おねーさんと「Lumière Drops」の天然石~後編~


アメジストを棚へ戻したおねーさんは、
次の棚に並ぶ青い石たちへと視線を移した。
そこには海の底からそっと掬い上げたようなラリマーのブレスレットが、
静かに光を抱いて並んでいる。
おねーさんはひとつを手に取り、親指でそっと表面を撫でた。
ビーズひとつひとつには白い雲のような模様が浮かび、
青の濃淡が波のように重なっている。
光を受けると、水面が揺れるような透明感が生まれ、
静かな店内に小さな海が立ち上がる。
ラリマーは“安らぎ”の象徴とも言われるが、
おねーさんはそうした意味よりも、
ただ石のもつ穏やかさそのものに惹かれているようだった。

両手にブレスレットを乗せ、おねーさんはじっと石を見つめた。
棚の灯りがビーズの間に落ち、
淡い光の粒が静かに揺れている。
石はただそこにあるだけなのに、
見つめていると心の奥がゆるやかに整っていくようだった。
色や形、光の反射は、
その日のおねーさんの気分や空気の流れと呼応するかのように、
穏やかな存在感を放っている。
店の奥から聞こえるわずかな音も、
石のきらめきも、
すべてはひとつの静かな世界のなかで繋がり合い、
それらを前にしたおねーさんは、
自分の呼吸さえも遠く感じていた。

おねーさんはブレスレットをそっと腕にはめた。
細い手首に青いビーズが連なり、
まるで空気がひとつ澄んだ色へと変わるような感覚が生まれた。
灯りにかざすと、
ビーズの内部を光が走り抜ける。
白い模様は雲のように浮かび上がり、
青の部分は深い海から淡い空へと移り変わる層を描く。
人工的な輝きとは違う、自然の奥に眠る光が
おねーさんの手の中で息づいていた。
おねーさんは腕を少し傾け、
光と影がビーズの上をすべる様子を見つめた。
その表情は穏やかで、
まるで石そのものが持つ柔らかい音を聴いているかのようだった。

おねーさんはブレスレットを棚に戻し、
店内を一巡りしてから外へ向かった。
扉を開けると、ほたる町の夜はゆっくりと深まり、
店の外には小さな灯りが連なって、
石畳を柔らかく照らしている。
おねーさんは店を振り返り、
淡い光の奥に並ぶ石たちを一瞬だけ見つめた。
その表情には満足が宿り、
手首にはまだラリマーの余韻が柔らかく残っている。
夜風が通り抜け、
まるで道の先へそっと導くようだ。
おねーさんはゆっくりと歩き始める。
ほたる町の夜は静かで、
石たちの放った小さな光が、
彼女の歩みに寄り添うように揺れていた。

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