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めでたくもあり、めでたくもなし

皆さま、ご無沙汰しておりました。

前回の記事で、右手の振戦(震え)が酷く、文章の入力が難しいのでお休みしますと申し上げました。このたび病名が確定し、服薬によりいくらか症状を和らげられるようになりましたので、少しずつ再開しようかなと思います。いつまで続けられるか分かりませんが、その日まではよろしくお願いいたします。

さて、これまでの経緯をお話しするところから始めます。これは記事であるとともに、僕自身のための記録でもありますので。


2020年後半に、主に右手に震えが見られるようになりました。当初は偶然、同時期に双極症の治療のため服用し始めたラツーダという新しい抗精神病による薬剤性パーキンソン症候群かと思われました。対症療法として2種の抗コリン薬を試しましたが、全く効果なし。しばらくしてラツーダは双極症に効いてないと判断され中止しましたが、振戦は全く収まりませんでした。
単なる冤罪事件でした。


とりあえず2023年8月まで放っておきました。その頃はまだ震えは止めようと思えば止められたし、今さら手が少々震えるくらい(双極症に比べれば)どうでも良いかと。しかし流石に3年も続くと気になったのか精神科の主治医が医者に行って来いというので、とりあえず近場の脳神経内科へ。


診察室で待っていたのは、仮面も網タイツも身につけていなければ、(当然ながら)鞭だって持っていないのに女王さま然とした(とにかく全てが上から目線で命令口調)若めの女医さん(以下、女王さま)曰く、

歩行に問題はありませんし、関節に固さも見られませんので、
パーキンソン病ではありません。

本態性振戦です。

β遮断薬による対症療法は可能ですが副作用が多様なうえ、
カサンドラさんは飲んでいる薬の種類も多いのでやめましょう

「本態性」は「原因不明」の医学的表現ですよ。

多分オチは分かってしまったと思うけれど、もう一悶着ありましたのでお付き合いいただきたい。


同居人は(かろうじて)医療関係者です。その時は極めてめずらしく「自発的」に、職場で信頼に足る脳神経内科医とやらを紹介してもらってきたので、自宅からは遠いけれどバスに揺られて行ってみた。これが2025年の4月のことである。そこそこベテランっぽい中年男性の医者(以下、ベテラン。こちらは「ご主人様」っぽくは無い)曰く、

本態性振戦ではありませんね。(「女王さま」のお見立てを全否定)

心因性の振戦
の可能性が強いので、精神科の先生と相談してみてください。

カサンドラさんの質問された、
パーキンソン病ではありません


利き手を左にするのも良いかも知れません。

ベテラン君。子供ならまだしも、この年齢の人間にどれだけの適応力を期待しているんだい?

そう言えば、その頃はまだ僕もこんな記事を書く余裕ありましたなあ。


2025年後半に入ると右足にも振戦が。さすがに立ってる時とか歩いてる時には目立たないけれども、右脚を上に組んでいると、足でリズムを刻むような動作を繰り返す。手は右手でスマホを操作するのがほぼ不可能に。

さらに酷かったのがこの2ヶ月ほど前からの右腕の痛み。初めは◯十肩かと思って整形外科に行ったけれど、X線写真を撮って「骨に異常はありませんね」、で終了。鎮痛剤と湿布を処方されたけれど改善せず、その後から右腕全体に痛みが広がってきた。前腕(手から肘)って肩じゃないよね。


やっと精神科の主治医がやる気を出してくれて、良さげな大学病院を紹介してくれた。そんなんなら、5年前にやれ。
その足で病院へ。


紹介状を開封して中身を見たら、目敏くそれを見つけた受付の女性に、「紹介状は私信扱いなので無効になるし、罪に問われる事もあります(刑法第133条の信書開封罪のことを言いたいんだと思われる)」って、こっぴどく叱られました。この歳になって叱られるのは恥ずかしいね。でも残念ながら、それは彼女の間違いです。法的には問題無いです。ただ書類の信頼度が下がる可能性はあり面倒なので、皆様には開けないことをお勧めします。


とても真面目そう、が第一印象の女性医師(僕が医師と書くのはめずらしいこと)。見た目が学生さんみたいに若々しいが、有能そう。一通り僕の歩行能力、認知能力などを確認したのち、

右側の関節に動かしにくさがみられました。
パーキンソン病の検査をします。今のところは「疑い」です。
これから予約を取りますから、空いている日を教えてください。
MRIが混んでいて、12/2の18:00からが一番近いですが、どうしますか? 

きちんとしてるじゃん。完璧じゃん。何故これくらいにできないんだ「女王さま」?
そして、「女王さま」と「ベテラン」の唱えた
「本態性振戦」説と「心因性振戦」説は、話題にも出なかったよ。

もう一つの検査は脳ドーパミントランスポータシンチグラフィ(脳DATスキャンとも。商標?)でした。この手法はパーキンソン病やレビー小体型認知症についての情報が得られる検査法です。検査試薬としてイオフルパンというヨウ素123を含む放射性標識化合物を使うんですが、こういったものは一般に高価な訳でして、今回の検査は¥27,000でした(3割負担)。


全ての検査を終え、12/9に再び診察へ。

診察室に入ってすぐに目に飛び込んできたのは脳DATスキャンの画像。検索して調べただけの素人にも一目瞭然の典型的な画像。左側、つまり身体の右側を司る方、の勾玉型に光っているべき部分(線条体)が一回り小さい丸型になっていました。

パーキンソン病と診断するにはもう1つ条件が必要だそうで、レボドパという薬が効いたら確定なのだそう。
レボドパはドーパミン生合成における前駆体で、体内の脱炭酸酵素によりドーパミンに変換される。ちなみにドーパミンを直接投与しないのは、ドーパミンが血液脳関門を通過できず、標的部位である脳内に入れないため。


年明け早々に診察に行ってきました。医師に診断名を尋ねるまでもなく、薬を飲んだらすぐに振戦はおさまったのですから、パーキンソン病確定です。

「女王さま」と「ベテラン君」さぁ、君ら脳神経内科を標榜しているんだよね。パーキンソン病は君らの専門分野だと思うのだが、どういうことだね?


パーキンソン病は、脳内の神経伝達物質であるドーパミンが減少することで、様々な症状が現れます。

進行性の病気で、年単位とゆっくりではあるものの、QOLが確実に下がっていきます。さらに、いま服用している薬もスピードに個人差はあれど、効かなくなっていくようです。僕のような自ら棺桶に片足を何回か突っ込んだ者としては、一層のこと致命的であってくれれば良かったのですが、寿命は平均と数年しか違わないそうです。
双極症の患者は一般の人に比べて平均して10〜20年(諸説あります)ほど寿命が短いそうなので(原因は顕著に高い自殺率と生活習慣病併存リスク)、これは好都合と思いましたが、よく考えてみると僕の父母、両祖父母は平均寿命を軽く超えるまで生きていることから、長命種の家系なのでは? と若干の不安。

双極症に関心がある人向け:
最近(2025年7月)、台湾の研究チームが東洋人を対象とした報告では、15.08年の寿命のlossがあるとのこと。商業誌ですから論文本体は有料(Abstractは無料で読めます)なので読みませんでしたが、日本語要約が以下のページにまとめてありました。これまでの報告では発症年齢の重要性についても詳細に評価しているとのこと。
https://academia.carenet.com/share/news/9918ddb0-b8e2-48fb-9460-137002cee45c

原著へのリンクもあるので、お金が余っている人や只で読める専門分野の人いたらいいなぁ。



さらに認知能力も早期に低下するようです。本音を言えば、これを一番恐れている。

数年前から道に迷うようになった。実は幼少期から道に迷った記憶が、あまりない。もともと俯瞰図を頭に描きながら移動する(おそらく狩猟時代の)「習性」が強かったのと、日常的に単独行動を取ることが多かった(友達が少ないってことだよ)ため、その能力が自ずと鍛えられたことによると思われ。あと、スポーツ嫌い(でも、学生時代に武道は少しやってた)なので原典は読んだことがないけれど、有名な「あきらめたら、そこで試合終了だよ」と思っていた気はする。

しかし、どうにも頭グルグルでいくら歩いても目的地に辿り着けないことが少しずつ増えてきたように思う。いつも読まさせていただいているnoterさんの記事で学んだ空間把握に必要なアロセントリック(地図的)、エゴセントリック(スマホのマップ機能的)な能力のうち、後者が明らかに低下してきている。自分が移動したり方向を変えると、目標地点や目印にしていたものの自分を中心とした位置関係が途端に分からなくなる。

「生体GPS内蔵だよ」「星が導いてくれるんだ」とか、女の子にふざけてみせていたのが懐かしい。
スマホのマップ機能を使うのは屈辱以外何物でもなかった。

マルチタスクをこなす能力も著しく低下しているし、視覚認知能力が低下していて、「目では見えているのに、それが何なのか判別するのに時間が掛かる」「これまでのスピードで流し読みすると、必要な情報を落としてしまう」ため、作業効率低下→面倒→諦める、のパターンが増えた。

これらのここ数年感じていた事柄は、加齢や精神疾患で服用している薬剤の影響だと思っていたけれど、パーキンソン病という視点から見直してみると、どれも「典型的」と言える症状らしい。

今後の病気の進行がどの程度速いのか分からないので、いつまで文章を書けるか不明です。まあ、先のことが分からないのは皆おなじなのですけどね。その日まで、よろしくお願いいたします。


おまけ:
今になってよく調べてみれば、一般的に薬剤性パーキンソン症候群は症状に左右差が無いのが特徴らしく、この時点でその可能性は排除できていたのかも知れません。ラツーダには謂れなき罪を被せてしまいました。ここに謹んでお詫びするとともに訂正させていただきます。







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