巨大な宇宙猫と出会う — 飯能の新しいアート空間
アートと自然の融合
埼玉県飯能にあるメッツァヴィレッジ。そのエントランスの道を下ると視界に飛び込んできたのは謎なオレンジ色の物体だった。それは宇宙服を着た巨大な猫だったのだ。

施設内に今年3月に誕生したばかりの「HYPER MUSEUM HANNO(ハイパーミュージアム飯能)」。「自然とデジタル」「キャラクターアート」を組み合わせた現代美術館の柿落としの企画展が、現代アーティスト・ヤノベケンジ氏による「宇宙猫の秘密の島」である。
ヤノベケンジ氏は1990年にデビューした現代アーティストで、ユーモラスな巨大彫刻で国内外で活躍されている。
奥に臨む湖の上にも、巨大な丸まった宇宙服を着た猫が鎮座していた。猫島だ。猫たちは訪れた人たちの目を奪い、多くの人が記念撮影をしていた。もちろん、私もその中のひとりなのだが。
ユニークなキャラクターとメッセージ
ひとしきり撮影を終えると、まだ真新しい白いコンクリートの階段を上がり館内へ入った。天井が高く奥行きのある館内は一見教会を彷彿とさせる。間仕切りはなく、ワンフロアで展示が構成されていた。
まず一番最初に出迎えてくれるのは、湖上にもいた丸まった宇宙猫だ。尻尾はモフモフで宇宙服はファスナーで脱着するようだ。宇宙服についている窓からはネズミが顔を出している。お前そんなところに紛れ込んでいたのか。とつい声をかけたくなってしまう。周りには宇宙遊泳をする小さな宇宙猫たち。

他にもちっさいおっさんのような「トらやん」や火や水を噴く船の「ラッキードラゴン」などが出迎えてくれるが、「トらやん」は放射能を感知する「アトムスーツ」を身に纏っているし、「ラッキードラゴン」は第五福竜丸がモデルになっている。ただユニークなわけではなく、社会的なメッセージも込められているのだ。
氏の絵本の原画も数多く展示されており、映像作品は4本立て120分というボリュームだ。ワンフロアという決して大きくはない館内ではあるが、十分に見応えがあった。

体験型アートから未来へ
ヤノベ氏のアートの原体験である岡本太郎の太陽の塔。その亡霊を追いかけるように氏の作り出す作品は、大人がみるとどこか懐かしく、キッチュな印象を受ける。童心に帰ってしまうのだ。一方で子どもがみるとそのポップなキャラクターとその大きさに圧倒される。「こんなに大きな猫みたことない!」と。大きさの子どもへのインパクトは絶大だ。訪れた子どもたちのアートの原体験をいま氏が作り出している。
そしてその経験が「みる」だけで終わらないところが、とても良かった。入場した際に、「ハイパーキッズプログラム」と称した1枚の用紙を手渡された。美術館のコンセプトとして”アーティストと共に親子で体感できるワークショップを継続的に行う”と記されていたのだが、その用紙を片手に施設内をスタンプラリーのように歩いて、フロッタージュをしながら自分だけの宇宙猫を完成させるというのだ。なんてワクワクするのだろう。
上映されていた映像作品の中で、ヤノベ氏は「絵が描ける人、描けない人関係なくアート作品が作れる」(意訳)と話しており、年齢だけでなく技術にも左右されにくい方法で、多くの人たちが公平に楽しめることはとても魅力的に感じた。
施設自体が親子連れが多く訪れるため、親子でも楽しめる美術館としているが、大人だけで訪れても十分に楽しめるし、正直なところムーミンバレーパークにしか用事がないと訪れることのなかった場所だったため、森と湖という自然の中、アートも楽しめて、お腹も満たせるとなると、ちょっとしたお出かけにちょうどいいなと思った。
次はどんな「自然とデジタル」が織りなす「キャラクターアート」に出会えるか楽しみだ。
ハイパーミュージアム飯能
ヤノベケンジ「宇宙猫の秘密の島」
会期:2025年3月1日~8月31日
住所:埼玉県飯能市宮沢327-6
開館時間:10:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
料金:大人 1200円 / 4歳~高校生 700円
