ヒョウモンチョウ類の「サナギ強制吊り下げ法」で無事に羽化した話
※文章中にサナギの写真があります。
苦手な方はご注意ください。
農家である我が家のビニールハウスまわりは
生き物たちの生息場所を残す為、と称して
草刈りは高い草しか刈らない「高刈り法」を採用して程よく手を抜いている。
結果、草丈のごく低いアンダーカバーと言われる種類の草が繁茂した。
そんなアンダーカバーの中にツボスミレがある。白い可憐な花を咲かせる小さなスミレであるが、このスミレがビニールハウス周りを埋め尽くすほどになっている。
ところで、これらスミレの仲間を好んで食草とするヒョウモンチョウという蝶をご存知だろうか。
この仲間の幼虫はスミレの仲間しか食べないのだがツボスミレが埋め尽くす我が家のハウス周りは彼らの格好の繁殖場所となっている。
だが問題もある。
幼虫が誤ってビニールハウスに侵入したり、
保温資材として春先に使って片付けようとしているビニールにサナギがついていたりするのだ。
幼虫は見つけるたびに外に出してやる。
これはまだいい。
問題はサナギである。
もう片付けないといけない資材にサナギが付いてしまっては仕事にならない。
しかも、ヒョウモンチョウの仲間はなぜか
ビニールが好きで、わざわざここでサナギに
なっているフシがある。
そのため、春の保温資材を片付けるこの時期は
回収したサナギが手元に多数集まる事態となる。
ヒョウモンチョウのサナギは、尻の部分についた糸で逆さまにぶら下がるような格好をしている。取り外してしまえば、羽化の際につかまって体を固定する場所を失い、必ず羽化に失敗する。
そこで、集めたサナギの尻にある尾突起にミシン糸を結びつけたり、接着したりして安全な場所にぶら下げてやる。

これが「サナギ強制吊り下げ法」である。
今年は9個体のサナギを回収した。
ミシン糸を固定して外の鉄筋にぶら下げておいたのだが、自然はそう甘くはなかった。

見通しの良い場所に並んだサナギたちは、目ざとい鳥たちの格好の標的になってしまった。
9個体のうち3個体が運び去られ、自然のシビアさを思い知らされる。
先日、記念すべき第1号が羽化した。
鮮やかなオリーブグリーンに、光り輝く翅の
裏側。
それは見事なミドリヒョウモンだった。

これから、残りのサナギも順次羽化するだろう。
高刈りから始まった我が家のハウス周りの生態系。
片付けの手を止めてレスキューしたサナギたちにミシン糸を巻く時間は、お世辞にも効率的とは言えないけれど、片付けられる資材から救い出したヒョウモンチョウが、風に乗って大空へ飛び立っていく姿を見送るとき、この、程よい手抜きの豊かさを改めて愛おしく思う。
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