いつか私は彼女の小説を書きたい
私の友人のAちゃんは偲ぶ恋をしている。
誰にも言えない恋。人はそれを不倫と呼ぶ。私は不倫には寛大な方ではないが、Aちゃんの話はとことん聞く。2人はちょいちょい別れたり付き合ったりを繰り返しているが、その度に私は話を聞く。Aちゃんとは知り合って10年くらいの付き合いだけど、10年間ずっと話を聞いている。
「いつか私はあなたの話を小説として書きたい」
私がそう言うとAちゃんは怒った。
「そうやって私の事バカにしてるんでしょう」
私は言った。
「バカにしてる訳じゃない。ただ面白いとは思ってる」
ここでいう「面白い」は私の中では不謹慎な面白さである。人にとっては面白くもないし不愉快かもしれないけど、私にとっては面白くて仕方ない。
「Aちゃんみたいな筋金入りの人見たことないし、ずーっと話聞いてるだけでも小説として面白い逸材だと思ってる」
先日も一緒に飲んだけど、9月に会った時は別れたと言ってたのに、やっぱりまた復活してた。この繰り返しを何度もしてるが私は何度も親身になって聞く。毎回別れるパターンも戻るパターンも同じなんだけど、飽きずにずーっと聞いてしまう。
一通り話した後にAちゃんが言った。
「小説にするなら最初に必ず見せてよね」
そう言ってきたから私は承諾した。更に、
「綺麗な話にしてよね」
と言ったから、
「それはわからない。Aちゃんの今後の行く末次第で、物語が綺麗になるか汚くなるかが決まるから。私はありのままを書く。私の感じたままを書く。それが一番面白いと思うから」
そして、
「今後も見守らせていただきマース」
と言って、その日もとことん飲んで酔っ払ったw
Aちゃんは誰かに言いたい、誰かに言いたくてたまらない、だから私は聞く。私は応援もしてないし助言もしないし苦言も言わない。ただひたすら話を聞いて、「どうしてそう思うのか?」「なんでそうなったのか」という質問をして、また更に話を引き出す。
何のためにここまで聞くかって、それは私にとって面白い話だし、いつか彼女のことを小説に書きたいから、ただそれだけ。
10年間、Aちゃんとその彼氏の付き合いは一見何も変わってなさそそうに見えるけど、やはりその形は少しずつ変わっているような気もする。そう思えるのは、どうやら聞く方の私の心の中が、この10年で変わってしまったのかもしれない。
なんとなくそう思う。
