【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】集中力のカギは「脾」?ー集中力と脾気虚の関係
「なんだか集中できない」…そんなお悩みについて、
以前の記事『「なんだか集中できない」…その原因は?』の中では、
東洋医学の観点から考えられる、いくつかの原因タイプをご紹介しました。
今回はその中から 「脾気虚(ひききょ)タイプ」 について詳しくお話ししていきます。
この記事では、脾気虚の特徴や鍼灸による改善例についてもご紹介します。
ぜひ最後までお付き合いください。
1.東洋医学でいう「脾」とは?

「脾(ひ)」と聞くと、西洋医学でいう脾臓を思い浮かべる方が多いかもしれません。
東洋医学の「脾」は西洋医学のそれとはちょっと異なり、食べたものを消化して身体全体を動かすエネルギー(気)を生み出す、消化吸収の仕組み全体のことを指します。
食事から得た栄養をきちんと吸収して、「気」や「血」をつくり出す。
その要となるのが脾の働きです。
脾が元気なら、食べたものが効率よくエネルギーに変わり、体も心も軽やかに動きます。
反対に脾が弱ると、エネルギー生産が滞り、どれだけ休んでも疲れが抜けず、集中力が続かない・やる気が出ないといった状態に陥ります。
2.脾気虚とは? ― 「燃料不足で動けない」状態

脾気虚(ひききょ)とは、先にご紹介したような、脾の働きが低下した状態のことをいいます。
脾の働きが弱まると、必要なエネルギーが作られず、体も心も燃料切れのようになってしまうのです。
その結果、「疲れやすい」「集中できない」「やる気が出ない」といった不調が現れやすくなります。
◆よくみられる症状
● 疲れやすく、朝からエンジンがかからない
● 食後に眠くなりやすい
● 顔色が白っぽく、むくみやすい
● 食欲がない、または少し食べただけで胃が重い
● 便がゆるい、下痢しやすい
これらの症状は、消化吸収の力が落ちて「気」が十分に作られていないことから生じている可能性があります。
精神的な問題というよりも、体の仕組みとして起こるエネルギー不足が関係していると考えられます。
たとえるなら、ガソリンが少ないまま走り続ける車のような状態。アクセルを踏んでもスピードが出にくく、途中で止まりやすい――そんなとき、東洋医学では「脾気虚(ひききょ)」の傾向としてとらえます。
3.なぜ脾気虚になるのか?

脾の働きを弱める主な原因は、生活習慣とストレスにあります。
忙しさや不規則な食生活によって、知らず知らずのうちに脾を疲れさせてしまうのです。
① 食生活の乱れ
脾は温かく穏やかな環境を好みます。
冷たい飲み物や甘いものの摂りすぎは脾の働きを鈍らせ、体に「湿邪(しつじゃ)」が溜まりやすくなります。
これが、だるさや集中力低下を生み出す原因となりえます。
②過労や睡眠不足
休む時間が少ないと、エネルギーを作る余力がなくなります。
脾気虚の方は、働きすぎや寝不足が続くと、どんどん燃料切れの状態に近づきます。
③ストレスや考えすぎ
東洋医学では「思い悩むこと(思)」が脾を傷めるとされています。
さらに、脾が弱ると、心(しん:精神活動をつかさどる)の働きも弱くなるため、くよくよといつまでも思い悩むようになってしまいます。
「考えすぎて脾が弱り、脾が弱るとさらに考えすぎる」という悪循環もよく見られます。
④体質や加齢
もともと胃腸が弱い人や、虚弱体質、年齢とともに代謝が落ちてきた人も脾気虚になりやすい傾向があります。
つまり、脾気虚が原因の身体のさまざま不調は、意志や根性の問題ではなく、日々の積み重ねによって起こる身体の変化なのです。
4.鍼灸治療による改善の声

30歳代女性 気力が低下して仕事に集中できない、慢性的な疲れがとれない
【主訴】
「気力がわかず、やる気が出ない、いつも体がだるく、疲れが抜けない感じがして困っています。仕事は忙しくて期限もあるのもわかっているのに、考えがまとまらず集中ができないため結論が出せないんです。最近、仕事が忙しくて食事もまともにとれていないんです。」と訴える。
【随伴症状】
顔色が白い、手足が冷える、食後に眠くなる、便が軟らかく、時に下痢気味、立ちくらみやめまいがある。
不安感を感じることがあり、気持ちが落ち着かない、考えごとが頭から離れないなど、メンタル面の不調もみられる。
【弁証】
脾虚生気血不足
脾胃の運化機能の低下により気血の生成が不足し、全身の栄養と精神の安定が損なわれている状態。
【治法】
健脾益気、補気養血
脾胃の働きを整え、気血を充実させて心身の安定を図る。
【治療】
鍼灸治療のポイントとして、脾胃の働きを高めながら心を安定させるツボを身体の状態に応じて1穴選び、週1回の頻度で定期的に治療を行いました。
【経過】
2か月の継続治療で、疲労感が軽減し、表情に明るさが戻った。
不安感や焦燥感も和らぎ、「仕事に集中できるようになった」とのこと。
5.脾をいたわる生活習慣 ― NG習慣とその改善法

鍼灸治療の効果を長持ちさせるためにも、日々の生活で脾をいたわることが大切です。
NG1:冷たい飲み物・アイスコーヒーを常飲する
→ 脾を冷やし、はたらきを弱めます。
★改善のヒント
常温または温かい飲み物を選びましょう。特に麦茶や番茶は体にやさしくおすすめです。どうしても冷たいものが飲みたいときは、少し常温の水を混ぜたり、ゆっくりと飲むのがポイントです。
NG2:食事を抜いたり、菓子パンで済ませる
→ エネルギー源が不足し、午後に強い眠気が出やすくなります。
★改善のヒント
温かい味噌汁やお粥など、消化にやさしい食事を意識しましょう。脾を助ける米・かぼちゃ・さつまいもを取り入れると効果的です。
NG3:疲れたときほど甘いものに手が伸びる
→一時的に元気が出ても、脾をさらに弱めてしまいます。
★改善のヒント
ナッツやドライフルーツなど自然の甘味を適度に摂取してみましょう。温かいお茶でリラックスするのも効果的です。
NG4:睡眠不足・考えすぎ
→ 脾の回復が追いつかず、翌日の集中力が落ちます。
★改善のヒント
夕方以降はスマホを手放しましょう。
就寝前に白湯を一杯飲むと、体が温まり安眠にもつながります。
小さな習慣を変えるだけでも、体は確実に回復していきます。
「最近、体が軽い」「朝から頭がすっきりする」―そんな変化が現れはじめたら、脾が元気を取り戻してきた証拠かもしれませんね。
体が整えば、心も自然と前向きになります。
6.まとめ

「集中できない」「頭がぼんやりする」「やる気が出ない」―。
これらは、あなたの脾が疲れているサインかもしれません。
「怠けているだけ」と責める前に、まずは体を労わってみましょう。
脾を整え、エネルギーをしっかり作れるようになると、自然に集中力も気力も戻ってきます。
日々の食事や睡眠を整えながら、必要に応じて鍼灸によるケアも取り入れてみてはいかがでしょうか。
気血が巡りはじめれば、もう一度「集中できる自分」に戻ることができます。
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
それでは、鍼灸でからだも心も元気になりましょう!
鍼灸 あやかざり
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参考資料:東洋医学の教科書、WEB版 MSD マニュアル(家庭版)、東方栄養新書、食材効能大事典
