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【LAWドキュメント72時間】裁判官はなぜ誤るのか

裁判官のミスが疑われる場合は、次の方法で対応することができます。

判決に不服がある場合は、判決の送達を受けた日から2週間以内に上級の裁判所に対して控訴をすることができます。

刑事裁判において、判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認がある場合は、上告裁判所は原判決を破棄することができます。

裁判官に対して苦情がある場合は、総務省行政相談センターに電話(行政苦情110番)で相談することができます。

日本国民は誰でも、裁判官弾劾委員会に対して訴追の請求をすることができます。

裁判官が弾劾により罷免されるのは、職務上の義務に著しく違反した場合や、職務の内外を問わず裁判官としての威信を著しく失うべき非行があった場合です。


■テキスト:「裁判官はなぜ誤るのか」秋山賢三(著)(岩波新書)

[ 内容 ]
もし、裁判官の判断に誤りがあったら―。
人の一生を左右する誤判、冤罪の背景には何があるのか。
判事として再審請求事件に向き合った経験をもつ著者が、裁判官の日常生活やキャリアシステムの問題点を指摘し、さらに法曹一元化、陪審・参審制度などの司法改革が議論されている今日、裁判が市民のものになるには何が必要かを提言する。

[ 目次 ]
第1章 裁判所と裁判官の生活
第2章 刑事担当の裁判官として
第3章 再審請求を審理する―徳島ラジオ商殺し事件
第4章 証拠の評価と裁判官―袴田再審請求事件
第5章 「犯罪事実の認定」とは何か―長崎(痴漢冤罪)事件
第6章 裁判官はなぜ誤るのか

[ 問題提起 ]
元判事である著者が、裁判官の置かれている状況をもとに、日本ではなぜ起訴された人間が無罪になる確率が諸外国に比べ低いのか、また、なぜ刑事裁判で冤罪事件が発生するのかなどを考察したもの。

その生活が一般の市民生活から隔絶し、その結果エリート意識は強いが世間のことはよく知らず、ましてや公判まで直接面談することも無い被告人の犯罪に至る心情等には理解を寄せがたいこと、受動的な姿勢と形式マニュアル主義から、検察の調書を鵜呑みにしがちなことなどが指摘されています。

一方で、絶対数が少ないため1人当たりの業務量は多く、仕事を自宅に持ち帰っての判決書きに追われ、結局こうした「過重労働」を回避するためには手抜きにならざるを得ず、また、身分保障されていると言っても有形無形の圧力があり、そうしたことから小役人化せざるを得ないとも。

[ 結論 ]
著者は、裁判官として20年以上の経験を積んだあと、弁護士に転身しました。弁護士としてはじめて法廷に出た時に感じたのは、「壇が高いなあ」ということだったそうです。

壇とは、裁判官の席のある「法壇」のこと。

こうして著者は、裁判官席の高みからは、見えるものと見えないものがあることに気がついていきます。

本書の前半は、その眼で振り返った率直な裁判官生活の回顧です。

常時300件(!)を抱える過密な日常と、60年代から始まった司法の硬直化の中で、「疑わしきは被告人の利益に」という裁判の大原則を貫くことが、ますます困難になっていくのではないか……体験に基づいて、キャリア裁判官システムの問題点が明らかにされます。

後半では、弁護士として取り組んでいる事件の検討から、誤判・冤罪を生まないために、裁判官や裁判制度はどうあるべきかを考えます。

著者自身が関わったケースとして、再審・無罪が確定した「徳島ラジオ商殺し事件」('53年発生、被害者の内縁の妻だった被告女性はいったん懲役刑が確定したが、再審請求により'85年無罪判決。しかし当の女性はすでに亡くなっていた)、再審請求中の「袴田事件」('66年に発生した味噌製造会社の役員一家4人が殺され自宅が放火された事件で、従業員で元プロボクサーの袴田氏の死刑が、'80年に最高裁で確定)、最高裁へ上告した「長崎事件」を代表とする痴漢冤罪事件などが取り上げられています。

誤審の背景には、裁判官の「罪を犯した者を逃がしていいのか?」という意識が 「疑わしきは被告人の利益に」という〈推定無罪〉の原則を凌駕してしまっている実態があるという著者の分析は、自身の経験からくるだけに説得力があるものです。

司法改革はやらねばならないことだとは思いますが、弁護士の数を増やすことが裁判官の質の低下を招き、訴訟の迅速化を図ることが冤罪の多発を招く恐れもあることを考えると、なかなか制度だけですべての問題を解決するのは難しく、裁判官1人1人の人間性に依拠する部分は大きいと思いましたが、本書はまさに、一般からは見えにくい裁判官という「人間」に、内側から踏み込んだ1冊です。

[ コメント ]
司法改革が求められている現在、法曹一元化、参審制、ロースクールなどの改革構想についても、やはり「疑わしきは被告人の利益に」の原則に照らして吟味する必要がある、というのが著者の一貫した主張です。

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