見出し画像

家づくりで最初に考えたのは、土地ではなく「暮らし方」でした。

住みたいエリアは決まりました。

でも、その次に私たちが始めたのは、土地探しではありませんでした。

不動産会社にも行っていません。

住宅情報サイトで、毎日のように土地を探すこともしませんでした。

家づくりを始めるなら、まず土地を探す。

おそらく、それが一般的な順番だと思います。

親から受け継いだ土地がある人もいます。

「絶対にこの場所で暮らしたい」という希望が明確な人もいるでしょう。

そういう人にとっては、土地から考えるのが自然です。

どちらが正しい、間違っているという話ではありません。

ただ、私たちは少し違う順番で考えました。

私たちが最初に探したのは土地ではなく、

これから、どんな毎日を送りたいのか。

その暮らしのイメージでした。



家づくりを考え始めた頃の私は、正直なところ、

「引っ越しをする」

というくらいの感覚しかありませんでした。

今より広い家がいい。

部屋もたくさん欲しい。

自分の部屋もあったらいい。

そんな漠然としたイメージです。

でも、まず家族で話し合うことにしました。

家づくりを進める前に、自分たちが何を大切にしたいのか、ある程度は意見を揃えておく必要があると思ったからです。

その後、ネットで家について調べました。

慣れないYouTubeやSNSも見ました。

けれど、情報を集めれば集めるほど、最初に必要なのは設備やメーカーの知識ではなく、

自分たちがどう暮らしたいのかを考えること

だと感じるようになりました。

夫婦で話しているうちに、会話の内容も少しずつ変わっていきました。

「どんな家が欲しいか」

ではなく、

「家でどんなふうに過ごしたいか」

という話になっていったのです。



例えば、私は最初、自分の部屋が欲しいと思っていました。

せっかく注文住宅を建てるなら、自分だけの部屋があってもいい。

なんとなく、そう考えていたのです。

でも、具体的に暮らしを想像してみると、少し違和感がありました。

仕事から帰ってきて、自分の部屋にこもるだろうか。

休日に、一人だけ別の部屋で過ごすだろうか。

パソコンを使うだけなら、ダイニングやリビングのカウンターでも十分なのではないか。

そう考えると、私にとって必要なのは「自分の部屋」ではありませんでした。

一方で、絶対に必要だと思ったものがあります。

それが収納です。

季節物をしまう場所。

日用品のストックを置く場所。

できるだけ生活感を表に出さず、家の中を整えておくための場所。

使うか分からない個室を増やすよりも、家族全員が使える収納を増やした方が、私たちの暮らしには合っている。

話し合うことで、そんなことが少しずつ見えてきました。



家の形についても、夫婦で最初から意見が一致していたわけではありません。

私は、ごく一般的な2階建てをイメージしていました。

平屋というと、敷地の広い豪邸のような印象があり、自分たちにはあまり現実的ではないと思っていたのです。

一方、妻の希望は最初から変わりませんでした。

「平屋がいい」

老後のことを考えれば、階段や段差はできるだけ少ない方がいい。

今もマンションでワンフロアの生活をしているので、その暮らしに抵抗はない。

洗濯物を干すために、毎日2階のベランダまで運ぶ生活もしたくない。

さらに妻は、田舎の平屋で育っていました。

妻にとって平屋は特別な家ではなく、自然な暮らしの形だったのだと思います。

理由を聞けば、納得できることばかりでした。

それでも私は、平屋にすると部屋数が減り、自分の居場所も狭くなるような気がしていました。

そんな私に、妻が教えてくれたのが、

スキップフロア

という選択肢でした。

床の高さを少しずらして、中二階のような空間をつくる。

その下を収納として使ったり、小さな作業スペースをつくったりすることもできる。

スキップフロアという選択肢があることで、

平屋でも収納を増やしながら、空間を有効に使えるかもしれない。

平屋でも、自分たちが考えていた暮らしを形にできるかもしれない。

そう思えた瞬間でした。

私はそこで初めて、

「平屋でもいい」

ではなく、

「平屋は、ありかもしれない」

と思いました。

妻の希望をただ受け入れるのではなく、自分が不安に感じていた部分も含めて、一つの形にできる可能性が見えたからです。

もちろん、自分の意見も大切です。

でも、せっかく家を建てるなら、誰か一人だけが満足する家ではなく、

家族全員が笑顔で暮らせる家にしたい。

そのために、お互いの希望を削るのではなく、両方を実現できる方法を探したいと思いました。



街を見ていると、本当にいろいろな家があります。

大きな和風の家。

都会の便利な立地に建つ3階建てや4階建ての家。

一般的な2階建て。

庭の広い平屋。

丸みのある家。

鉄骨の家。

少し変わった形をした家。

庭がとても広い家もあれば、庭をつくらず建物を最大限広くした家もあります。

家の形が違えば、そこで送られる生活も違います。

階段を上り下りする暮らし。

庭で子どもと遊ぶ暮らし。

駅の近くで利便性を優先する暮らし。

家族が同じフロアで過ごす暮らし。

そこには、それぞれの家族が選んだ生活があります。

だから私たちは、土地だけを先に決めるのではなく、

まず、自分たちがどんな暮らしをしたいのかを考えました。

土地と建物は、切り離して考えられないと思ったからです。

どれだけ立地や価格が魅力的な土地でも、希望する家が建てられないのであれば、私たちにとっては本当に良い土地とは言えません。

反対に、どんな家を建てたいのかが分かっていれば、

その暮らしを当てはめられる土地かどうかを判断できます。

予算も土地も、いくらでも条件を絞ることはできます。

でも、大切なのは、絞った条件の中でどんな生活を送るのか。

土地と建物、間取りと予算。

そのすべてを含めたトータルバランスが大切だと考えました。



そうして私たちは、

「まずは実際に平屋を見てみよう」

と決めました。

ハウスメーカーか工務店かには、まだこだわっていませんでした。

知りたかったのは会社の名前ではなく、

平屋ではどんな暮らしができるのか。

どれくらい空間を広く使えるのか。

収納やスキップフロアをどう取り入れられるのか。

どんな家なら、家族の希望を形にできるのか。

まずは、平屋を分かりやすく宣伝している会社を探し、その中から関西圏で見学できる展示場を探しました。

ところが、調べてみると、平屋のモデルハウスは驚くほど少ない。

「平屋って、最近流行っているんじゃなかったのか」

そう思ったことを覚えています。

その中で見つけたのが、トヨタホームの平屋展示場でした。

スキップフロアを取り入れた平屋を紹介しており、妻から聞いていた暮らしを、実際の空間として見られるかもしれないと思いました。

とりあえず、見に行ってみよう。

モデルハウスを見ること自体は好きでしたし、自宅から少し距離があったため、ちょっとした旅行のような気分もありました。

そして何より、

何か一つでも動き出さなければ、家づくりは前に進まない。

そんな気持ちで、私たちは初めて住宅展示場へ向かいました。



今振り返っても、私はこの順番で良かったと思っています。

もし、何も決めないまま土地だけを探し続けていたら、どの土地を見ても決め手がなく、延々と迷っていたかもしれません。

家づくりを考えることは、

家の大きさや部屋数を決めることではありませんでした。

家族がどんな毎日を送りたいのか。

何に時間を使いたいのか。

何が必要で、何ならなくても困らないのか。

それを一つずつ言葉にしていくことでした。

「引っ越しをする」という漠然とした話が、

話し合ううちに、

「私たちは、こんな暮らしがしたい」

という具体的なイメージに変わっていった。

その時間があったからこそ、建物を考えることができました。

そして建物を考えたからこそ、これから探すべき土地の条件も見えてきました。

家づくりで最初に決めるべきものは、人によって違うと思います。

土地から始める人もいれば、建物から始める人もいます。

私たちの場合は、

家族全員が笑顔で暮らせる毎日を考えること。

そこから、すべてが始まりました。

いいなと思ったら応援しよう!