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【宿題帳(自習用)】図画工作の時間:絵の教室

[テキスト]
「カラー版 絵の教室」(中公新書)安野光雅(著)

[ 内容 ]
たとえば、天使がラッパを吹きながら空を舞う名画は、技術の蓄積だけでは描けなかった。
目には見えないその姿を描く画家は、人体のデッサンに習熟し、想像力に助けられて、絵画という世界を構築していったのだろう。
この本ではクールベやゴッホなどのたくらみや情熱の跡を辿り、美の宇宙の源泉へ旅してみたい。
描く技術、鑑賞する感性を会得するには、近道も終着点もないが、創造の歴史には「絵の真実」が現われてくる。

[ 目次 ]
1 空想の宿題
2 絵と真実
3 遠近法の実験
4 よく見て描く
5 自画像の実験
6 ゴッホの存在
7 イマジネーションと子どもの時代

[ 発見(気づき) ]
日本のエッシャーと呼ばれたこともあるほどの、個性的な絵の作者。

本書のなにげないスケッチにも数学や論理に対する深い畏敬の念が読み取れる。

ゴッホを理想とされているようで、その解説が詳しい。

美術関係で読んだ新書や文庫は多いが、これほどていねいでしっかりした内容の本は初めて。

はじめに「空想の宿題」10問が提示される。

これこれこういう絵を描きなさい、というものだが、私はこれで本書の虜になった。

たとえば、問1は、

「想像上の島のアウトラインを描きなさい」

問2は、

「山の稜線を想像して描いたください」

というものだ。

ほかにもいろいろあるが、出題が的確だと思った。

想像して描く、ということは、じつはとても難しい。

ふだんからよく見ていなければならない。

描く立場で見るということは、ふつうに見るのとはまったく違う。

絵を描くことが好きな方なら、この出題の意図が、とてもよくわかる。

たとえば 問2の山の稜線の話題だが、稜線の折り重なりに「リズム」を感じることがあるのではないだろうか。

著者も似たようなことを書かれている。

ほかの出題についても書きたいが、長くなるのでここではやめる。

本書を読んでいて気がついた。

著者の絵には、むかし絵本でよく馴染んだ方も多いいのではないだろうか。

本書では『ABCの本』が紹介されているが、

「ABCの本」(安野光雅の絵本)安野光雅(著)

例えば、『あいうえおの本』でも、大人が見ても楽しめる絵本だと思う。

「あいうえおの本」(安野光雅の絵本)安野光雅(著)

材木が立体的に組み上げられて、ひらがなの造形になり、1ページに一文字という本だ。

創意工夫に富んでいて、ページをめくるのが楽しい本だった。

第二章は「絵と真実」。

写実ということの問題を、いろいろな側面から論じていく。

第三章は「遠近法の実験」。

どれも画家の立場から、実際にいろいろと試してみた事例を紹介しながら書いてあって、とてもおもしろい。

このあとの章でも、絵を実際に描く立場でさまざまな事例を紹介しているが、たとえば「具象と抽象」のような問題にもしっかり立ち入っていく。

「絵で表現する」ということの意味がつきつめられていく。

「だれもが受けたい理想の授業」という本の帯は、じつに的確な表現だと思う。

[ 教訓 ]
好きな画家のひとりである安野光雅が絵についてあれこれ語る本である。

NHK番組の人間講座「絵とイマジネーション」を下敷きにしている。

美術史の解説、絵を描く面白さ、ここに気をつけて書くといいというアドバイス、有名画家の作品と生涯など幅広い内容。

有名な画家でありながら謙虚で初心を忘れない語り。

どのテーマでもこれが正解とは言わない。

美術史や業界的にはこういう考え方やああいう考え方があるけど、私はこう思う、でも、違ったやり方もあって、私もそうしてみたいけど難しいんだ、なんて書き方で書かれている。

個の創造性を大切にしながら、先人へのレスペクトを忘れない。

それが安野光雅が、どこかで見たような気がするけれど確実にオリジナルな画風の、いい絵を描ける秘密のように感じる。

技術と創造性について著者は次のように述べている。

「たとえば「技術の修練は、創造性の対極にあって、技術を修練すればするほど、創造性からは遠ざかる、創造性を失ってまで技術を習得する必要があるだろうか」という創造性重視の見解もありました。

でも、伝統工芸や伝統演劇などの場合、解釈などしないで、「伝統を受け継ぐ」ことは、新しいことをはじめるよりも難しいと考えられます。

伝承は単なる模倣ではなく、創造性が必要で、自分の創意が歴史的な創意にはかなわない、自分の創造性もつまるところ伝統が育ててくれたのだ、と謙虚に思うことも大切だという意味です。」

昔、混雑日でも楽しめる、知る人ぞ知る?

東京ディズニーランドのオススメがあった。

ディズニードローイングクラス。

ディズニーのキャラクターを描く教室で20分程度の所要時間。

先生の映像を見ながら、線を描いていくと、あら不思議、結構、みんな良いかんじにミッキーマウスやスティッチが描けてしまう。

絵描き歌とは違い、最初に薄くおおまかな輪郭線を描かせた後、ディティールを描くアドバイスをくれる。

自由度があるので、自分で描いた気分になれるのが楽しい。

ドローイングクラスは使った鉛筆ももらえる。

前後左右の参加者と見せ合う時間もあって楽しく、テレビなどのメディアでも紹介されることが多くて、人気もあったので、これがクローズするというのは、かなり惜しまれていた。

[ 一言 ]
著者は小学校の先生の経験もあるとのことだが、緩急自在にして謙虚な語り口。

腰巻き裏に

「たとえば、天使がラッパを吹きながら空を舞う名画は、技術の蓄積だけでは描けなかった」

とある。

人間が空を舞うわけはないので、写生も写真も不可能だ。

画家が人体デッサンと想像力を組み合わせた成果が空を舞う天使という趣旨だ。

しかし腰巻きで目につくのはごらんのように「理想の授業」の文字。

これを受けたのか、まず「空想の宿題」の章。

「問1 想像上の島のアウトラインを書いてください.」

宿題というのはぞっとしないが、読むだけなら楽しめる。

全七章のうち、「遠近法の実験」「自画像の実験」など、前半はどちらかといえば理科的なアプローチ。

「ABCの本」「旅の絵本」などに見られる数々の著者の絵の種明かし的記述も楽しい。

後の二章がちょっとニュアンスが異なる。

この二章のうちでも「ゴッホの存在」は読み応えがあった。

しかし新書版で絵が小さい。

内容をしぼるとか、2冊に分けるとかして、図版を大きくしてもらいたかったところ。

あとがきでは本書の制作?に関わった人達が紹介し、最後に

「この本にかわわる毀誉褒貶はすべて以上に記した方々の肩にかかっている」

と結んでいた。

毀も貶もヒトのせいにするところ、まねしようかな。

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