あの人の夢日記「教室の隅にある夢日記」 -掌編小説-
――そんなふうにして、わたしたちは、わたしたちのことを、読書し合った。あの夢の続きを、あの人の夢の中に探して。
<I.K.記述>
あれは、山間にある小さな村でした。茅葺き屋根の家々が、まばらに建っているのが見えます。わたしは、村の中に流れる小川に沿って、村外れまで歩いていきました。
木造りの古びた小屋が、ぽつんとあって。
わたしは小屋の引き戸を開けて、床板が張られていない剥き出しの地面に、腰を下ろしました。両腕で、膝を抱えて。
ぼんやりとしながら少し経った頃、急に時計が鳴り出しました。柱に据えられた、振り子の付いた小さな掛け時計。
その音に驚いて時計を見ると、なぜか、秒針が付いていなくて。なんだか、それがとても気になりました。
柱から時計を外して調べてみようとしたけれど、異常なくらいに固く取り付けられていて、少しも動かせません。
「これは、木の柱の中に鉄パイプが入っていて、パイプと時計が一体型になっているから、頑丈で外れないんだ」
そう思ったところで、目が覚めました。
<S.T.記述>
わたしは、寮生活をしていました。寮の玄関先には自販機があって、品揃えを見てみると、縦長の小さなパックが陳列されています。
それは、牛乳に入れて混ぜる調味パウダーで、コーヒー味とイチゴ味の二種類でした。パウダーだけが並んでいます。
わたしの部屋の冷蔵庫には、牛乳が250mlしか残っていなくて、買おうかどうしようか、悩みます。その様子を、通りの向こうから窺っている少年がいます。
わたしがコーヒー味を買って寮に戻ろうとすると、少年に呼び止められました。少年が言いました。
「少しでいいので、コーヒー牛乳をください」
牛乳が残り少ないことを告げると、
「少しでいいんです」
じゃあ、待ってて。少年にそう言って、部屋に戻ろうとしたところで、目が覚めました。
<M.Y.記述>
わたしと母が家に帰ると、近くにある火山が噴火して。辺り一面が真っ白くなりました。霧や煙みたいに、灰が立ち込めて。
母が、何も見えない中で落としてしまった家の鍵を見つけて、「あった、あった」と猫に言っています。
だけれど、わたしには猫が何処にいるのか、わからなくて。猫のことが心配で。
ふっと、猫の鳴き声が聴こえて、足元に気配を感じました。辺りは真っ白なままなので、何も見えないけれど、猫がちょこんと、行儀よく座っているのがわかります。
いるんだね。あなたが無事だったら、わたしはもう、それでいいよ。もう、それでいい。無事でいてくれたら、もう、それで。
そう思ったところで、目が覚めました。
――今夜もまた、わたしたちは夢に夢中。あの夢の続きを。
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こんにちわ。こんばんは。木乃と申します。
お忙しいところを読んでいただいて、ありがとうございます。
「わたし」の性別や年齢などなど、あえて定めていなかったりします。いろいろと定めないことに、文芸の豊かさを感じております。
あなたさまの中に思い浮かんだものが、すべてです。
夢の内容は、著者自身が見た夢を基にしています。
日を置いて、ログインしております。連日でログインするときもありますけれど、常駐はせずなのでござんす。
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