもう。
が、この決断すらも冒険になるとは思っていなかった。
浄土平ビジターセンターに行って一帯について学んでから、小雨が止んだタイミングで、浄土平の湿原地帯と桶沼のハイキングを楽しむコトにした。
浄土平散策と桶沼のブルー


いざ木道を歩き出すも常時10m/sほどの強風が吹き、時折15m/sになろうかという突風が襲うハイキングなのにスリリングな展開だった。風が強く耳への風圧が強烈だったので、フードをしっかりして何とか歩いた。たまに木道から吹き飛ばされそうになりながら。


浄土平のハイキングコースを抜けた先は北側が斜面になっている桶沼の外輪に登れるルートだ。まあ、1m以上の積雪がある雪渓歩きだった。雪があるので直登気味に登ると、ところどころにピンクのテープがあったり、動物の糞があったり僅かな距離だが十分に楽しめた。


桶沼の外輪山の縁(へり)に出ると、まだまだ雪で凍った桶沼が広がっていた。天気も回復傾向で着いて程なく雲の隙間から降り注いだ日光が、少しだけ溶けた湖面を照らし美しいライトブルーの水面を照らしていた。


相変わらず風は強く、猛烈な勢いで西から東に吹き抜けていた。蓬莱山、伊一切経山、駱駝山の美しい稜線が顔を出していた。とは言え、もう時間切れだった。



湿地に残る雪の不思議な模様、中にかかる小さな川の両岸に残る雪の壁、風の谷が作ったハイマツの独特な風貌などを楽しんで、駐車場まで戻った。
吾妻小富士ハイキングは死の匂いがした
ファーストアタック




雲がかかっていた吾妻小富士が顔を出していた。元々はレストハウスで昼食をとるつもりだったが、いつ天候が崩れるか分からなかったので、登ってみた。火口外輪山の縁に出ると美しい火口が見えたが、砂礫が弾丸のようにパチパチと飛ぶ暴風だった。
あまりの暴風にタイタニックの真似をするカップルやマイケル・ジャクソンのスムース・クリミナルを模した前傾姿勢をカメラに収める若者が盛り上がっていた。一方、その稜線を30分掛けて山頂に歩く者は誰もいなかった。
撤退。
振り返ると西側の山々はもっと深い雲に覆われていた。風が弱まるコトを期待して、一旦下山した。
レストハウスで真っ青な「魔女の瞳ラーメン」をすすりながら、その機会を伺った。ただ、17:00の土湯ゲートクローズまで時間が迫っていた。暴風を加味するとアタックできるのは後1回、収まらない風の中、登山口に向かった。
セカンドアタック


雲は晴れ、美しい山肌に光が降り注いでいた。フードをしていても、バタバタと弾けて、耳鳴りがする暴風だった。少し移動して上り初めるとどんどん風が強まって行った。腰を大きく落として岩陰をホップしながらジワジワ近づく。
気が付くと前後に人はひとりしかおらず、屈強なアスリートだった。そのアスリートはサイクリンパンツを履いていて、この険しいスカイラインを自力で登ってきたのだと思った。



次の岩場に身を潜めようと岩陰を出ると、一瞬自重がなくなり足の設置感が消えた気がした。実際には宙に浮いてはいなかったろう。だが…
死の匂いがした。
「ここまでだ」と思った。好天なら駐車場から30分で山頂に至れるハイキングの撤退を決めた。
山頂手前、尾根が細くなっている場所から見た雪残る火口と福島の街並みは素晴らしかった。風が強過ぎてまともにカメラも構えられなかったが、辛うじて写真は撮れた。しっかり四角をグリップしてシャッターを押して。
また、下山道に戻るのもひと苦労だった。かのアスリートはもう少し粘っていたようだが、到達地点は同じ標高だった。あの細尾根は「風の道」だ。
夏の富士登山に数十回行っている。何度かひどい雨や風を体験したが、一度だけ、山頂外輪で巨大な笠雲の中に入ったコトがあった。足元の石が風で勝手に転がっていた。金剛杖を支えに這うように岩陰に逃れた。人生2度目の得難い経験だった。
ハイキングを終えて



浄土平から土湯方面に降った。2m弱の雪の回廊を下って、遠く磐梯山と猪苗代湖、近くの安達太良山に続く尾根を見ながらのドライブだった。
厳冬期に吹きっさらしの山に登る恐ろしさは想像に難くない雪山はやらない理由のひとつだ。。登山は残雪期から降雪期で十分だ。
浄土平天文台の職員の方と話したら、風速10m/sほどではないという話しで、尾根は時には20m/s近かったのではという見立てだった。
風が穏やかな日に再訪したいと思う。
YAMAP記録:https://yamap.com/activities/39794406
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