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あなたが、あなたであること。

先日、『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』を観ました。
その中で、一つの言葉が心に残りました。

「あなたがあなたであること。それには大いなる責任がある。」

映画館を出てからも、その言葉が頭から離れませんでした。

スパイダーマンといえば、有名な言葉があります。

「大いなる力には、大いなる責任が伴う。」

昔は、特別な力をどう使うかが物語の大きなテーマでした。
でも今回の作品では、少し違いました。

大切なことは、
特別な力があるかどうかではない。

「あなたがあなたであること」
「自分が自分らしく生きること」

私は、この変化がとても現代らしいと感じました。

今の社会では、
「何ができるか」で
人の価値が測られる場面が少なくありません。

どんな仕事をしているか。
どれだけ稼いでいるか。
友達がどれだけいるか。
結婚はしているのか。

SNSを開けば、
誰かの成功や楽しそうな写真が目に入り、
今の自分と比べてしまう。

気付けば私たちは、

「何をしている自分か」

ばかりを見て、

「自分が自分であること」

を忘れてしまっているのかもしれません。


仕事で関わる人も、
「もう私は何もできへんから」

そんな風に話すことがあります。

病気になって仕事を辞めた人。
家事が思うようにできなくなった人。
家族を支える役割を手放した人。

できていたことを失うと、
人は、自分まで失ってしまったような気持ちになることがあります。

「もう自分なんて。」

そんなふうに、
自分の価値まで失われたように感じてしまう。

でも、その人と時間を過ごしていると、不思議なことがあります。

昔の思い出を話してくれる。
庭の花を見て、ニコッと笑ってくれる。
孫の話を、嬉しそうに話してくれる。

そんな何気ない時間の中で、
ご家族が笑顔になったり、
その場の空気がやわらいだり、

私自身が元気をもらったりすることがあります。

その人は、
何か特別なことをしているわけではありません。
何かができるから価値があるわけではありません。

その人が、その人としてそこにいる。

ただそれだけで、
誰かに安心を与え、
誰かの心を動かしている。

そんな場面を、私は何度も見てきました。


映画の中で、
主人公は人間としてではなく、

ヒーローとして
その役割に徹することで、
自分の価値を確認していました。

でも、ヒーローのような力があるから
その人に価値が生まれるわけじゃない。


私たちは、
「何ができるか」
で自分を評価しがちです。

でも本当に人の価値は、
それだけなのでしょうか。

仕事ができなくなったら。
歩けなくなったら。
家事ができなくなったら。

その人の価値までなくなってしまうのでしょうか。

私は、そうは思いません。

人には、
その人だからこそ生み出せるものがあります。

安心する笑顔。
その人らしい話し方。
何気ない一言。
そこにいるだけで生まれる空気。

それは、誰かが代わりに演じることはできません。

人は、

何かをする存在である前に、
その人として生きる存在なのだと思います。

だから、

「あなたがあなたであること」

映画のあの言葉は、

「もっと頑張れ」という意味ではなく、
あなたという存在を、大切に生きてほしい。

そんなメッセージだったのだと思います。


作業療法では、「できること」を増やす支援をします。

もちろん、それはとても大切なことです。

でも最近は、それと同じくらい、

その人が、その人らしくいられる時間を守ること。

それも大切な支援なのではないかと思っています。

人は、
何かができるから価値があるのではありません。
誰かの役に立つから価値があるのでもありません。

その人だからこそ、
誰かを笑顔にできる。

その人だからこそ、
生まれる時間がある。

だから私は、
その人を変えようとする前に、
その人がその人らしくいられる場所を、
一緒につくっていきたい。

そして、
「あなたがあなたでいてくれてよかった」

そう思える人とのつながりを、
大切にしていきたいと思っています。

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