【ゲンリッヒ・ネイガウス-ピアノ大教育家の系譜を受け継ぐという奇跡】 ロシア奏法の父 Heinrich Neuhaus
私の音楽の根には、一人の偉大な教育者の存在があります。
ロシア・ピアノ楽派を築いた伝説的な教育者、ゲンリッヒ・ネイガウス(Heinrich Neuhaus)です。
ネイガウスは、
スヴィヤトスラフ・リヒテル
エミール・ギレリス
アルトゥール・ルービンシュタイン
といった20世紀を代表する巨匠たちを育てた、歴史上もっとも影響力のあるピアノ教育者の一人です。
ネイガウスの門下生は、その全てが後に大ピアニストか大教育家になる、とまで言われるほど沢山の素晴らしい演奏家・偉大な芸術家を育ててきました。
彼自身も卓越したピアニストであり、音楽を「芸術」として深く掘り下げる思想家でもありました。

スヴィヤトスラフ・リヒテルからのドイツ語の手紙
1985年、ショパン国際ピアノコンクールでスタニスラフ・ブーニンが優勝した際、彼の祖父がネイガウスであることから「血統書付きのピアニスト」と呼ばれたことは、ネイガウスの存在がどれほど大きかったかを象徴しています。

ウィーンで出会った、ネイガウスの直弟子
私がウィーンに留学した際、思いがけない出会いに恵まれました。
それが、ピアニストであり教育者である
レオニード・ブルンベルク(Leonid Brumberg)教授です。
彼はネイガウスの直弟子であり、さらにネイガウスのアシスタントとして、長い間多くの門下生を指導した人物でした。
その後、自身のクラスを持ち、ロシア・ピアノ楽派の精神を次世代に伝える役割を担った教育者です。
私がウィーンで最初に出会った師が、このネイガウス直系の教師であったことは、今思えば奇跡のような出来事でした。
ブルンベルク教授のレッスンでは、しばしばネイガウスの言葉や考え方が語られました。
それは単なる「弾き方」ではなく、
音楽そのものの捉え方を学ぶ時間でした。
音楽を言葉のように語らせる感性
構造と感情を同時に捉える思考
それらを私はこのレッスンの中で自然に吸収していきました。

レオニード・ブルンベルク(Leonid Brumberg)
アシスタントとして
ウィーン留学して師のもとで約3年ほどして、私はブルンベルク教授から、
「あなたは私の教えをほぼすべて理解し、身につけている。だから私の生徒たちを教えてほしい」
と言われ、大学在学中にアシスタントを務めるよう勧められました。
その後、彼の一部の門下生/同僚、さらには音楽大学を目指す受験生たちの指導を行いました。
それは、私が受け継いだネイガウス直系の教えを、次の世代へと伝える役割を担うことでもありました。
私にとってのネイガウス
私はネイガウス本人に師事したわけではありません。
けれど、ネイガウスの直弟子から、その思想と音楽観を直接学ぶことができました。
だから私にとってネイガウスは、教科書の中の偉人ではなく、レッスンの中で「生きている存在」として感じられる人物なのです。
それは決して血統や権威の話ではなく、音楽の精神がどのように受け継がれてきたかという物語です。
私は、その流れの中で音楽を学び、今もその延長線上でピアノと向き合っています。
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