プロジェクト・ヘイル・メアリー

面白いSFということで、以前から柳下毅一郎さんあたりに紹介されていた本。『三体』と同時期のことだったが、『三体』三部作にとりかかる一方、こちらは長らく積ん読状態になっていた。そうこうしているうちに映画公開が迫ってきており、どちらを先に観る/読むかを悩んだ挙句、年末年始の休みで小説の方を読み勧めようということに決め、読み始めた。読み始めたら止まらなくなり、1週間ほどで上下巻を読了。面白かった!『三体』とは同じ題材を扱っているようで異なるスタンスだが、どちらも面白い。

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の面白さは大きく言って2つ。1つは、科学者が感じる興奮や発見の喜び。観測や実験による数値の不自然な違いに気付くところから、仮説を立て、更にそれを確認するための実験をし、等々繰り返して、真相に辿りつく。科学者や研究者の日常の活動であるかもしれないが、実はそれがエキサイティングであることを、我々にも感じられるように表現されている。これこそ、サイエンス、フィクションの真髄ではないか!

もう1つ、ここからは映画の真相に近づいていくのだが(原作を読まずに映画に臨む方はこの辺で止めておいた方がよい)、「異星人コンタクトもの」ということだ。異星人あるいは異星生物といっても2種類あり、本作ではそれが両方出てくる。1つは非知性生物で、それが、太陽の温度が下がっていく原因となる「アストロファージ」。その繁殖を止める原因を探るため、主人公はある星系に送られるのだが、そこで出会ったのが、自分の星系の恒星がアストロファージにやられたため、同じ目的で調査にやってきた「エリディアン」のロッキー。異なる生活環境、異なる習性、異なる言語の2人がコンタクトからコミュニケーションを試み、同じ目的に向かっていくというここからは「バディ物」になる。異なる知的生命体が出会う場合の状況については、『三体』が敵対を前提としているのと対照的だ。この友情がなかなか熱い。

ところで、現時点(2026年1月)で、映画の予告編が公開されているが、巷では「予告編は見ないように!」と勧められているらしい。どうやら、上の後者のポイント、すなわち、「異星人バディ物」について、かなりネタバレされているようだ。同時に、映画の尺からいって、1本の中で表現できるのもこのくらいで、「科学の喜び」の方は、あまり表現できないのではと邪推する。そういう意味では、やはり原作を先に読んでおいてよかった。
映画はあまり期待しないで見に行くことにしよう。


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