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【(改訂版)第4話前日譚④(完結)】スマホとPS5のみを携えYouTuberとして立ち向かう物語

この時間帯で定刻以前に着いてたまるかっつーの

平日の帰宅ラッシュによる渋滞を加味して考えれば、少なくともエアコン修理業者が既に到着して我が家の前で連絡もなしに仏頂面で帰宅を待ちわびているというのは考え難い。

国内屈指の狭さを誇る我が地元は主要道路すらビビるほどに片側一車線がデフォルト、たすけてチーバくん!でも今日はありがとう!

ほれ見たことかボケが

来訪者の気配が微塵もない事を確認、帰宅完了、これにてめでたし。

あとはとっととエアコンを修理してもらってお引き取り願おう、来るなり「帰れ!」と追い返してもいい、いやダメだバカ!急いてはならん!心を凪に保つのだ!

エアコン修理業者は悪くない、電話越しに感じたあのどこかナメた口調以外は。

フロム・ソフトウェアという魔境

風通しが確保された自室は存外そこまで暑くなく、部屋の中央には先日中古で購入したPS5ソフトの「エルデンリング」が転がっていた。

以前、某大手掲示板のスレッドで「アメリカの5歳児が超難関ゲームを単独クリア!貴様らヘタッピは座して泣き喚け!」的な内容とニュースソースを確認し「ほならワイも」と、その今もなお死にゲーとして名高い「ブラッドボーン」をダウンロード購入。

以降、ヤーナムの深淵に触れてからというものの、その超絶難易度と達成時のなんとも言えないカタルシスに魅了された俺は結構なフロムゲー大好きっ子に成り果てていた。

イモ引いてんじゃねぇぞこの野郎

「こいよオラ…オラァッ!」

ゲーム画面の中にいる怪物に向かって、うら若きお姉ちゃんが威勢よく喚き散らしている。

この面白い方のお名前は伏せさせていただくとして、YouTubeでフロムゲーを検索しまくっていた時期にオススメで出てきたゲーム実況チャンネルを運営している配信者だ。

全員のコメントを甲斐甲斐しく拾うスナックのチーママのようなキャッチーさも相まって現在も継続して拝聴させて頂いている。

飲む打つ買うの三拍子

元バンドマン、元脚本家志望、元パソコンの大先生(自虐史観として)、大雑把に自己紹介すると大別してこんな感じで相違ない。

この実生活においてミリも役に立たない堆積したゴミ山を俺は直感的に配信者として活かせないものかしら、どうなのかしら、無理かしら。

そんな感じで愉快な実況配信を観る度に「俺もやってみてーな」的な感情が漫然に募りながらも、ある種の因縁というか「かつて何者にもなれなかった自分」から、半ば腐りかけの捨てきれないスペックを再利用する理由を半ば強引にこじつけられている感はあった。

デジタルタトゥーはご勘弁願いたく

卒アルの類を全て燃やして回るか大富豪になって過去含め何もかも全て買い取りたいくらい俺には自分の道程を忌み嫌う癖(へき)がある。

昨日の自分にすら翌日には自戒を求めるレベルの潔癖くんだがきっと成長が止まっていないのだ。

自分の肉声が残るアーカイブが誰ぞのフォルダに保存され人質に取られるとかマジで無理、本当に無理、どうかしてる、お巡りさんこいつです。

苦難に次ぐ苦難を乗り越えた万能感

障壁によじ登り見下ろす格好となった今、残すはエアコン業者の元寇を待つのみとなった。

手持ち無沙汰の申し子と化した俺は、視界に入ったエルデンリングを脇目に艱難辛苦の今日をどうにか乗り越えた自賛の念か何なのか、今となっては定かではないが、いつだって物語はなんとなく始まる。

ただただ、スマホを手に取ってひとしきり逡巡した後、おもむろにYouTubeチャンネルの開設ボタンを押していた。

開設おめでとうございます!まずはショート動画の作成をうんちゃらかんちゃら

「だるいんだが」

そんな感じの面倒なチュートリアルに辟易とした俺はタスクをそっと閉じ、煙草を吸いながらアホの子のようにエアコン業者を待つ。

ほどなく待ち人が「ちっす」みたいなノリで来訪後も、粛々と設定された機械のようにピピピ…ウィーンガシャーンと相手をし、原因だった温度センサーの交換をさせ、それなりに塩対応を施して早々にお帰り頂く。

ようやくこれにて完遂、成すべきは成され大変だった一日も幕引きとなる。

復活を遂げたエアコンが吐き出すそれとは別に風はただ吹いていた。


引くほどYouTubeに触れなかった前夜譚もこれにて完結の運びと相成りました。

次編から紆余曲折の果て、懲りずにまたもトチ狂った行動を取りながら「何かを発信する何者か」になろうとするおバカさんの物語は続きます。

ご一読ありがとうございました

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