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江戸時代の大きな政府VS小さな政府 大石学著『規制緩和に挑んだ「名君」徳川宗春の生涯』読書感想 

目次


はじめに この本との出会い


 昨年は、川崎市民アカデミー受講をきっかけとして、歴史講座に次々と参加しました。その一環で、大河ドラマの歴史考察で有名な大石学氏による講演がありました。講演テーマは「江戸」。享保の改革についても言及されました。私は大変失礼ながら、「御用学者かどうか?」と疑りながら最初話を聞いていましたが、吉宗が「大きな政府」政策だと仰るので「おっ!?」っとなり、書著一覧の中にこの本がありまして、さっそく取り寄せて拝読しました。 
 とりあえず一読して、大変勉強になりましたので、このnoteを読んでくださった方にお伝えしたいことをメモとして記録しておこうと思います。

吉宗は「大きな政府」宗春は「小さな政府」

 本のはじめに、のところで「大きな政府、小さな政府」の表現をみつけて嬉しくなりました。
 吉宗と宗春がどのような経緯で、かたや将軍、かたや尾張の殿様となったのか、その歴史について説明があります。
 問題は、宗春についての文献が大変少ない、ということでした。その中で、唯一手がかりのなるのは宗春が藩主に就任したときに書いた
       「温地政要(おんちせいよう)」
 
という書物です。温地政要は、法律のように強制するのではなく、宗春がどういう考えから行動しているのか、を部下たちに知ってほしいという意図で書かれたそうです。

法令(規制)が多いのはよくないことである。~ 温地政要 第八条より

 本書では全22条について書かれていますが、ここではこの第八条を特に取り上げます。
 宗春は、「国に法令多きは恥辱の基」と言います。第八条では、法令(規制)は人々を委縮させ、必ず背くものが現れるので、どんどん法令が増え、複雑になり、役所の仕事も寝る間もないほどになる。と意見を述べています。
 ちょうど同じ時期に、吉宗は法制度と官僚機構整備のため、規制強化政策を推進中。宗春と吉宗の政治は、真っ向対決する状況になっていました。

 この八条だけでなく、宗春の素晴らしい思想を知ることができますので、ぜひ本書を読んでみてください!

宗春の規制緩和策

 宗春は、享保15年(1730)に尾張藩主に就任するとすぐ、
①東照宮祭礼の華やかさを元に戻す
②歌舞伎を盛んにする
③遊郭を許す

 を次々と実行しました。大工の仕事が増えて、多くの人が集まり、芸能や食文化も豊かになったそうです。
 しかし、これらは吉宗の倹約令などに真っ向対立するものでした。

 庶民は喜びましたが、緩和策が急だったために、犯罪が増えるなど、社会が不安定化した点も確かにあったそうです。そのため、規制緩和策を良く思わない家臣も少なくなかったそうです。

宗春が吉宗に潰された本当の理由

 吉宗の政策と真っ向対立する宗春は、突然蟄居を命じられ、宗春時代は8年で終わります。これは「空前絶後」の事件でした。なぜなら、宗春が御三家筆頭当主であり、八代将軍の後継争いの因縁を越えた、より深刻な社会状況を反映した事件だったから、と本書の著者は評しています。

享保の改革は歳出削減なき増税政策

 石高(ごくだか)制、身分制、鎖国制も温存、膨大な軍事力(直属家臣団)を削減もせず、勃興する商人のからの収入は否定し、農民からの年貢収入の増加を財政の基本とした改革でした。まさに、歳出削減なき増税政策ですね!!

享保の改革への批判が噴出

 目安箱への投書では、裕福な者が金銀を買い、金銀が市中に出回れば経済が活性化する。しかし、吉宗が金銀箔の使用を禁止したため、天下を収める人のところにのみ金銀が集まるのは衰退の元である。と主張しました。
 庶民の間でも、緊縮政治を揶揄する落首がみられました。
 儒学者は藩主に宛て、天災の原因は、将軍が利を求めることで民衆が苦しみ、それが怨みとなったから。祭礼を盛んにし、遊女町、見世物も元に戻せば人心も穏やかになり、天災も防げる、と説きました。
 また、江戸で成功した商人も、富士講(山岳信仰)を信じ、農民の苦しみは吉宗の強権政治のせい、だとして世直しのための富士山における断食で命を落としました。

 ことこのような批判とは対称的に、宗春的政治を賞賛する風潮が広まり、吉宗が危機感を感じて、シンボル的存在である宗春を潰しました。
 それでも吉宗政治に対する庶民の反感は収まらず、農民一揆なども起り、吉宗が引退する際には、庶民は大変喜んだ記録が残っています。
 このことが示すように、享保の改革に代表される吉宗の強権政治は、現代の時代劇で描かれるような「名君」の評価とは違うものだったようです。

おわりに

 ざっとではありますが、ここはスゴイ!と思ったところをメモ的に書き起こしてみました。改めて、吉宗の享保の改革は、現在の大きい政府であり、宗春の自由主義は減税を求める主張そのものだと思いました。そして、強権力が政敵を政治的に潰す行為は、近現代も同じです。
 減税運動は、つい5年前までは表面化してきませんでしたが、今そのムーブが高まりをみせています。もしかしたら、これを潰そうとする勢力があるのかもしれませんが、SNSやAIをはじめとするテクノロジーの進歩と、選挙制度を十分活かすことにより、減税と規制廃止の声を広げて行きましょう!

 ぜひ、令和7年8月2日のイベントにご参加ください!

減税あやさん記 令和7年5月6日

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