note内のマーケティングをエビデンスベースで考えてみた
noteを始めると、フォロワー数やスキ率が気になります。
「まずは濃いファンをつくろう」
「自分だけのニッチなポジションを確立しよう」
「毎回読んでくれる固定読者を大切にしよう」
どれも、もっともらしく聞こえます。
しかし、ブランドの購買データを長年研究してきたアレンバーグ・バス研究所の知見に照らすと、小さなアカウントが最初に優先すべきことは、熱心なファンづくりではない可能性があります。
先に必要なのは、もっと単純です。
自分の記事を、一度でも読んだことがある人を増やすことです。
今回は、企業のブランド成長に関する研究結果を、note内のマーケティングに置き換えて考えてみます。
なお、これらの研究は主に消費財ブランドを対象にしたものであり、noteで同じ結果が直接確認されたわけではありません。
ここから先は、ブランド研究で確認された傾向をnoteへ応用した、実務上の仮説として読んでください。
また、私自身がnoteでの発信を始めてまだ3週間ほどであり、今回ご紹介するアプローチが実際にどこまで通用するかは、現在進行形で検証している段階であることをあらかじめお伝えしておきます。
研究結果① 小さなブランドも、ロイヤルティではなく浸透率で伸びる
2026年に発表された研究では、マーケットシェア1%未満の小規模ブランドを対象に、5年間の成長パターンが分析されました。
調査の結果、小さなブランドが少数の熱狂的な顧客に支えられているという証拠は確認されませんでした。
むしろ、小規模ブランドは一般的にロイヤルティが低く、成長したブランドの売上増加は、購入頻度よりも購入者数の増加=浸透率の上昇によってもたらされていました。
これは、小さなブランドも大きなブランドと同じように、顧客基盤を広げることで成長することを示しています。
noteに置き換えるとどうなるか
noteでは、次のように考えられます。
ブランドは、クリエイターのアカウント。
商品は、一つひとつの記事。
購入は、記事を読むこと。
再購入は、別の記事も読むこと。
ロイヤルティは、フォローや継続的な閲覧。
浸透率は、あなたの記事を一度でも読んだことがある人の割合です。
この置き換えが正しいなら、小さなnoteアカウントが最初に追うべきなのは、スキ率や固定読者からの反応だけではありません。
まず追うべきなのは、
これまで自分を知らなかった人に、どれだけ記事を読んでもらえたか
です。
たとえば、100人に読まれて20人からスキをもらった記事は、スキ率20%です。
一方、5,000人に読まれて100人からスキをもらった記事は、スキ率2%です。
スキ率だけを見れば、前者の方が優秀に見えます。
しかし、アカウントの浸透という観点では、後者の方が圧倒的に多くの新規読者との接点をつくっています。
もちろん、スキ率が低くてもよいという話ではありません。
重要なのは、スキ率を高く保つこと自体を最終目的にしないことです。
小さなアカウントほど、既存読者からの濃い反応より、新しい読者に一度読まれることを優先する必要があります。
研究結果② 成長余地の多くは、ライトユーザーと未購入者にある
2024年に発表された研究では、約1万2,400世帯の購買データなどを使い、ブランドの成長余地がどこに存在するかが分析されました。
結果として、ほとんどのブランドにとって、大きな成長余地はヘビーユーザーではなく、ライトユーザーと未購入者に存在することが示されました。
すでに頻繁に買っている人には、購入回数をさらに増やせる余地があまりありません。
一方、まだ買ったことがない人や、たまにしか買わない人は人数が多いため、わずかな行動変化でも売上全体への影響が大きくなります。
noteに置き換えるとどうなるか
あなたの記事を毎回読んでくれる人に、もう1本読んでもらうことも大切です。
しかし、成長への影響が大きいのは、
- あなたを知らない人
- 名前は見たことがあるが、まだ読んでいない人
- 過去に1本だけ読んだ人
- マーケティング記事を読むが、あなたの記事は読んでいない人
です。
ところが、発信を続けていると、書き手の意識はどうしても既存読者へ向かいます。
専門用語が増え、過去記事を読んでいる前提が増え、テーマも徐々にマニアックになっていきます。
既存読者との関係は深まりますが、初めて読む人には入りにくくなります。
これは、ブランドが既存顧客向け施策に偏り、新規顧客を獲得できなくなる構造と似ています。
既存読者を満足させる記事だけでなく、初めて読む人が入ってこられる記事を意図的につくる必要があります。
たとえば、
「NBDディリクレモデルにおける理論値からの逸脱」
というタイトルは、専門性は高いものの、読者が限られます。
一方、
「なぜ人気商品にも、買わなくなる人が必ずいるのか」
という入口なら、同じ理論をより広い読者へ届けられます。
専門性を捨てる必要はありません。
専門性は、入口ではなく、読んだ後に感じてもらえばよいのです。
研究結果③ 新ブランドを試すのは、カテゴリーをよく買う人である
新ブランドの初期購入者を調べた研究では、新ブランドを買う人は、発売前からそのカテゴリーを比較的頻繁に購入していたことが確認されています。
ただし、その人たちが新ブランドだけを買う熱心なファンになるわけではありません。
新ブランドは、カテゴリーを頻繁に買う人が持つ複数ブランドの選択肢に、軽く加わる傾向がありました。
たとえば、新しいコーヒーブランドを最初に試すのは、普段からコーヒーをよく買う人です。
しかし、その人は新ブランドだけに乗り換えるのではなく、複数のブランドを状況によって買い分けます。
noteに置き換えるとどうなるか
新しいマーケティング記事を最初に読んでくれる可能性が高いのは、普段からnoteでマーケティング、仕事術、ビジネス記事を読んでいる人です。
つまり、最初から「自分だけの読者」を探すのではなく、すでにそのカテゴリーを読んでいる人の選択肢に入る必要があります。
ここで重要になるのが、何について書かれた記事なのかを、一瞬で理解できることです。
- マーケティングの記事なのか
- キャリアの記事なのか
- 作品の感想なのか
- 経営論なのか
- note運用の記事なのか
タイトルや冒頭を見てもカテゴリーがわからなければ、読者の選択肢に入りません。
独自性を強く出そうとするあまり、抽象的で意味深なタイトルをつけるより、
「ブランディングって、結局何をすればいいの?」
「Web広告とテレビCMは、どちらが効果的なのか?」
「PayPayはなぜ後発から市場を奪えたのか?」
と書いた方が、何が得られる記事なのかが伝わります。
note公式も、検索される記事をつくるうえで、読者が使うキーワードを想像し、タイトルや本文に含めることを推奨しています。
新規読者を獲得するには、違いを説明する前に、何のカテゴリーの記事かを理解してもらう必要があります。
研究結果④ 最初に買われても、ブランドはまだ記憶されていない
英国で行われた40件の新ブランド投入の研究では、発売後12カ月間の新ブランドは、モデル上の期待値より購入者が多い一方、ロイヤルティは低い傾向が確認されました。
さらに、新規購入者は既存購入者に比べ、そのブランドに対する記憶や連想が弱い可能性も示されました。
研究者は、新規購入者の記憶を強化し、継続的な選択肢に入れるためには、追加のマーケティング接触が必要だと述べています。
新商品は、発売直後の話題性によって一度は試してもらえます。
しかし、一度買われたからといって、そのブランドが消費者の頭に定着したとは限りません。
noteに置き換えるとどうなるか
1本の記事が伸びても、その時点では読者はあなたを覚えていない可能性があります。
記事の内容は覚えていても、
「誰が書いた記事だったか」
までは記憶されていないことがあります。
人気作品を扱った記事であれば、読者の記憶に残るのは、書き手より作品名かもしれません。
だからこそ、ヒット記事を単発で終わらせてはいけません。
同じ読者が再び接触したときに、
「前にもこの人の記事を読んだ」
と気づける設計が必要です。
具体的には、
- 扱うテーマを大きく変えすぎない
- タイトル画像のデザインをそろえる
- プロフィールの説明を固定する
- 記事内で使う考え方を繰り返す
- 関連記事を記事末に設置する
- 同じテーマを別の事例で何度も扱う
といった方法があります。
たとえば、
コナン映画の記事で「メンタルアベイラビリティ」を知った人が、
次にPayPayの記事で「フィジカルアベイラビリティ」を読み、
さらにブランディングの記事で「記述属性と評価属性」に触れる。
このような接触が重なることで、
「人気作品の感想を書く人」ではなく、
「世の中のヒットをマーケティング研究で説明する人」
として記憶されるようになります。
一度読まれることと、書き手として覚えられることは別です。
まず新規読者を獲得し、その後に一貫した接触によって記憶をつくる必要があります。
noteにおけるメンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティ
アレンバーグ・バス派では、ブランド成長の重要な要因として、メンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティが挙げられます。
メンタルアベイラビリティは、購買場面でブランドを思い出せる可能性。
フィジカルアベイラビリティは、買おうと思ったときに、実際に見つけて買える可能性です。
noteに置き換えるなら、メンタルアベイラビリティは、
「マーケティングの記事を読みたい」
「ヒットした理由を知りたい」
「仕事で施策を通す方法を知りたい」
と思ったときに、名前や記事を思い出してもらえることです。
フィジカルアベイラビリティは、
- noteのおすすめに表示される
- Google検索で見つかる
- note内検索で見つかる
- SNSで記事が流れてくる
- 他の記事の関連記事に表示される
- 記事末のリンクから移動できる
- クリエイターページで目的の記事を見つけられる
といった、記事への到達可能性です。
noteは現在、すべての人に同じ人気記事を見せるのではなく、読者ごとの関心に合った記事を届けるおすすめシステムを重視しています。
つまり、フォロワーが少なくても、記事のテーマと読者の関心が合えば、発見される可能性があります。
ただし、記事のテーマが毎回ばらばらでは、読者にもシステムにも「何を書く人なのか」が伝わりにくくなります。
ここで必要になるのが、
読者を狭めるのではなく、戦うカテゴリーを限定すること
です。
「マーケターだけに書く」は、正しい絞り方ではない
小さなアカウントは、ターゲットを狭めるべきだと言われます。
しかし、
「30代の事業会社マーケターだけに向けて書く」
「アレンバーグ・バスをすでに知っている人だけに向けて書く」
という絞り方をすると、成長できる読者の母数まで小さくしてしまいます。
狭めるべきなのは読者属性ではなく、扱う問題の範囲です。
たとえば、
«人気作品や企業のヒットを、マーケティング研究と実務経験から読み解く»
というカテゴリーであれば、
- マーケター
- 営業職
- 企画職
- 管理職
- 経営者
- noteを書いている人
- 人気作品のファン
- 仕事を改善したいビジネスパーソン
まで対象にできます。
マーケティングの専門性は保ちながら、読者をマーケターに限定する必要はありません。
専門領域は狭く、読者への入口は広くする。
これが、弱小ブランドの研究をnoteへ置き換えたときの基本戦略です。
具体的には、3種類の記事を組み合わせる
この考え方から、私のnoteの記事は大きく3種類に分けられます。
1つ目は、人気IPや有名企業を扱う記事です。
コナン、HUNTER×HUNTER、VIVANT、PayPay、森岡毅さんなど、もともと多くの人が関心を持っている題材を入口にします。
これは、新規読者を獲得するための記事です。
2つ目は、検索され続ける資産記事です。
ブランディング、ペルソナ、Web広告、テレビCM、マーケティング書籍など、読者が具体的な疑問を持って検索するテーマを扱います。
これは、過去記事を継続的に発見してもらうための記事です。
3つ目は、自分の専門性をつくる記事です。
NBDディリクレ、ダブル・ジョパディ、購買重複、カテゴリーエントリーポイントなど、自分が継続して扱いたい専門領域を深掘りします。
これは、アカウントを記憶してもらうための記事です。
重要なのは、3種類を別々に運用しないことです。
人気IPの記事から検索記事へ。
検索記事から専門記事へ。
専門記事から実務経験の記事へ。
記事同士をつなぐことで、単発のアクセスをアカウント全体の成長へ変換します。
noteで見るべきKPIも変わる
この戦略を採用するなら、フォロワー数とスキ率だけでは不十分です。
見るべき指標は、大きく4つあります。
最初は浸透です。
- 月間の総ビュー数
- 新しい読者に届いた記事数
- 公開から時間がたっても読まれている記事数
- 一定以上のビューを獲得した記事の本数
次に、発見可能性です。
- 検索から読まれる記事
- おすすめ面から読まれる記事
- SNSから読まれる記事
- 過去記事の継続的なビュー
その次が回遊です。
- ある記事が伸びたとき、別の記事も伸びているか
- 記事末で紹介した記事が読まれているか
- 初見読者がプロフィールや固定記事まで移動しているか
最後にロイヤルティです。
- フォロー
- スキ
- コメント
- 継続閲覧
- 複数記事への反応
ロイヤルティは不要ではありません。
しかし、研究が示しているのは、ロイヤルティは顧客基盤を広げる代わりにはならないということです。
noteでも同様に、フォロワーとの関係を深めるだけでは、アカウントの外側にいる人には届きません。
まず読者を増やす。
その結果として、フォロワーや固定読者も増えていく。
この順番で考える必要があります。
弱小アカウントほど、ファンづくりより売り場づくり
小さなnoteアカウントが成長するために、必ずしも一部の人から猛烈に愛される必要はありません。
まず必要なのは、
- 読者が関心を持つテーマを扱う
- 何について書かれた記事か明確にする
- 検索やおすすめで見つかる記事を蓄積する
- 人気テーマから専門記事への導線をつくる
- 同じ専門性を、異なる題材で繰り返し伝える
ことです。
大量のフォロワーを持つ大手アカウントと、正面から知名度で戦う必要はありません。
しかし、少数の固定読者だけを囲っていても、いつまでも小さなままです。
戦場は、マーケティング、ヒットの構造、仕事の意思決定といった領域に限定する。
その範囲の中では、マーケターだけでなく、できるだけ多くの人が入ってこられる入口をつくる。
弱小アカウントの戦略とは、読者を狭くすることではありません。
限られたカテゴリーの中で、読まれる可能性を広げることです。
フォロワーにもう1本読んでもらう前に、まだ自分を知らない人に、まず1本読んでもらう。
note内のマーケティングをエビデンスベースで考えるなら、そこが成長の出発点になるのではないでしょうか。
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