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【職人の日誌】ボロボロになった思い出に、もう一度温もりを。「ぬいぐるみ再生」の現場から


ビフォア
アフター

「おかえり、ずっと待っていたよ」

先日、お直しを終えた一体のクマのぬいぐるみを、持ち主様のもとへお返ししました。 箱を開けた瞬間の持ち主様の笑顔を想像しながら、この数ヶ月間の「手術」を振り返り、日誌として書き留めておこうと思います。

1. 「諦めかけていた」という言葉を受け止めて

工房にやってきたとき、そのクマの子は長年の愛用によって、お鼻の周りの生地が大きく破れ、中の綿が見えてしまっている状態でした。手足のパーツも欠損しており、まさに「満身創痍」。


持ち主様からは、**「もう元通りにするのは難しいかもしれない……」**という、切実な思いが綴られたお手紙が添えられていました。


私たち職人にとって、ぬいぐるみは単なる「物」ではありません。 それは、代わりのきかない大切な「家族」であり、積み重なった「思い出」そのものです。 「この子の本来の姿を取り戻そう」。スタッフ一同、そう心に決めて作業をスタートしました。


2. 「洗う」のではない、汚れを「リセット」する

まずはクリーニングから始まります。 しかし、生地が弱っている状態でそのまま洗うのは厳禁。まずは丁寧に「養生(補強)」を施し、破損が広がらないよう細心の注意を払います。

※画像は他のぬいぐるみの画像です。



私たちが使うのは、無添加の天然石けんと、洗浄力を高めるマイナスイオン軟水。 合成洗剤ではなく天然石けんにこだわるのは、お子様が抱っこしたときの安全性はもちろん、素材を傷めずに汚れを芯から落とすためです。


職人の手によるブラッシングを経て、低温でじっくりと自然乾燥させると、汚れに埋もれていた毛並みが一段明るく、清潔なトーンへと蘇りました。


3. ミリ単位で向き合う「パーツの再生」

今回の最大のお直しポイントは、欠損したお口周りの復元です。 元の生地が失われていたため、膨大な種類の生地の中から、元の質感や色味に最も近いものを厳選して仕入れました。

お顔の印象は、わずか数ミリのズレで変わってしまいます。 お預かりした時の写真や、過去の元気だった頃の姿を何度も見返し、型紙を調整。新しいパーツを丁寧に縫い合わせていきます。


「前の表情と変わらない、いや、前よりも可愛くなって戻ってきた」 そう言っていただけるよう、一針一針に魂を込めます。


4. 抱き心地という「温もり」を詰め直す

最後に、古くなってヘタってしまった綿をすべて取り出し、新しい抗菌・防臭効果のある綿へと入れ替えます。

綿を詰める作業は、ぬいぐるみに「命」を吹き込む作業。 お鼻周りのふっくらとした立体感、ギュッと抱きしめた時の弾力……。 お客様のご要望に合わせて、「柔らかめ」や「しっかりめ」など、抱き心地までオーダーメイドで調整し、ようやく「本来の姿」へと近づくことができました。


5. 職人として思うこと

今回の修理期間は約3ヶ月。総額で25,910円という、決して安くはない「手術」です。 それでも、**「この子と一緒に過ごせることが本当に嬉しい」**という言葉をいただけた時、私たちの苦労はすべて報われます。


「買い替えればいい」という時代だからこそ、私たちは、買い替えのきかない宝物のために、これからも技術を磨き続けたい。


もし、あなたの大切な「家族」が傷ついて悩んでいたら、いつでも相談してください。 私たちはここで、あなたと、あなたの思い出の帰りを待っています。



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