【書評】一穂ミチ『ツミデミック』コロナ禍で生まれた闇と希望
コロナ禍で感じたあの息苦しい閉塞感。
生活が変わったあの時代とそれに伴う罪について描かれた直木賞受賞作。
"罪"と"パンデミック"をかけたタイトルにも惹かれて、
買ったはいいものの数年前から積読していた。
一穂ミチさんの新作が6/17に発売されるのを前に
やっと読み終えた。
あらすじ
大学を中退し、夜の街で客引きのバイトをしている優斗。ある日、バイト中にはなしかけてきた大阪弁の女は、中学時代に死んだはずの同級生の名を名乗った。過去の記憶と目の前の女の話に戸惑う優斗はーー「違う羽の鳥」 調理師の職を失った恭一は家に籠もりがちで、働く妻の態度も心なしか冷たい。ある日、小一の息子・隼が遊びから帰ってくると、聖徳太子の描かれた旧一万円札を持っていた。近隣の一軒家に住む老人からもらったという。隼からそれを奪い、たばこを買うのに使ってしまった恭一は、翌日得意の澄まし汁を作って老人宅を訪れるがーー「特別縁故者」 先の見えない禍にのまれた人生は、思いもよらない場所に辿り着く。 稀代のストーリーテラーによる心揺さぶる全6話。
コロナ禍で生まれた闇と希望
コロナ禍と呼ばれたあの数年間を今どんな風に思い出すだろうか。
マスク姿の人で溢れ、これまでの仕事を失った人もいて、社会全体が目に見えないウイルスへの不安と恐怖に包まれていた。
今振り返ると、あんなに息苦しく誰もが当事者だったはずなのに、どこか遠くのフィクションのように感じられる。
今回ご紹介する一穂ミチさんの直木賞受賞作『ツミデミック』は、そんな私たちが経験した時代における罪について描かれた短編集。
非対面が推奨されたことによる宅配需要の増大、リモートワーク、経済的な困窮や失業。
私たちが経験した生活の変化がリアルに描かれていて、このような社会の変化によって生まれた、人の闇の部分の描写で苦しくなってしまった。
『ツミデミック』の短編たちはフィクションだが、
コロナ禍で私たちのすぐ隣で起きていたかもしれない現実だと実感できた。
これだけ聞くと、ただ暗くて重い話なのかなと思ってしまうかもしれない。
しかし、決してそれだけではないのが、この『ツミデミック』の、一穂ミチさんの凄み。
犯罪やモラルの崩壊、人間の闇の部分を描きながら、未来に希望を持てる物語もある。
人と人との距離を物理的に強制的に空けさせられた時代だったからこそ、孤独な人同士が結びつき、絆や救いもある。
人間のドロドロした醜さを描きつつ、
最後の最後で人間に絶望しきらない。
その絶妙なバランスと物語の優しさこそが、まさに一穂ミチさん作品だなと思った。
こんな人におすすめ
𖧷コロナ禍を文学で振り返りたい人
𖧷濃厚な短編集を読みたい人
𖧷人との心の繋がりを感じたい人
におすすめ♡
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