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ぽつぽつ、あめのひ《モグラの豆知識 二》

はじめに

本ページでは、「ぽつぽつ、あめのひ《短編小説》」内で登場するアズマモグラに関する豆知識について解説します。一部、ネタバレが含まれる可能性もありますのでご注意ください。


モグラにとっての適正気温は?

 念のため、雨でおころの体が冷えないよう、綿100パーセントのタオル地のペットボトルケースにおころを入れた。

ぽつぽつ、あめのひ《短編小説》 二

モグラたちは、年間を通して温度が安定している地中に住んでいるため、暑い夏でも寒い冬でも快適に暮らせると言われています。また、地中でも季節によって生活圏が少し変わるようです。
たとえば、本格的な冬になる前には、トンネルの深い部分を一所懸命に整備し、地中のより深い場所で生活します。深い場所であれば、外の寒い空気が届かないというわけですね。

では、モグラは本当に気温の変化に弱いのでしょうか?
参考にした情報から考えると、「寒さには弱そうだ」と感じました。
各参考文献によれば、気温が17〜29度であればモグラは問題なく過ごせそうです。
さらに、17度以上のほうがモグラたちは活動しやすくなるようです。
小説では、モグラは体温調節が苦手なようだという説を採用することにしました。

参考にさせていただいた著者と文献は、下記のとおりです。

菊地文一氏の『飼育下におけるアズマモグラの行動に関する調査結果について』によると、多摩動物公園の飼育環境は気温は21〜29度で湿度は約40〜60%と記述されています。

井上雅央氏と秋山雅世氏の著書『モグラ おもしろ生態とかしこい防ぎ方』には、研究のために飼育していた冬毛になったばかりのモグゾーくんが、冬の寒さに耐えられず体調を崩してしまったエピソードが書かれています。
すぐに暖かく過ごせるよう工夫したことで、モグゾーくんは元気を取り戻したそうです。
その後は、室温が17度を下回らないよう気をつけているという記述があります。

阿部永氏と横畑泰志氏の著書『食虫類の自然史』には、以下のような記述がありました。事例が多いため、引用させていただきます。

モグラ類ではこうした報告はヒミズよりも少ないが,恩藤・福田(1961)は鳥取産のモグラ(おそらくコウベモグラ)をほぼ年間を通じて捕獲し,7 月と 9 月に最も多く捕獲されるのに対して 8 月には捕獲数が極めて少なかったことを報告している.上田(1963)は広島県においてコウベモグラの捕獲結果と気象条件との関連を分析し,雲の量が多く,気温が15~16.9℃から遠ざかるほど捕獲率が高くなり,夜間においては満月の時に最も捕獲率が低下することを示唆した.ヒミズやモグラ類は地表部分のトンネルの天井が破損した場合,土で塞いで修理をするが,柴内・恩地(1991a)は,地表の 1 日の最低気温が 17 ℃以上になるとヒミズがこの行動をよく行なうようになると述べている.

阿部永/横畑泰志(1998) .
『食虫類の自然史 第3章「モグラ科動物の生態」
3.3 空間利用と行動 活 動 量 と 環 境 条 件』
https://www2.hp-ez.com/hp/yokolabo/page9

また、東京ズーネットの『アズマモグラとの攻防』には、春と秋にモグラを捕獲する飼育員さんのエピソードが書かれています。
そこには、以下のような記述があり、こちらも引用させていただきます。
(捕獲段階でのお話で、モグラたちにとっては非常事態のお話ではありますが、参考にさせていただきました。)

 また、気候がよい時期でもトラップに入って時間が経ちすぎてしまうと、中でモグラが暴れ、結露した水分で身体が冷えてしまい、衰弱や肺炎、暴れすぎによる肺充血によって死亡してしまいます。死亡させないためには3~4時間おきに見回りをしなければなりません。

多摩動物公園南園飼育展示係 熊谷岳(2016) .
『アズマモグラとの攻防』 .
公益財団法人東京動物園協会 .
東京ズーネット .
https://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&link_num=23628

包まれると安心

続きまして、タオル地のペットボトルケースを採用した理由があります。
それは、モグラはカラダ全体が何かに触れているとおとなしくなるという性質があることです。
これを「趨触性(すうしょくせい)」と言います。

小説では、ポケットに直接入れるのも良いかと思いましたが、ポケット内の結露が気になり、タオルで包むことにしました。おころが結露でべしょべしょに濡れたらなんだかかわいそうなので……。

手塚甫氏の著書『トンネルづくりの名人 モグラ』でも、捕獲したモグラをタオルで包んでポケットに入れて持ち帰ったというエピソードが書かれています。
なお、ペットボトルケースはアズマモグラはもちろん、コウベモグラも入るサイズです。

余談ですが、手塚甫氏:著『モグラの趨触性について』(1958)が、国立国会図書館に所蔵されているようです。


あとがき

豆知識を書いていて分かったのは、研究者の皆さんの研究リレー、多くの労力や工夫、そしてひらめきのおかげで、モグラの生態が徐々に明らかになってきたということです。

モグラのように地中で生活する動物の研究は、実際には非常に難しい作業です。
モグラの生態に関する知識が増えているのも、こうした長い年月の努力の積み重ねのおかげです。
私たちが今知っていることの背後には、過去の研究者によって積み重ねられた成果があり、深く感謝いたします。


<引用・参考文献>

  • 井上雅央/秋山雅世(2010) . 『モグラ おもしろ生態とかしこい防ぎ方』 . 農山漁村文化協会 .

  • 手塚甫(1987) . 『生き生き動物の国 トンネルづくりの名人 モグラ』 . 誠文堂新光社 .

  • 川田伸一郎(2012) . 『はじめまして モグラくん』 . 少年写真新聞社 .

  • 多摩動物公園南園飼育展示係 熊谷岳(2016) . 『アズマモグラとの攻防』 . 公益財団法人東京動物園協会 . 東京ズーネット . https://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&link_num=23628 , (参照 2024-11-03).

  • 菊地文一(2005) . 『飼育下におけるアズマモグラの行動に関する調査結果について』 . J-STAGE . https://doi.org/10.11238/mammalianscience.45.73 , (参照 2024-11-03).

  • 阿部永/横畑泰志(1998) . 『食虫類の自然史』第3章「モグラ科動物の生態」 . 富山大学野生動物保全学研究室ホームページ . https://www2.hp-ez.com/hp/yokolabo/page9 , (参照 2024-11-03).


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