中森 俊介選手(千葉ロッテ)「ベースボール・インサイト」
間が空きましたが(汗)、第12回目の「ベースボール・インサイト」は、千葉ロッテマリーンズの中森 俊介選手にインサイトします。
中森投手の今シーズンと投球動画
中森投手は、2020年のドラフトで千葉ロッテマリーンズから2位指名を受け、明石商業から入団、今年が5年目となりますます。
6月にプロ初セーブを挙げると、抑えに抜擢され、監督推薦でオールスターに選出されました。7月に入って腰痛で登録抹消となっていましたが、 オールスター第2戦に登板を果たしました。
今シーズンは防護率も1.23と好成績でしたが、登録抹消後は残念ながら、今シーズンでの登板はありませんでした。
中森投手の今シーズンの、ストレートの平均球速は150.5kmともちろん速いです(最速は155km)(拠出:球速ドットコムさん https://tokyudx.com/shunsukenakamori/)が、それ以上に、中森投手のストレートは、バッターからすると打てる感じが全くしないストレートですので、今回取り上げました。
中森投手の場合、今シーズンはストレートの比率が60.2%、フォークの比率が25.6%と、この2球種で85.8%を占めています(拠出:球速ドットコムさん https://tokyudx.com/shunsukenakamori/)。
ストレートの比率が6割と、ストレートがピッチングの生命線となっていることがわかります。逆に言うと、ストレートを6割も投げることができる程、ストレートが有効に機能しているとも言えます。
下記は、6/24のジャイアンツ戦の吉川選手と対戦時の動画となります。セカンドゴロに仕留めて併殺、試合終了となりました。
動画は、中森投手のピッチングフォームが横から分かりやすく撮影されている、1分17秒からスタートしています。
「高さ」を捨てて、「速さ」を取る
「ベースボール・インサイト」で一貫してお話していますが、何かを捨てないと、大きな成果が得られないことが往々にしてあります。
中森投手の場合もそうです。
中森投手は「高さ」を捨てました。その代わり得られたものがあります。
それは「速さ」です。
中森投手の身長は182cmです。NPBに属する投手の平均身長(2024年)は182.1cmですので、中森投手は、ほぼほぼ平均的な身長ということになります(拠出:https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/760b46985f6d06b5ac537a807e0e66dc719fa25c)
身長だけで投球のリリースポイントが決まるわけではありませんが、あえてその高さを低くしようとは思わない身長のレベルです。
それにしてもNPB選手の平均身長は高いですね。
投球のリリースポイントが高くなれば、その分角度がついて、バッターは打ちにくくなります。しかし、ともすると、ピッチャーからするとリリースポイントを高くすることが、「ゴール」になってしまいます。
リリースポイントを高くすることは通常の投げ方からすると特殊な動きをして成しえられるもので、そこに持っていくまでが一苦労です。
そのため、当然そのあと投げるのですが、リリースポイントにもってきた時点で、どうしても変化点としてストップポイントが出やすくなります。
バッターからすると、そこで「これから投げるんだな」というのが分かりますので、ボールの角度はつくにしても、リリースのタイミングが分かりますので、ボール自体は見極め易くなります。
対して中森投手のピッチングです。
「高さ」を捨てて、「速さ」を取ると書きましたが、ここで言う「速さ」はボールの速さではなく、ピッチングフォームの「速さ」です。
動画を見ていただきたいのですが、余計な動作は一切しません。
そして前に向かっていく推進力の出力を上げているのが良いところです。
前へ推進力を出すと、体が前に突っ込んで、体が開きやすくなってボールの出どころがわかりやすくなるという点がありますが、そこは左足を上手く 使って肩の開きも止めて対策しています。
バッティングもそうですが前への推進力は大切です。ボールを前に投げる、飛ばすというのが原点ですので。
その上で体の突っ込みをどうコントロールするかがポイントです。
右ピッチャーが前に突っ込んで投げていくと、左肩が下がり、右肩が上がっては、高さは確かに出るのですが、先程お話したように、くっきりと変化点が出て、ボールを見極められ易くなります。
右肩と左肩の高さを平行に
中森投手の場合どうでしょう。
全然右肩が上がっていません!
左肩と平行と言って良いでしょう。
こうなると速いです!ピッチングのスピードが。
ピッチングフォームの中で、余計な動きをせず、左肩から右肩の平行ラインを築いて、一気に直線的な動きで投げることができるので、投球動作は速く、そして投球時間を短くすることができます。
そのことで、バッターのスイングに掛ける時間を取りにくくすることができるので、バッターに対して有利なポジションを築くことができます。
そしてバッターからの視点に立つと、リリースポイントを把握が遅れます。
右肩、左肩平行で直線的に投げられると、角度がない分逆に、直線のどこでボールがリリースされたか極めて判別しにくくなります。
ピッチャーはボールを、直線的にトンネルを通し、バッターはトンネルを抜けて初めてボールを認識するようなイメージです。
また中森投手が心憎いのは、肘の鋭い切り返しで、前への推進力を出して、バッターにより近いところでボールをリリースしてボールの球持ちを良くしています。バッターが思っているよりも半テンポ、ボールのリリース情報の把握を遅らせることができています。
バッターにとって嫌なことは、「バットを振ってもボールに当たらない」というのは堪えます。
そして「バットを振ってもボールに当たらない」ということにも、2つのパターンがあります。
1つは、自分が想定していたボールの軌道と違っていたためボールがバットに当たらない、そしてもう1つは振り遅れによるものです。
中森投手の場合、ピッチングフォームの「速さ」とボールの「速さ」で後者を実現できています。
中森投手は今シーズン後半戦での登板はありませんでしたが、来シーズンの復帰を心から期待しています。
今回は以上です。
追記
「スーパープレイヤーの条件 2」(文庫本)を昨年、幻冬舎から出版させていただきました(プロ野球で活躍されている選手の卓越した技術の本質を分析した本です)。
現在、同著を幻冬舎「ゴールドライフオンライン」で連載形式でアップいただいていますので、そちら(下記となります)もご覧いただければ幸いです。
