【バリスタ必見】テイスティングスキルの重要性と基本
今回は「バリスタにとってテイスティングがいかに重要か」という話と、その理由についてお伝えします。
「バリスタとしてレベルアップしたい」というのは、多くの人が考えることかもしれません。なかでも、スペシャルティコーヒーの世界における非常に高いレベル、たとえば競技会などで上位入賞を目指すようなレベルを想定していると、スキルアップはより重要になります。そこで私がよくお話しするのは、「まず何よりテイスティングが重要だ」ということです。技術を磨くのはもちろん大切ですが、その技術の正しさを判断する指標となるのがテイスティングだからです。
「正しい技術がなければ良いエスプレッソは抽出できないのだから、技術が先では?」という意見もあるかもしれません。しかしこれは、よく言われる“鶏が先か卵が先か”のような問題ですが、間違いなく技術よりもテイスティングが先に来るべきだと私は考えています。なぜなら、技術が正しいかどうかを判断するのはテイスティングだからです。たとえばJBC(ジャパン バリスタ チャンピオンシップ)の練習をしていて、「コーヒーの味を引き出せているか?」という判断をしたいなら、そのカップの味が良いかどうかどうかを理解できれなければ、技術改善の判断もできないからです。
それでは、よりレベルアップにつながるテイスティングとは具体的にどのようにして行えばいいのでしょうか。以下で4つのポイントに分けて考えてみます。
1.わかっている人と一緒にテイスティングをする
テイスティングを熟知し、体系的に多様なコーヒーを体験している人——たとえばJBCやJBrCなどの競技に詳しい、または、高いレベルの競技者や指導経験のある人と一緒にテイスティングするのが理想です。
たとえば、あなたがパナマのウォッシュドを飲んで「酸味がジューシーでボリューム感がすごい!」と驚いたとします。けれど、素材を熟知している人にとっては「このコーヒーは、もっと素晴らしい酸味を持っているので、ポテンシャルは出切っていない」と感じるかもしれません。あるいは、自分には「素晴らしいタクタイル」だと思えたコーヒーでも、ジャッジ経験の豊富な人からすると「渋みが残っているので、これを解消しなければ高い評価にはならない」と判断され、そこに技術的な問題があることが判明する場合もあります。
こうした気づきは、実際にわかっている人と一緒にテイスティングをし、意見を交換することで得られるのです。
2.経験を積む、とにかく積む
次に大事なのは「ひたすら数をこなす」ことと、「多面的にいろいろなコーヒーと向き合う」ことです。

1シーズンで1,000回以上のテイスティングをこなしていた
私自身は、2005年に初めてJBCのジャッジをしました。当時は審査員の人数が今より少なく、私はジャッジ陣のなかではかなりの若手でした。経験豊富な先輩方は「若手が入った」と喜んでくれて、いきなりヘッドジャッジに任命されました。1競技者につきエスプレッソ4杯・ミルクビバレッジ4杯、最多で1日15人ほど審査していました。そうすると1日だけで「1競技者8杯 × 15名」で120杯をテイスティングすることになり、それが当時の大会期間中である8日間続けば約960杯、飲み直しや再確認を含めると、およそ1000杯ほどになります。これを4年ほど繰り返した経験は、私にとって大きな財産になりました。
1000杯飲んでいると、1001杯目は必然的にそれまでの1000杯と比較ができるようになります。酸味が強いのか、苦みが強いのか、甘さの度合いはどうなのか——すべて過去1000杯との相対評価が可能だからです。多くのサンプルをテイスティングすればするほど、誰でもより正確な評価に近づけます。
さらに当時のJBCは160名の競技者が出場し、100名以上のバリスタを実際にテイスティングできたのも大きな経験でした。使用するコーヒーの生産地や品種、焙煎度合い、抽出方法もすべて違う。これほど多彩なコーヒーを連続で体験できたのは本当に大きな学習機会でした。そして、経験豊富なジャッジの先輩たちからのフィードバックも得られます。
今でもジャッジの経験は、10万や20万円払ってでもやる価値がある、と個人的には思うくらいです。
(これは結果論、私の振り返りであって、ジャッジへの志願は、スペシャルティコーヒーや競技大会の普及・拡大の気持ちを持つことが最優先です。自らの経験や名声のためだけに応募することは、くれぐれも避けてください)
3.感覚と数字、全てを記録する
テイスティングは感覚だけで終わらせず、数字も含めて記録するのが大切です。たとえばカッピングスコアや競技会のスコアシートをベースに、正確にその時の状況をメモすること。熟練したカッパーや競技者、ジャッジは、頭のなかにスコアシートが正確に残っており、それに基づいて評価するクセがついています。私もJBCやWBCのスコアシートを思い浮かべながらエスプレッソやミルクビバレッジの評価をすることが多いです。

さらに「生豆のロット」「焙煎日や焙煎度」「エイジングの度合い」「開封日」「粉量」「抽出時間やメソッドの詳細」など、できるだけ数字で示せる情報と、自分が感じた味覚的・感覚的な部分を両方残す。これを積み重ねることで、「なぜこの味になったのか」「どう改善できるのか」が具体的に見えてきます。最近は**acaia(アカイア)**のような正確性の高い計測器が多数ありますから、そうしたツールを活用することで、バリスタのレベルアップを効率的に進められます。
aciaの登場はバリスタの正確性を高めるのに画期的な役割を果たした
現在は安価な買いやすいラインも数多く登場している
4.テイスティングのステップを踏む
最後に、私がテイスティングで重視している3ステップを紹介します。
ありのままを言語化・記録する
飲んだときの味を、まずはそのまま言語化します。たとえば「最初に酸味のボリュームが非常に強く感じた」「後味は甘さで終わるが、少し渋みが残った」「ベリー感を強く感じる」など、具体的な味覚の印象をそのまま書き出すことが大切です。この段階で原因を推測したり評価したりしないように注意しましょう。何が原因かを分析・仮説を立てる
次に「なぜこの味になったのか?」を考え、原因を推測します。たとえば「抽出時間が長すぎたかもしれない」「焙煎が浅すぎるor深すぎる」「エイジングが進みすぎているのでは」などなど。正確に特定できなくても仮説を立てることで、次の改善策につなげられます。どう修正すべきかを考える
分析した原因を基に、「粉量を0.5g増やしてみる」「エイジング期間をもっと短くする」など具体的な修正案を立てます。この繰り返しによって、テイスティングの精度と技術の両方が向上していきます。あとは実行する
あとは修正案を実行し、この1〜4を繰り返すだけです!

後で見直すことも、共有することも容易にできるからだ
もちろん紙のメモでもOK
まとめ
バリスタとしてレベルアップしたいとき、真っ先に注目すべきはテイスティングです。技術の正確さを判断するのも、味の良し悪しを見極めるのも、テイスティングが基盤になります。
そのために、
わかっている人と一緒にテイスティングをする
とにかく数多くの経験を積む
感覚だけでなく数字も記録する
テイスティングのステップ(言語化→原因分析→修正策の考案→実行)をしっかり踏む
これらを実践していくことが大きな成長につながるでしょう。
バリスタとしてさらに高みを目指す方にとって、テイスティングを中心に据えたアプローチが何よりの近道だと思います。ぜひ、自分なりの方法で取り組んでみてください。今よりもっと豊かなコーヒーの世界を味わえるはずです。
次回このことについてnoteを書く際には、さらに踏み込んで、体系的に学習する方法を残したいと思います。
