【映画感想文】落下音
ポスターを目にした時から見に行こうと決めていましたが、やっぱり面白かったです!
不穏なキービジュアルの印象を裏切らない内容ですごく良かった!
・全体の感想
ちゃんとストーリーもあるんだけど、かなりアート寄りというか、現代美術館で展示される映像作品に近いかも。説明しすぎず、画と少量のモノローグで感じさせる。
死への恐怖、でも、どこかそれに安らぎを求めてるような、不穏・不吉なものに惹かれる気持ち、子供の頃感じてた空気感とかが再現されていて見ていて気持ちが良かった。3時間あったけど長いとは思わなくて、むしろもっと見ていたいと思ったくらい。
・ドイツだー!(陰鬱・農村)
1910年から2020年まで、北ドイツのある家に住んだ4人の少女の記憶が断片的に描かれ、時代や視点が前後左右しながら、徐々にストーリーの全体像が見えてくる(ような気がする)という構成です。レビューで言われてるよりは全然お話もわかりやすい!
現代から、東西分割の時代、ナチス、第一次世界大戦…と、ドイツの農村の歴史が描かれるんだけど、どこまでいってもまずは貧困があって、女は性処理or子供を産むための存在で、男は労働・徴兵されて、コミュニティは狭くご近所の目があり、娯楽は少なく、空は暗く陰鬱としている。
もう少し遡れば、農民戦争・宗教改革・グリム童話の世界まで繋がるような地続き感。サンホラのMärchen、Burn Your Villageみたいな世界。
ドイツ的だ〜
・キリスト教だー!
「まいばすけっとは都民への罰」という言葉があるけど、それと同じように(引き合いに出すには軽すぎる)、その土地に生まれた罪というものが存在し、生き続けるだけで罰を受けている…と思わせるような世界観で、めちゃくちゃキリスト教を感じました。
事実、その時代、その場所、その性別に生まれたことが、その人の運命を決めてしまう。フリッツは男じゃなければ足を切られなかっただろうし、リアは女じゃなければ自殺しなかっただろう。アンゲリカのモノローグにあったように、意思ではなく「その時どこにいたか」がその人の行動を規定する。
これを罪だとか罰だとか思わなければ納得できなくないか?人として生まれた尊厳って何?でもそんな世界でも、川で泳ぐのは気持ちよかったり、姉妹で遊ぶのが楽しかったり、ケーキは美味しかったりするわけ。狂うよね。
作中で歌われる子守唄の歌詞に「神のお恵みによって、明日の朝には目が覚める」ってあったけど、お恵みのない子はそのまま目覚めず死ぬってことですよね?
・「死にたさすら殺されて(大森靖子)」な現代
過去の歴史が重すぎて「この恵まれた現代社会で生きれて良かった〜!」っていう結論に走りたくなるけど、この作品では2020年の希死念慮も描かれる。しかも子供の、とても無邪気な死にたさ。全て満たされているのに、ふと「死にたいなー」と思うこともある。理由がなければ死にたがっちゃいけませんか?
ありとあらゆる理由を潰したところでやっぱり死に惹かれてしまう人はいて、それはすごく普遍的な心の動きだよってことを描いてるのがすごく良かった。
その一方で、「土地の呪い」という目線で言うならば、この現代にも形を変えて貧困・性差別・戦争は残っているわけで、この世を死にたくなるような場所にしてしまうのが人間の罪なのかも(またキリスト教的世界観が出てきている)。
・ドイツ版「残穢」なのでは
足を切られた叔父さん=私宅監置されていた男性と重なるところがあるし、土地・家を巡って世代を超えて怪異(あるいは精神的病・不運)が受け継がれるのが似ているなーと。
具体的なモンスターや幽霊が出てこないスーパーリアリズムホラーという点も同じですね。残穢・映画版は一応幽霊出ますが…見なかったことにして。「家の呪い」「土地の呪い」をなるべく非スピリチュアルに、でも文学的に説明しようとすると、歴史の話になるんだよね。
「落下音」も、恐怖を扱ってるという意味ではホラー映画なのかな…恐怖というよりはやっぱり「不安」が近いんだけど…でも私がホラーに求めてるものはちゃんと得られました!
こういう作品が描けるようになりたいぜ〜!と思いました。

東京の上映館が結構減っていて、TOHOシネマズシャンテでしか見れないのですが、皆さんもぜひ…
(私は間違えてTOHOシネマズ日比谷に行ってしまい、冷や汗をかきました。あの辺わかりにくいんだよ〜!シャンテも2つあるし!)
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下書きがオワタ pic.twitter.com/Wo4aKh14l8
— オリタ スエ (@orita00sue) May 2, 2026

