酒の宿玉城屋で感じた“美味しさ”のその先にあるもの
新潟県十日町・松之山温泉。
山あいにひっそりと佇む
一生に一度は訪れたい宿があります。

新潟県観光協会たびきちで
「酒とフレンチのペアリングが楽しめる宿」
としてご紹介したのが酒の宿玉城屋さん。
けれど実際に現地でお話を伺っていると
それだけでは語りきれない深さがありました。
今回は”あの記事の裏側”として
私が取材中に心を動かされた
“宿の哲学”について語らせてください。
宿が元気になれば、地域が元気になる

「宿が元気になれば、地域が元気になる」
は私が宿を継いだときの想いというか意気込みでして。
オーナーの山岸さんが
何気なくそう言った瞬間が忘れられません。
東京で会社員をしていた頃
食と酒を求めて旅をする自分に気づき
だったら“自分が行きたい宿をつくろう”と決意して十日町へ。
ロスと十日町を天秤にかけて後悔しない方を選んだんです。
そんな言葉に静かな情熱を感じました。

松之山温泉は10軒のうち半分が廃業という厳しい状況。
それでも地域を再び灯したいとの思いで玉城屋を再生。
今では姉妹施設の「醸す森」「Ponshu Hotel 睡夢」も含め
食と酒で地域をつなぐ拠点に育っています。
“酒ペアリング”の裏にある職人魂

今回の取材で驚いたのがペアリングへの徹底ぶり。
山岸さんは日本酒コンクール日本代表の経歴を持ち
酒蔵と直接やりとりしながら
ここでしか飲めない限定酒や
熟成タイプの日本酒を仕入れていました。

もちろん経験と知識に裏付けされた
日本酒やワインのペアリングもすごいのですが
ノンアルコールへのこだわりには驚きました。
ノンアルペアリングもほぼ全部クラフトでつくっています。
そう聞いたとき思わず
「えっ、そこまでこだわりが!」
と声が出そうになりました。
(いや、実際言っていた気がする)

実はノンアルコールペアリングの方が手間がかかるんです。
その言葉通り1杯のノンアルドリンクに
数日の仕込みが必要なものもあるんだとか。
山岸さんの経験と感性が重なり合い、
ここでしか出会えない一杯が生み出されます。
それは味と香りの響きを感じ取りながら
料理との対話のなかで形づくられるドリンク。
まるで音楽を紡ぐように素材同士のバランスを探りながら
一つの作品として完成していく・・・。
そんな山岸流ノンアルペアリング。
口に含むとその先に静かな感動が広がる。
それは飲みものというより体験そのものでした。
畑と狩猟から生まれるフレンチ

料理を担当する栗山シェフは東京出身。
けれど今は自ら畑を耕し、狩猟免許を取り
地元食材と真剣に向き合う毎日を送っています。
料理は土地そのものを表現することを
体現されているよう。
実は玉城屋で使用している食器も
ほとんどが新潟産。
燕三条のカトラリー
十日町の作家さんのコーヒーカップ
おちょこやお箸も新潟産のもの。

玉城屋の一皿の上には新潟の職人たちの物語が
そっと折り重なっているようでした。
まさに地の恵みを美しく整えるフレンチだなと思いました。
また行きたくなる宿の理由
玉城屋の窓から見える景色。


うっすら緑色が強めに感じられますよね。
気になって聞いてみたところ
照明は季節ごとに色を変えているそうです。
冬は青、夏は緑、紅葉の時期はオレンジ。
窓の外の景色と館内の光が静かに呼応させる工夫。
どこまでも気を抜かない姿勢が
こういうところからも感じられました。
お客様の履歴を見て
次回は同じお酒を出さないようにしています。
そんな話も聞いて
また行きたくなる理由が腑に落ちました。
特別な場所。
でもどこかあったかい。
この宿には人の記憶を大切にする
おもてなしの心が流れているんですね。
酒と食が人をつなぐ風景へ
今、姉妹館「醸す森」の隣にクラフト酒蔵が準備中なんだとか。
世界中から日本酒を楽しみに来てもらえる場所にしたいんです。
酒をテーマにした三つの宿が
やがて松之山という小さな谷を照らす光になる。
そんな未来が
もうすぐそこにあるように感じました。
・・・
旅館という小さな舞台から
地域を変えていく。
玉城屋の灯りは山あいに静かに
けれど確かに輝いていました。
新潟がますます好きになれる場所です。
たびきち公式記事はこちら↓
「酒の宿 玉城屋」で味わう極上の日本酒ペアリング体験
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