法務ウェビナー企画レポ:キャリアの正解探しをやめる
本稿は、法務互助会で開催したキャリア系ウェビナーの企画レポです。
※Q&Aはオフレコの約束があるため、質問内容や回答のディテールには踏み込みません(方向性・気づきに限定しています)。
※講義パートについても、スライドの再現や網羅的なまとめは記載していません。私の気づきにフォーカスした記事です。
0.はじめに:悩める法務スタッフ
2025年のLegalアドベントカレンダーを眺めていても分かりますが、少なくとも私の観測範囲では、仕事の前提が変わったと感じる一年でした。
昨年の年末から劇的に生成AIの能力が改善され、記事投稿時点での最新版「ChatGPT」は極めて安定したレビューができるようになりました。
間接部門の業務設計が見直される流れの中で法務も例外ではなく、代替可能性が比較的高いとされる法務審査はターゲットにもされやすく、悩む人も多かったと思います。
そんな中で、果たしてどういったキャリアを描くべきか。
若手法務の自分は、生成AIという強敵と勝負しなければならない。
中堅法務の自分は、マネジメント経験を積めないと若手同様にスペシャリストで生き残るのは厳しいのではないか…。
だからこそ、キャリアを“正解探し”にしてしまうと苦しくなる。未来が読めない時代に必要なのは、正解を当てる力よりも、偶然を拾える場所に立って、未来を広げることだ─今回のウェビナーはそのような話でした。
1.「キャリアを考えること」は辛いことでもいい
企画メンバーでウェビナーの事前打ち合わせした際に、「そもそもキャリアの話って結構重いことで、話題として振ったら泣いてしまった人がいた。」というエピソードが出てきました。
人事部門の経験もある私にとって、「キャリア設計」は前向きな話だと捉えていたため、これは結構衝撃的な話でした。
未来を考えるのが怖い / 未来は分からないのに、深く考えることへの腹落ち感がない
期待して裏切られた経験がある
“正解が欲しい”気持ちが強くて、決めきれない
誰かに相談しても「なんとかなる」で終わってしまうことがある
こんな風に感じることがある、というのは不思議なことでは決してありませんが、改めて聞くと新鮮でした。
ウェビナーでは「こう感じてもいい」「ネガティブ感情を否定しない」という内容とともに、現実的な楽観主義がいいよ、と示されました。
2.プランドハプンスタンス:棚からぼた餅を“拾える場所”にいる
ウェビナーでは様々なワードが出てきましたが、この「プランドハプンスタンス(計画された偶然)」は一番印象的だったのではないでしょうか。
「偶然が大事」=「成り行きでOK」
ではなく、一方で、「計画が大事」=「計画通りにしか進めない」
でもない。
人生において、偶然、チャンスやきっかけ(ぼた餅)が落ちてくることがありますが、それはあくまで落ちたことに気づけないと拾えないわけで、棚からぼた餅を待つのではなく、ぼた餅が落ちてくる棚の下に立つようにすべき。
ここでいう「棚の下に立つ」は、単に“居合わせる”という意味ではなく、本人の積極的な行動や好奇心が存在し、それをチャンスとして活かす姿勢があってこそキャリア形成につながる、という話でした。
気になった内容に触れてみる・・・勉強会に出る/記事を読む
小さな役割でも担当してみる・・・社内PJ/社内外コミュニティ
来た話を「関係ない」で閉じずに、一旦やってみる(“ぼた餅”にして自分の経験に変える)
アメリカで成功を収めた数百人を対象にして調査をしたところ、8割が「自分のキャリアは偶然決まった」と答えたという話がありました。
先ほどの「現実的な楽観主義」と組み合わせて考えれば、棚の下に行くこと(=自分から動いて、偶然に気づける場所に身を置くこと)をまず考えて、後は気楽に運に任せるというのがいいのかもしれません。
3.社会資本:スキルと同じくらい効く「つながり」
棚の下にはどのようにいけばいいのか、一つの方法は「社会資本(つながり)」です。
法務は、どうしても「知識」「経験」「資格」のような、自分の中に貯まるものに意識が寄ります。
それも非常に大切ですが、
仕事が回り始める瞬間
良い案件が来るタイミング
「これ任せたい」が発生する瞬間
自分の強みが言語化されるきっかけ
こういうのは、大体「人」を経由して起きます。
社内に目を向けてみれば、「小さなこと(法務でなくても、おいしいランチが食べられる場所でもいい!)」を起点に、困りごとや助かるネタを提供することで、人と人のつながりを作っていくことが大切だという話がありました。
社外に目を向けてみれば、法務互助会や「わかほう」みたいな場は、まさに“社会資本の形成の場”でもあると思います。
自分の活躍のチャンスは、こういった人の関係から生まれるわけです。
4.法務に囚われない:キャリアの“重なり”を探す
もう一つ、面白い話だったのが、
「キャリア=法務部門の中だけ」で考えなくていい、という視点でした。
ここでいう“囚われない”は、「法務を捨てる」ではなくて、
「法務の経験が刺さる隣接領域を探す」イメージです。
いきなり“別職種”に飛ぶのではなく、重なりを探す
自分の強み(論点・役割・動き方)を、どこに接続できるか見る
いまの仕事の延長線上で、選択肢を増やす
私自身、今は内部統制の仕事をしていますし、少し内部監査にかかわることもあります。
情報セキュリティ関係や知的財産、輸出管理なども隣接領域だと感じますが、これは目から鱗だった人もいるんじゃないかなと思います。
ただし、自分で意識しないとその発想はなかなか出てこないと思います。
社内でそういう部署の経験をしてみるのも一つの考え方ですね。
5.退職した上司・先輩は、むしろ良いメンターになり得る
Q&Aの流れで改めて「退職した上司・先輩」は、キャリアにおいて良いきっかけになると感じました。
現職の上司は、評価・組織事情・政治が絡みます。
良くも悪くも「タテマエ」というものがあります。
一方で、退職した上司や先輩は、利害関係が薄いですし、社外の目線も兼ね備えています。転職活動の経験もある。
本音で話しやすい
今の会社を相対化して見てくれる
社内では言いにくい話もできる
「辞める/辞めない」以外の選択肢も出てくる
私も昔、退職した上司にキャリア相談や、この人にどう思われているだろう、なんて話をした記憶があります。
ロールモデルの話もウェビナーの中で出てきましたが、そういった話を相談してもいいかもしれませんね。
6.まとめ:明日からのToDo
まとめとして、「正解探しをやめるための手順」というのを自分なりにまとめてみました。
私自身、管理職として部下と1on1することがあるので、メンター側の視点でも活かしてみたいと思います!
キャリアは「重い」でいい
ネガティブ感情は否定しない。
紙でもメモでもいいので、いまの感情をラベル付けして書く。
「コントロールできる/できない」を分ける
コントロールできる:学ぶ/会いに行く/社内で動く/試す/相談する
コントロールできない:景気/組織改編/上司ガチャ/AIの進化速度/他人の評価
「譲れないもの」を決める
健康、家族時間、住む場所、収入の下限、働き方…
他人視点で自分のキャリアをとらえてみる
事実:職歴、担当領域、得意/不得意、いまの制約(時間・体力・家庭など)
争点:何が不安?何が嫌?何がしたい?
社会資本を活用してみる(「棚」を探す)
「棚の下に立つ」は“待つ”ではなく、まず自分から動く(会いに行く/小さく試す/好奇心で覗く)
社内の「棚」:社内営業、横串PJ、他部署への接触・異動検討
社外の「棚」:法務互助会、勉強会、交流会(わかほう)、退職者ネットワーク
自分の「棚」:書籍などの勉強、セミナー
メンター/ロールモデルは分割する
例:
仕事の進め方:Aさん
マネジメント:Bさん
キャリア:Cさん(退職した上司・先輩がキャリア面で良い相手になることが多い)
AIは「壁打ちのアシスタント」として使う
AIは便利な一方で、決断を委ねると振り回される
上述した内容を整理して入力し、壁打ちに使えばよいアウトプットが得られる
例:棚卸し
私は企業法務◯年目で、担当は◯◯です。自己分析に必要な要素を3つ挙げ、確認質問を5つしてください。回答に応じて強みの仮説も出してください。
例:選択肢整理
制約条件(時間/勤務地/収入下限/家庭)を踏まえて、現実的な選択肢を3案出し、それぞれのメリット・リスク・最初の一歩を提案してください。
25/12/31 続きの記事です。
