「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」の検査を受けてきた
はじめに
「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」の検査を受けてきた。
私は2024年7月に乳がんと診断された。いとこが乳がんだったことと、私の乳がん発生年齢が若い(35才)ため、「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」の検査を受けることとなった。今回は「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」について少し詳しくなったので、記事にして残しておくこととした。
癌の発症原因
「遺伝性のがん(遺伝性腫瘍)」とは
がんは様々な要因によって発生すると言われている。例えば「遺伝要因」、「環境要因」、「時間(年齢)」、「偶然」などの要素が複雑に交差しながらがんの原因となっている。その中でも生まれ持った「遺伝子の特徴」ががんの発症のしやすさと強くかかわっているがんのことを「遺伝性のがん(遺伝性腫瘍)」と呼ぶ。遺伝子の種類により、がんが発症しやすくなる部位(臓器)やがんの発生率は異なる。
「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」とは?
私が検査を受けた「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」も「遺伝性のがん」の種類の1つで「BRCA1遺伝子」或いは「BRCA2遺伝子」に変化(病的バリアント*:明らかにがんの発症と関連のあると考えられる変化を病的バリアントと呼ぶ)を持っていることで、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、すい臓がんなどの発症リスクが高くなると言われている。
では「遺伝子」とは何なのか。これは人の身体の「設計図」のようなものだ。人は22000種類の遺伝子を持っていると言われる。遺伝子には身体を作る情報や身体の機能を維持するための情報が含まれている。人類の遺伝子情報は基本的にほぼ共通しているが、個々で遺伝子の中身に少しずつ違いがあることが特徴だ。この違いを変化(バリアント)と呼ぶ。
「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」の検査で調べる「BRCA1遺伝子」と「BRCA2遺伝子」は誰もが持っている遺伝子だ。これらの遺伝子から作られるタンパク質はDNAが傷ついた時に正常に修復するなどの働きを持っている。しかし「BRCA1遺伝子」或いは「BRCA2遺伝子」に病的バリアントがあり、タンパク質が作られなかったり、働かなかったりすると傷ついたDNAを修復することが出来ず、さらに他の遺伝子の変化が起きやすくなるためにがんになりやすくなる。
そして「BRCA1遺伝子」或いは「BRCA2遺伝子」に生まれつき病的バリアントがあることを「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」と呼ぶ。
「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」の場合の癌の発生率
「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」の場合、どのぐらいがんの発生率が高まるのか。
「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」の場合、下記のがんの発症率が高くなると言われている。
・乳がん(女性)…10.6%(日本人一般)→46-87%(BRCA1)、38-84%(BRCA2)
・乳がん(男性)…0.1%(欧米)→1.2%(BRCA1)、最大8.9%(BRCA2)
・卵巣がん…1.6%(日本人一般)→39-63%(BRCA1)、16.5-27%(BRCA2)
・前立腺がん…10.8%(日本人一般)→~29%(BRCA1)、~60%(BRCA2)
・すい臓がん…2.6%(日本人一般男性)/2.5%(日本人一般女性)→1-3%(BRCA1)、2-7%(BRCA2)
・悪性黒色腫(皮膚・目)…2.3%(欧米一般人)→データなし(BRCA1)、リスク上昇(BRCA2)
参考資料1、BRCA1- and BRCA2-Associated Hereditary Breast and Ovarian Cancer. In: GeneReviews at GeneTests: Medical Genetics Information Resource (database online). Copyright, University of Washington, Seattle(米国データ)
2、NCI (National Cancer Institute): Surveillance Epidemiology and End Results (SEE Available at https://seer.cancer.gov/(米国データ)
3、国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」
この数値を見てどう思うか。卵巣がんに関しては発症確立がものすごく高くなっているように見える。
もしも「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」であった場合、乳がんの治療(手術の方法や薬物療法)を慎重に検討し、卵巣がん予防のための処置を考える等が必要になるようだ。
検査費
「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」かどうかを知るための検査では、通常採血で「BRCA1遺伝子」と「BRCA2遺伝子」のみを調べる。基準を満たす場合は保険診療になる※が、費用はそこそこ高く20200点(3割負担で約6万円)。それなりに高いが抗がん剤治療期間などに行えば高額医療費の上限があるはずなので、そんなに大きな負担にはならないようだ。
また、もしも私に問題があった場合に家族(血縁者)が検査を受ける場合は5万円程度かかる*。(*家系内ではじめに検査を受ける人は全ての情報をはじからはじまで調べるが、この検査で「病的バリアントあり」となった場合、バリアントの位置が特定されているため、血縁者はその周辺領域のみをピンポイントで解析することができるため、血縁者が家系内でわかっている病的バリアントの有無を調べるのは5万円ほどで出来るようだ。)
ちなみに私が「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」であった場合、子どもへの遺伝の可能性は50%。安くはないが、もしも私に問題があると分かれば、家族にも受けるように勧めるつもりだ。
※以下のいずれかの項目にあてはまる場合、BRCA1、BRCA2遺伝子 の検査は、健康保険が適用される。
・がんの治療において、分子標的薬オラパリブの適応かどうか を判断する場合
・45歳以下で乳がんと診断された
・60歳以下でトリプルネガティブの乳がんと診断された
・両側の乳がんと診断された
・片方の乳房に複数の乳がん(原発性)を診断された
・男性で乳がんと診断された
・卵巣がん・卵管がん・腹膜がんと診断された
・ご自身が乳がんと診断され、血縁者*に乳がんまたは卵巣がん または膵臓がん発症者がいる
(*血縁者の範囲:父母、兄弟姉妹、異母・異父の兄弟姉妹、子ども、おい・めい、父方 あるいは母方のおじ・おば・祖父・祖母、大おじ・大おば、いとこ、孫など)
おわりに
乳がんと診断されてから、あっという間に治療が始まった。治療は身体への負担も大きいが、治るものらしいので前向きに治療に通っている。元気になったら人生を長く楽しめる、そう思える現代の医療の発展に感謝する。
