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矯正の3年でマスターした技

歯医者が嫌いだった。
「キーン」という音がするのと、脳みそまで振動させる治療が。

矯正歯科にお世話になったのは中学2年生のとき。どんな歯並びだったのかというと、八重歯だった。右と左の八重歯で、笑うと口が閉じない。
特に支障はなかったのだが、自身の歯並びに不満を持っていた母が「あんた矯正やる?」と提案してきた。
正直初めは気が進まなかったのだが、八重歯の今後の将来についてどんなに不便なのか、母にとくとくと矯正を説得されると、そうなのかもしれないと、なんとなく「矯正をしようかな」という気分になってきた。いずれにしても自分自身は強い意志はなかった。

隣の駅にある評判の良い矯正歯科へ行くと、歯形を取ってもらい、どんなステップで矯正が進むのか、詳細に説明してもらった。
2週間に1度この矯正歯科に通うことが決定し、まずは上下2本ずつの永久歯を抜くのだったが、先生がいくら数えても下の歯が1本少ないらしい。その前に通っていた先生がもしかしたら抜いた(抜いてくれた?)のかもしれないと察するが、1本すくなかったことにより、歯並びも上の歯よりよかったしなにより抜く歯が1本少なくなったのがラッキーだと思った。

辛かったのは歯形を取る時にガムのようなものが口の奥まではいってそれを数分固まるまで待つことだった。「おえぇぇぇ」という感じになるのでひたすら無心で時が過ぎるのを待った。
「おえぇぇぇ」問題をどうにかしないと私は矯正を乗り越えられないと気づいた。風邪を引いた時に病院で喉の具合をチェックされる時、舌を板のようなもので「ぺと」っと抑えられるのが無理だったのは子供の頃からだ。矯正の型取りも奥の方の舌に触れられているからだ。

歯を3本抜いてから2週間に一度ぐいぐい締められ、歯を抜いて空いたスペースに徐々に犬歯を嵌め込んでいった。その間矯正でつけた装置が口の中を触って口内炎が同時に5つできるなど様々に苦労した。
もう一度やるかと聞かれたら迷わず「絶対にやりません」と答えるだろう。

そうして高校3年になったある日、ピッカピカの歯並びヨシコになった私は、歯についたすべての装具を外した。
そうして、口の中は綺麗になった。笑っても口が開いたままにならない。

この3年で私は歯を治療しもらうことは、それほど嫌いではなくなっていたのだ。そして何よりも、風邪で喉を見られる時に舌を押さえられなくて良いように舌を口の下に這わせるコツを得ることができ、それ以降は板で押さえられずとも喉の腫れをチェックする技を身につけたのだった。

弱点を克服する方法は意外と遠くにあるかもしれない。



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