始まり終わる、恋と夏パレット
昨日まで好きだった人からの連絡が目覚まし、
『おはよう😃☀️』
この能天気な絵文字が何となく嫌。
食事に誘われて嬉しかった筈、なのに延々と仕事の自慢で〈できる男アピール〉、努力は認める、それを適当に聞き流しながらドラマの続きが観たい、時間の無駄だから早めに帰ろう、とか、考えてしまう私にも幻滅、いつでも話聞くよ、の甘い言葉にまたも騙された。
冷静にこれまでのメッセージを読み返すと分かる!の連呼で受け止めた風を装っている。スタンプか。
恋をしたまま気付けなかったことが恥ずかしい、寝転がる午前の暑さ、起き上がれば汗が垂れた。
僅かな休みだとしても手作りの朝ご飯や軽い運動などを欠かさず、キラキラの自分、は理想であり、現実はうっかり着る予定の服も洗濯機に入れてスタートボタンを押し、青ざめる。
しばらく屈み込んだが馬鹿らしくて笑った。
よし、今日は1人で楽しく過ごそう。
久々に親友と会う設定で、最近はさっと済ませるスキンケアを丁寧に、あたかも動画撮影の如く、誰かに向かって喋りつつ(全ては夏の所為)。
次へ。
眼鏡ではなくカラーコンタクトレンズが上手く付けられない、瞬きしては目の下に落ちるのも一興だ。
薄く重ねたベースメイクでモヤモヤも消えてくれたらいいのに、描いた眉毛のバランスが微妙な、まあ前髪で少しは隠れる、去年のクリスマスコフレをまだ使っているうちに今年の情報が、時の流れを感じる、いつしか似合う色ばかり、だけど、あの人はピンクを褒めた、こちらが欲しがったくせに共通の知り合いに紹介されて好意を抱いたあちらが求めるものを与えられなかった、要はどちらも勝手で、いや、画面に現れないでよ、崩れにくいのは化粧だけ、架空の視聴者に恋愛相談を、パッケージに惹かれて買った口紅各種の出番がやっと、あれ?
ちらりと鏡に映る壁時計が午後に、もう出発15分前(仮)、急がなきゃ。
あくまでもごっこ遊びだが。
調子に乗って色々と塗り過ぎた、ヘアアイロンで心も真っ直ぐになれば、毛先のみ巻こう、クローゼットを覗くと、オープンショルダーの華やかなワンピース、リボン、フリルにときめく。
美容院へ行った帰りに、垢抜けた気がして寄り道、私らしくない、やはり箪笥の肥やし、だからこそ、ここで再び〈かわいい〉を選ぶ。
デートじゃあるまいし、頑張っちゃった?
きっと笑われる、好きにさせて。
「わー、見てください。」
浮かれて回ると裾が軽やかに広がる。世にも美しいシルエット、おまけに香水と涼しげなイヤリングをつけて、紫外線対策も忘れずに、小さめの鞄まで持った。慌ただしく準備完了。
せっかくのお洒落、魔法が解ける。
以降は着替えて洗濯物を干す、何かしら食べて、部屋の片付け、一刻も早く浴びたいシャワー(あっ、返信も)……実際はワンパターン。
「また会おうね。」
「ええ、みんなで。」
編集にてカットした別れ際のNGシーンがいきなり出てきた。彼を傷付けないように、遠回しのつもりが。ジェットコースター、情緒。
ところで、かれこれ1週間は開かない窓がある。
引っ張ったり、体重をかけても、どうにもならなくて、対処法とやらを調べ、面倒な掃除をしたにも拘らず、びくともしなかった。
普段は留守が多い為、防犯になる。
しかし〈どこへも行けない〉ようで、気味が悪い。
せめて外食するか。
新しいミュールサンダルを履いて。
思わぬリアル
Get Ready With Me.
★メイクをテーマに詩を書き始めましたが、文章になってしまうのです。
そのため、彼女に名前はありません。
