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鉄道の高速化・直通化に甘える保護者による大学生の離学リスク上昇に関する一考察


話のきっかけは

こちらのポストと、私が現職で日々深夜業務に苦しめられる元凶の1つである教務委員(2年目/2年任期)の経験に基づくものです。
(おかげ様で(?)、正式に二型糖尿病が確定しました。HbA1c7.2(7/30時点))

 現職の我が学科は、コンピュータとのにらめっこが当たり前の学科です。いわゆるVDT耐久作業教育状態になっています。PCやスマホの利用は当たり前。そうなると、学生の質も二極化します。ものすごく勉強する学生と、生成AIに授業課題や期末レポートを丸投げする「単位泥棒」学生。当然、後者は絶滅させるべき対象と思っています(物騒な物言いですが)

相棒の生成AIに描かせてみた。教育機関の皆様、ご自由にお使いください。

 その一方、我が学科は毎月の教務委員会で提示される離学率では大学全体のワースト1~2位を争うレベルです。昨年度は5%どころか、学年によっては7%台もありました。毎月1回の教務委員会や教授会で数字が報告される度に、公開処刑的な気分で苦々しく感じておりました。今年度は数字だけ見ると比較的3%台におさまってきたかのように思えましたが、最近、どうもそうはいかないような兆候も…?(機密保持のため詳細は言えません)。原因の多くはメンタル疾病によるもの。経済的理由よりも多いくらいです。
 更に、私の職場は大都市圏の郊外にあるので…

の論文で示されている「定員割れする私大」の条件にドンピシャ当てはまってしまうのです。当事者の一人としては、とても共感します。否定する理由が見つからないレベルです。これで、学生が大学で学ぶ明確なモチベーションが無ければ、更に深刻な事態になるだろうな…と。

 そんな中、ある程度離学しやすい学生の傾向の1つとして「通学時間」というキーワードが頭に残りました。そして、最初に引用したポストのとおり、通学時間が40分を超えるあたりからメンタル疾病率が急上昇する、というデータが示されています。それが、2つ目の引用ポストにつながり、結果として離学が進む…という仮説です。これを打ち崩すためには、学生が大学で学ぶことの目的意識を強く持ってもらうためのアピールを常々続けなければなりません。 私の研究室も例外ではありません。卒研生達とわいわい楽しみながら、その上で学生の希望を取り入れつつチャレンジングな研究に取り組んでおりますが、そのモチベーションを学生達に与え続けるには、私自身が査読論文を量産する体制をいつまで続けられるか…という心身の調子に依存している部分も正直あります。
 とはいえ、卒業研究に至るよりも早期に学生が離学してしまう…特に、高校までは真面目に通っていた学生が大学に入った途端にメンタル疾病で離学するという現実は、日々教務課から報告を受ける度に、教務委員として常に心を痛め続けております。

これから進路を決める生徒さんの保護者の皆様へ伝えたいこと

 ここで、教務課からの報告を受けて、ひとつの仮説が自分の頭の中に思い浮かびました。
「鉄道の高速化・長距離直通ダイヤが大学生の離学率に対して負の影響を及ぼしている側面もあるのではないか?」
 例えば、現職場は大阪の東の果てにあるのですが、駅からは徒歩16分やバス15分(渋滞無し状態)とかなので、とりあえず最寄駅までの時間は倍を見込みましょう。30分と仮置きします。
 次に、離学した学生達の通学時間を確認してみると、多くの場合片道2時間オーバー。北は…何ともですが、南は和歌山市、東は米原市、西は姫路市や加古川市から通学してくる学生が現にいます。現に、うちの卒研生にも西の方から2時間以上かけて通学する卒研生がいます。最寄駅までの時間をカウントしたら…自分だったらくじけます。こりゃ大変だ。
 とどめに保護者へ問いたいのは、「大学生が通学時間中に、列車内でパソコンや勉強道具などを広げて自学自習出来ると思っていますか?」答えは間違いなくNOです。そんな自学自習ができる設備を持った列車に乗れるくらいの経済的な余裕があるのなら、独り暮らしをする方が絶対に安いです。勉強するにしても、ただでさえロングシートが大半(都市部ならほとんど)の現状、過疎化したローカル線のようなボックス席がたくさんあるんですかね?少なくとも、ノート広げて勉強するなら、ボックス席くらいの余裕が無いと無理です(高校時代の経験談)。ただでさえ古い日本人の標準体格で設計されたロングシートで、現代人が肩を狭めあいながら座り、そこでノートPCを広げられたら周りへの迷惑が大変極まりない状況になるのは予想がつくでしょう。つまり、「通学時間≒無駄な時間」なのです。片道2時間以上、往復4時間以上を無駄に立っているか寝ているかスマホで遊んでいるか。もし、帰宅してから課題をこなそうとすれば、今度は慢性的な睡眠不足に陥り、授業では教員の話を聞かずに眠り続け、果てはメンタル疾病の引き金となります。睡眠不足や長時間通学はメンタルヘルス悪化との関連が多く報告されていますので、決して甘く見てはいけません。
 
そして、ひとたび通学ルートで人身事故や車両故障などで長距離速達列車が運行できない状況になれば、通学途中で足止めをくらいます。並行する路線があって振り替え輸送があったとて、通学時間は更に長くなります。その結果、授業への遅刻や欠席も常態化しやすくなり、試験問題以外の授業中の小試験などで成績不振に陥りやすくなります。なお、関西圏における人身事故発生率は、R5年度のデータでは合計133件。2~3日に1件は関西圏のどこかで人身事故が発生している単純計算です。(引用元:https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/content/2022-0316-1745.pdf)
 まとめると、「通学時間という名の無駄な時間を、成績向上につながる授業の課題をこなす時間に充てられたら、大学生活がどれだけ楽になることか。その現実を無視している保護者は、いずれ学費という名の大金をドブに捨てることになる」と主張します。

 現職場がある関西圏において、これらの共通項はなんだろう…と、思ったら…

  • 速度が速い快速以上の長距離列車がたくさん運行している

  • 接続駅こそ多いが、意外に乗り継ぎ時間(駅構内の徒歩移動時間+列車待ち時間)が長い

の2点。関西圏でぶっちゃけて言えば、

  • JR東海道線(京都線以西)の新快速

  • JR学研都市線・東西線・福知山線の快速

  • 京阪や南海の無料速達車両

あたりが候補となります。前職はローカルな普通列車か日本最速新幹線の超極端二択のエリアなので、そこから来た身としては、片道2時間オーバー通学は「個人的には正気とは思えません(すみません)」。
 通勤定期が概ね3割引きに対して通学定期は概ね7割引きです。大学のそばでの独り暮らしと比べたら、安いものです。定期≦家賃です。しかし、前述のメンタル疾病発症リスクによる離学は、親目線で見れば「年100~150万円の学費と子どもの将来をどぶに捨てるのと同義」なのです。私も年頃の息子を養っておりますので、その感覚は決してぶれていないと信じています。
 そういう観点から「月々の支出が増えてでも独り暮らしさせた方が健康的に生きられて、学業もおさめられやすい」のではないかと、私は考えます。

当然、大学側もやるべきことがある

 現在、どの大学もそうかもしれませんが、離学率を減らすために、

  • 授業アンケート

  • 内部質保証という名目上の書類点検行為

  • 出席を成績評価から除外する

  • 成績評価を毎週のレポートを中心にする

  • 出席管理システムを導入する

…などの施策がとられることがあります。全て、末端の教員ばかりが負担を強いられる施策です。これらで明確に離学率が減った、なんていう科学的根拠を示した査読論文は、私が調べた範囲ではお目にかかったことがありません。大学によっては、離学しそうな学生へのバラマキ的施策(学生アルバイト的な施策)をしていた私立大学も耳にしております(どことは言いません)。果たして、これらが「科学的根拠を持った施策」なのでしょうか。自動車を売るためのインセンティブ施策じゃないんだから。どこのN社の北米子会社なんだよ、と。前述で引用したポスト2つだけでも、上記の5項目は何の意味もないことがわかるかと思います。共通点がゼロです。学生目線で嬉しいことは何もないと感じます。

 ならば、大学側がやるべきこととしては、前述の科学的根拠に基づくならば、私は2点提案します。

  1. 独り暮らしをしやすくするために地元自治体やアパート管理者などと協定を結ぶ(学生を対象に家賃を月2万円程度下げてもらう)

  2. 独り暮らしの学生向けに朝晩の食堂を営業してもらう

いわゆる「進学する学生の独り暮らし促進策による学業のケア」をするべきではないかと私は考えます。
 また、地元自治体との仲が悪い大学は、前述のような施策も打てないでしょう。そういう状況が続く間に離学者を増やし、高校から大学へ生徒を進学させてもらえず、あと20年を待たずに募集停止・閉学に追い込まれる可能性が急増すると推察します。そんなことを考えつつ、現職場の上層部を見てみると…え~…うん…まぁ…「そういうとこだぞ」
(と、単身赴任中のアパートから、お偉いさん方がいるフロアをにらみつける)

最後に

 私も速達特急乗り鉄の端くれなので、別に鉄道を恨んではいません。えぇ、”全く”恨んではいません。
 大学教員として保護者へお願いしたいのは、『通学定期が安いから』という理由だけで遠距離通学を選ばないでいただきたい、ということです。目先の生活費は抑えられても、その代償として学生本人が心身を壊し、離学に至れば、学費も時間も将来の可能性も失うことになります。そのリスクの予測結果までを含めて、進学先を選んでいただきたいです。
 最後に、私の主張ポストを貼って締めます。

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