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花と妖精の🧚🏻朝の一言

花びらの椅子に腰かけて

もし今日、少しだけ心が疲れているのなら
どうぞ、この花園へいらしてください

急がなくても大丈夫です
うまく笑えなくても、何かを決められなくてもいいのです

ここでは、風があなたの代わりにため息をつき
花があなたの代わりに、静かに顔を上げてくれます

大きな桃色の花びらの上に、二人の妖精がいます

ひとりは、朝焼けのような淡い桃色の髪をして
小さな器を両手で包んでいます

もうひとりは、若葉のような緑色の髪を揺らしながら
花びらの上に残った、透明なしずくを見つめています

それは、ただの朝露ではありません

昨日、誰かがこらえた涙かもしれません
言えなかった「ごめんね」かもしれません
胸の奥にしまわれた「本当は寂しかった」という気持ちかもしれません

妖精たちは、人間が置き忘れていった思いを
朝の光が消してしまう前に、ひとつずつ集めているのです

「このしずくは、少し重たいね」

緑の髪の妖精が、そっと指先で触れました

すると桃色の髪の妖精が、やさしく笑います

「きっと、誰かを大切に思っているからだよ」

悲しみは、ときどき愛に似ています

忘れたいのに忘れられない気持ち
もう平気だと思っていたのに、ふいに胸が痛む記憶
誰にも見せないように隠した涙

それらはすべて、あなたが弱いから生まれたものではありません

大切にしたかったから
信じたかったから
本当は、もっと一緒に笑いたかったから

心は傷つくのです

妖精たちは、そのことをよく知っています

だから決して
「いつまで泣いているの」などとは言いません

「前を向かなければだめ」
「もっと強くならなくちゃ」
そんな言葉も使いません

ただ、花びらの上に座り
あなたの涙が丸くなるのを待っています

涙は、流れたばかりのときには形がありません
けれど時間がたつと、朝露のような一粒になります

その一粒を、妖精たちは小さな器に移します

そして花の根元へ、そっと返すのです

すると不思議なことに
昨日まで閉じていたつぼみが、少しずつほどけていきます

悲しみが花になるなんて
すぐには信じられないかもしれません

けれど、あなたもきっと経験してきたはずです

つらい夜を越えたからこそ
人の寂しさに気づけたこと

自分が迷ったからこそ
立ち止まっている誰かを、急かさずに待てたこと

何もできない自分を知ったからこそ
小さな親切が、どれほど尊いかを知ったこと

心に落ちた涙は
消えるのではなく、形を変えているのです

あるものは、思いやりになり
あるものは、静かな強さになり
あるものは、誰かの話を最後まで聞く力になります

あなたがこれまで流してきた涙も
決して無駄ではありません

今はまだ、何の花になるのか分からなくても
土の下では、もう小さな根が伸び始めています

見えないからといって
何も起きていないわけではないのです

春になる前の種は
暗い土の中で、ひとりきりに見えます

けれど本当は
雨に守られ
土に抱かれ
遠い太陽に呼ばれながら
少しずつ、芽吹く準備をしています

あなたの心も同じです

何も進んでいないように思える日も
ほんとうは、次の季節を迎える準備をしています

眠りたい日は眠ってください
誰にも会いたくない日は、静かな場所を選んでください
言葉にできない気持ちは、無理に説明しなくてもいいのです

花は、自分が咲く理由を語りません

ただ、光が来たとき
自分の中にある色を、そっと開いて見せます

あなたも、今すぐ答えを出さなくていいのです

誰かと同じ速さで咲かなくてもいい
昨日より元気になれなくてもいい
遠回りをしても、道を間違えてもいい

花園には、同じ形の花はひとつもありません

大輪の花には、大輪の美しさがあり
足元に咲く小さな花には、小さな花だけの輝きがあります

誰かの目に留まることだけが
咲くことの意味ではありません

たとえ誰にも気づかれなくても
あなたが今日を生きたこと
小さく息をしたこと
心の中で何かを守ろうとしたこと

それだけで、あなたは一輪の花なのです

妖精たちは、ときどき人間には聞こえない声で
花に話しかけます

「今日も咲いてくれて、ありがとう」

その言葉は、本当はあなたにも向けられています

今日まで来てくれて、ありがとう

うまくできなかった日も
自分を嫌いになった夜も
何度も立ち止まりながら
それでもここまで歩いてきたあなたへ

ありがとう

桃色の髪の妖精が、小さな器をあなたに差し出します

中には、淡い光を宿した一滴の露が入っています

「これは、今日のあなたのためのしずくだよ」

それを飲めば、悩みがすべて消えるわけではありません
過去が書き換わるわけでもありません
明日から急に、何も怖くなくなるわけでもありません

けれど、ほんの少しだけ
自分にやさしくなれるかもしれません

「今日の私は、これでいい」

そう思える力が、胸の奥に灯るかもしれません

人は、自分に厳しくしすぎると
心の花びらを閉じてしまいます

けれど自分を許した瞬間
固く閉じていたつぼみの隙間から
小さな光が差し込みます

その光こそ、明日へ向かう道です

どうか今夜は
できなかったことよりも
できたことをひとつ思い出してください

朝、目を開けたこと
誰かに挨拶をしたこと
食事をしたこと
泣きたいのに耐えたこと
耐えきれず泣いたこと

どれも、生きるために必要なことです

小さなことほど
妖精たちは見逃しません

あなたが気づかない場所で
今日も一枚、花びらを開いてくれています

「よく頑張ったね」

「ここまで来たね」

「もう少し、ここで休んでいこう」

風が、そんなふうに囁いています

大きな花の椅子は、まだ空いています

どうぞ腰かけてください

何も話さなくてもいいのです
妖精たちは、黙ったまま隣にいてくれます

空を見上げれば、雲がゆっくり流れています
花の香りが、やわらかく胸へ届きます
小さな羽が、光を受けてきらめいています

そしてあなたの足元では
まだ名前のない花が、そっと芽を出しています

それはきっと
あなたがこれから咲かせる花です

急がなくていいのです

あなたの季節は
あなたの歩幅で、ちゃんとやってきます

その日まで
涙は花園に預けておきましょう

妖精たちが、朝露に変えて
大切に守ってくれます

そしていつか
あなたが誰かの悲しみに寄り添ったとき
あの日の涙は、やさしい花となって
あなたの言葉の中に咲くでしょう

だから今日は
ほんの少しだけ顔を上げてみませんか

咲こうとしなくても大丈夫です

ただ、光のほうを向くだけでいいのです

花も、妖精も、風も
そしてこの世界のどこかにいる誰かも

あなたがゆっくり花開く日を
静かに待っています。


また、明日


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