仕事にフルベットしない。でも、やりがいはあきらめたくない|病気後の働き方を『メタスキル』で考える
こんにちは!
僕はこれまでのnoteで、病気後は、病気前と同じ働き方へ戻ろうとしなくていいという話を何度も書いてきました。むしろ、以前とまったく同じ働き方へ戻ることを目標にしてはいけない。僕自身は、そう考えています。
病気になる前と同じ仕事量や労働時間で働こうとすれば、再び無理を重ねることになります。その結果、体調を大きく崩したり、病気の再発につながったりする可能性もあります。
だからこそ病気後は、働き方や生き方を、自分が無理なく続けられる形に再設計する必要があります。
ただ、「働き方を再設計する」と言われても、具体的に何を変えればいいのかは、簡単ではありません。
仕事の内容も、職場の環境も、抱えている病気や制約も人によって違います。誰にでも当てはまる一般解は、もちろんありません。
仕事に人生をフルベットするつもりはない。健康を犠牲にしてまで働きたくもない。でも、仕事のやりがいや、誰かに貢献する喜びまではあきらめたくない。
これは、僕自身も復職してからずっと、心の中で葛藤しながら向き合い続けている問題の一つです。
そんなときに読んだのが、深津貴之さん、けんすうさん、尾原和啓さんによる『メタスキル:努力の価値が変わる時代の「AI×自分」戦略』です。#pr
一見するとAIの本ですが、単に便利なAIツールやプロンプトの使い方を紹介する本ではありません。
AIによって努力やスキルの価値が変わっていく時代に、自分はどこで働き、どのような役割を担い、どこに努力を向ければいいのか。これからの働き方そのものを考えるための本でもあります。
僕はこの本を読んで、病気後の働き方を考えるためのヒントをたくさんもらいました。先に結論を言うと、本書で紹介されている3人の戦略を、僕は次のように捉えています。
深津流:死なない構造をつくる
けんすう流:ゲームをずらす
尾原流:資産を増幅する
まず、自分が再び壊れない構造をつくる。次に、病気前と同じ体力や仕事量で競うゲームから降り、自分だからできる貢献の形を探す。そして、その小さな貢献を一回限りで終わらせず、知識や仕組み、関係、信頼として積み上げていく。
守る。ずらす。増幅する。
この3つを組み合わせれば、健康を守りながら、仕事のやりがいもあきらめない働き方を作れるのではないか。
この記事では、『メタスキル』を手がかりに、病気後の働き方を考えていきます。

病気後の働き方は、「無理をしない」だけでは完成しない
復職直後に何よりも優先すべきなのは、体調を安定させることです。
仕事で成果を出すことよりも、まずは再び大きく体調を崩さず、働き続けられる状態を作ること。
その順番を飛ばしてはいけません。
ただ、実際に復職してみると、自分がどのくらい働けるのかは、なかなか分かりません。なぜなら僕たちは、病気後の心と身体で働いた経験がないからです。
どのくらいの仕事量なら続けられるのか。何時間働くと翌日に影響が出るのか。どのような仕事が、思った以上に自分を消耗させるのか。どのタイミングで休んだり、周囲へ相談したりすればいいのか。
最初から正確に判断することはできません。
僕自身も、復職後に何度も無理をして体調を崩し、そのたびに働き方を修正してきました。
残業時間を増やさない。仕事量を抱えすぎない。睡眠を最優先にする。疲労を感じたら早めに休む。一人で抱えず、周囲へ相談する。
こうしたことは、体調を守りながら働くための大切な土台です。ただ、働き続けていると、その先の悩みも出てきます。
病気前と同じように働けない自分が、職場でどう貢献していけばいいのか。長く仕事から離れたことで生まれた経験の差を、どう受け止めればいいのか。健康を守りながら、仕事のやりがいや、自分なりの役割をどう作ればいいのか。
「無理をしない」だけでは、病気後の働き方は完成しません。その先にある、無理をせずに、どう働き、どう貢献し、自分の居場所を作っていくのか。
僕が『メタスキル』から得たのは、この問いを考えるための視点でした。

目の前の仕事ではなく、働き方の構造を見る
病気後の働き方を考えるとき、僕たちは目の前の仕事に意識を向けがちです。どうすれば期限に間に合うか。どうすれば周囲と同じ量を処理できるか。どうすれば不足している経験を早く埋められるか。
しかし、目の前の仕事をどのように頑張るかだけを考えていると、結局は病気前と同じゲームへ戻ってしまいます。
足りない時間を残業で補う。足りない経験を休日の勉強で補う。周囲との差を、自分の努力で埋めようとする。
一時的には仕事が進んでも、これを続ければ再び消耗していってしまいます。そこで必要になるのが、目の前の仕事から一段カメラを引き、働き方そのものの構造を見ることです。
『メタスキル』では、AIのモデルやプロンプト、細かなテクニックのように変化の速いものを「高周波」、目的や構造、勝利条件のように変化の緩やかなものを「低周波」にたとえています。
今、多くの人が追いかけている最新のAIモデルや新機能は、これからもどんどん変化していきます。これは高周波です。
一方で、「この仕事の本当の目的は何か」「なぜ、今の評価軸になっているのか」「同じ目的を、別の方法で達成できないか」「自分がすべてを実行する必要はあるのか」という問いは、使う道具が変わっても残ります。これが低周波です。
病気後の働き方を考えるときに必要なのは、この一段上の視点です。
病気前と同じように働けない自分を責めるのではなく、そもそも今の働き方が、自分の体調や制約に合っているのかを考える。
自分が周囲と同じ量を処理できないことだけを見るのではなく、仕事の本当の目的に対して、別の形で貢献できないかを考える。
一回の仕事を何とか終わらせるだけではなく、次に同じ仕事が来たとき、自分や周囲の負担を減らす方法を考える。
病気後の働き方を再設計するとは、単に仕事量を減らすことではありません。自分が壊れずに働き続けながら、別の形で価値を生み出せる構造を作ることです。

AIが強い土俵で、人間が頑張り続ける必要はない
ここで、今のAIの進化が重要になってきます。
これまで仕事で「優秀」とされてきた能力の中には、AIが得意なものがかなり含まれています。例えば、
大量の情報を処理する
短時間でたくさんのアウトプットを出す
一般的な知識を大量に持っている
正解に素早くたどり着く
決められたルールの中で正確に処理する
セオリーに沿って実装する
長時間、作業を処理し続ける
といった能力です。これまでは、人より速く、人より多く、人より正確に仕事ができることが、大きな強みになっていました。
専門知識についても同じです。長い時間をかけて勉強し、経験を積み、「この分野なら何でも知っている」という状態になること自体に大きな価値がありました。
もちろん、これらの能力が不要になるわけではありません。高度な専門性や、現場で積み重ねた経験には、これからも大きな価値があります。
ただ、「大量に処理できる」「一般的な正解を知っている」「決められた仕事を速く正確に実行できる」という能力だけでは、これからは以前ほど大きな差にならなくなっていきます。
なぜなら、そこはAIがものすごく得意だからです。逆に、人間側に残りやすいのは、
何を目的にするのか決める
本当に解くべき問題を見つける
物事の構造を見る
どのゲームで戦うのか選ぶ
AIに何を任せ、人間が何を担うか設計する
自分の経験や違和感から問いを立てる
最後に判断し、責任を持つ
人との関係や信頼を作る
一度の成果を、次につながる仕組みに変える
といった部分です。
僕はここに、病気後の働き方を考える大きなヒントがあると感じました。病気になると、以前のように長時間働くことが難しくなります。大量の仕事を体力で処理することも難しくなります。休職期間が長ければ、周囲と比べて知識や経験が足りないと感じることもあります。
僕自身、そうしたことに何度も悩んできました。でも、少し視点を変えると、あることに気づきます。
僕が病気によって苦手になった戦い方の一部は、これからAIが最も得意とする戦い方でもある。だとしたら、その土俵に無理をして戻る必要はないのではないか。
僕はもう、人より長く働き、人より大量に処理することで勝負しないことにしました。人間が長時間働き、大量の仕事を処理するゲームで、AIと処理量を競っても仕方がありません。
それよりもAIに処理を任せながら、
「そもそも何をするべきなのか」
「この仕事の目的は何なのか」
「どこを仕組みに変えれば、みんなが楽になるのか」
「自分だから気づける問題は何なのか」
を考える側へ早い段階のうちに回る。
AIが強いゲームから、人間だからこそ価値を出せるゲームへ、先に土俵を映っておく。僕は、これも病気後の働き方を作り直す一つの方法ではないかと考えています。

AIによって仕事が変わる時期だからこそ、新しい役割が生まれる
僕は今、AIによって人間の仕事や役割が大きく変わる途中にいると感じています。
すでにAIを前提として仕事の仕組みを変えている組織もあれば、まだ一部の人が個人的に試している段階の組織もあります。会社や部署によって、AIの活用状況には大きな差があります。
この変化を、不安に感じる人も多いはずです。これまで身につけてきた知識やスキルが、AIに代替されるのではないか。自分の仕事がなくなるのではないか。新しい技術についていけないのではないか。
ただ、AIにより仕事の前提が大きく変わる時期は、これまで存在しなかった新しい役割が生まれる時期でもあります。
AIを使って、複雑な情報を整理する人。熟練者の知識や判断理由を、他の人が使える形に変える人。現場の曖昧な困りごとを、AIが扱える課題へ翻訳する人。人とAIの間に入り、目的や要件、判断基準を設計する人。AIが出した答えをそのまま採用せず、現場の事情を踏まえて評価する人。
こうした役割は、単にAIの操作がうまい人だけが担うものではありません。
現場の仕事を知っていること。どこで人が困るのかを知っていること。何をAIへ任せ、何を人間が判断するべきかを考えられること。周囲と相談しながら、仕組みを実際の仕事へ接続できること。
そうした経験や視点が必要になります。
長く休職していたり、病気前と同じ量を働けなかったりすると、経験年数や処理量で競う従来のゲームでは、不利に感じる場面があります。
しかし、仕事のルール自体が変わる時期だからこそ、以前とは違う役割を作れる可能性が高いです。そこを、働き方を再設計しなければならない僕らの土俵にしてしまえばいいのでは?と思っています。
これまでと同じ仕事量や経験年数だけで競うのではなく、AIと一緒に新しい仕事の進め方を作る側へ回る。その選択肢が生まれていることは、病気後の働き方を考える僕にとって、大きな希望であると思っています。

深津流|まず「死なない構造」をつくる
ここからは、『メタスキル』で紹介されている3人の戦略を、病気後の働き方という視点から考えていきます。
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