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老害に寛容になってみた

老害

何とも嫌な言葉ではあるが、私の敬愛するみうらじゅん氏は「濁点禁止法」というのを唱えていて、「嫌われているものには濁点がある、それを取ってしまおう」というもの。例えば「ゴキブリ」→「コキフリ」にすると少し嫌味が取れる。
あとは、デブ→テフ、ダメ出し→タメたし、のように「老害」→「ろうかい」にするといいと言っていた。

内館牧子「老害の人」を読みました。
「終わった人」も面白かったけど、こちらもまた面白かった。最初は85歳の福太郎の老害ぶりに85歳の父を重ねてしまって、「おしゃべりなジジイってほんと老害だよ!」と思ったけど、だんだん読むにつれて、世代間の違いが浮き彫りになり、老害も致し方ないと思えてきて、さらに読み進めていくと、逆に福太郎が魅力的に見えてきたんです。

私はすぐに影響されやすい人なんだけど、この本には共通する所が沢山あった。
85歳の福太郎はボードゲーム会社の二代目社長で、戦後の焼け野原から高度経済成長を駆け抜けた経営者だった。一番面白かった場面は、福太郎の娘である50代前半の娘の明代が、父親の老害っぷりにキレ散らかした所だった。そこに18歳の孫の俊が優しく聞いてあげるという構図も面白い。

もうさ、まんまウチじゃん

うちの父も建設業の二代目で、祖父が伝説の職人だったとしたら父は職人としてはイマイチだったけど、その分金儲けはうまかったとの事。独立して会社を興した時はまさに建設ラッシュの時代だったから、私もそこそこ裕福な生活をさせて貰った。

小説の話に戻るけど、私が読んでいて共感したのは、明代の夫である現社長の純市が、福太郎の一見傍若無人な老害ぶりに対して「圧倒的スター性」と言っていたことだった。悔しいけど、これはうちの父もそうだし、夫の父(私にとっては義父)にも言える。自信満々に語るその口調は、まさに老害とは思えるけど、どことなく「憧れる」ものもあるのだ。私達の世代では、決してそこまで言えないし、言い切れない。それをこの世代の人達ははっきりと言いのけてしまうのだ。

「若い世代に任せておけると思ったら自分達も去る事が出来るけど、任せておけないから居るんだろうが。言いたい事があるならはっきり言えよ。言えないヤツに限って陰で老害と言うんだよ」

世代間の分断を煽る訳ではない。
ただ、我々の親世代(70代~)の人達が、戦後の焼け野原から一気に経済大国ニッポンを作り出したのは確かな事実だ。働けど、働けど、家庭を一切顧みずに働いてくれたおかげで、今の豊かなニッポンがあるのは確かな事実。彼らはそんな過去における自信とプライドが付け加わって、昔の栄光や自慢や武勇伝を暑苦しく語ってしまうのだ。今の若者をヌルいと言ってしまうのは仕方ない。寝そべってでも金が稼げる今の時代は、昔より確実にヌルいと言えるのは間違いないから。


新宿のビル群はこの一棟から始まった
(父の部屋にあったパネルより引用)


こんな事言っちゃう自分も、一種の老害だよなと思う。
昔の事をあれこれ持ち出して、今と比較してあーだこーだと世代間の分断を煽って「今の若者はヌルい」って、完全に老害だと思う。

でもね、私達中年世代はね、一応これでも一生懸命頑張ってきたのよ。
親世代はそれこそ、昭和真っ盛りの時代を駆け抜けた猪突猛進型で、父親はバリバリの男尊女卑の家父長制で、母親は教育ママで子供を叱り付けたり超甘やかしたり、過保護過干渉のオンパレードだったりして、

どこの家庭も滅茶苦茶だったわよ

だからさ、私はわかるんだよ。
そんな親世代を見てきたから、今の中年世代は彼らが怖いんだよ。老害の皆さんは我々中年世代に対して「言いたいことがあるならはっきり言えよ!」って思うかもしれないけど、怖いから言えないんだよ。どうか情けないとか言わないで欲しい。自分達がしてきたことは、私達に「恐怖」を植え付けてきた事なんだから、今まさに我々中年世代が、長い年月を経て「無視」という形で仕返しをしていることを、どうか甘んじて受け入れて欲しい。

と、そんな事を考えながら、今回結婚式へ行く車の中で兄と姉と「父の老害っぷり」について話し合ったが、二人とも心から父の事を辟易している。父の事を老害撒き散らしてるジジイとしか思っていない。だから私は言った。

「ジイさんはさ、昔からおしゃべり野郎だったんだよ。でもさ、お母さんがアレじゃん。あんな天然ボケな人とジイさんが噛み合う訳ないじゃん。だからさ、ジイさんは家庭を顧みずに外に癒しを求めた訳よ。私達が子どもの頃はさ、お父さんなんて家に居なかったじゃん。ほぼほぼ居なかったじゃん。恐らく、スナックのママやら、小料理屋のママやら、バーのママやらに、話を聞いて貰ってたんだと思うよ。それがさ、今となっちゃ身体の自由が利かなくてさ、話を聞いてくれるママなんていないからさ、だからさ、小太りのヘルパーA子にそそのかされたんだよ。自分の夢の楽園を、老人ホームに求めちゃって、それでバアさんと離婚するとかなんとかで暴れたんだよ」


兄と姉はめちゃくちゃ納得してた


そんな感じで、老害に悩んでる人には内館牧子の「老害の人」をオススメしたい。私はこの本を読んで、少しだけ老害について寛容になれたし、父の事もかわいいヤツだと思うようになった。

だからなのか、私も少しばかり老害になろうと決めた。昔の話とか、それこそ昔の自慢話とか、昔の武勇伝とかを、このnoteで思いっきり語りたいと思う。でもね、そこはやっぱりユーモアを交えて書かなきゃいけないと思ってる。だからそんな私の事をどうか、

ろうかい

と思ってくれたら嬉しい。

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