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【職人日誌】150cm超えの「特大ぬいぐるみ」がシャキッと自立するまで。クリーニングと体型修復の裏舞台

こんにちは。ぬいぐるみのクリーニングと修理を担当している職人です。

先日、工房に「大仕事」がやってきました。大人の身長ほどもある、それはそれは立派な特大のぬいぐるみ。オーナー様からは「全体的に左に傾いてしまって、手もだらんと垂れて元気がない。元のシャキッとした姿に戻してほしい」という切実なご依頼でした。

長年愛されてきたぬいぐるみは、中綿が移動したり潰れたりして「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」のような状態になってしまうことがあります。

今回は、この子が再び堂々と胸を張ってオーナー様の元へ帰るまでの、3日間にわたる修復の記録を綴ります。


1. 【クリーニング】スタッフ3人がかりで3時間。中まで濡らさない職人技

特大ぬいぐるみの洗濯は、一般的な衣類のように洗濯機へ……というわけにはいきません。中に大量の綿が詰まったまま丸洗いすると、芯まで乾かずにカビや悪臭の原因になってしまうからです。

■ 汚れの「部分落とし」からスタート

まずはお尻の下や、よく触れる部分の目立つ汚れを集中的に落とします。その後、天然石けんの泡を使い、毛並みを傷めないように優しく、かつしっかりと全体をブラッシングしていきます。

■ 30秒に一度の「拭き取り」の連続

泡立てた洗剤が奥の綿まで染み込まないうちに、固く絞ったタオルで素早く拭き取る。この作業を、今回はスタッフ3人がかりで、丸3時間ノンストップで繰り返しました。最後に柔軟剤で仕上げ、じっくりと時間をかけて乾燥させます。これだけで、くすんでいた毛並みに本来の輝きが戻ります。

2. 【原因究明】なぜぬいぐるみは「左に傾き、手が垂れる」のか?

乾燥が終わったら、いよいよ体型修復(整形外科手術のようなものです)に移ります。 触診(手でくまなく触る作業)の結果、傾きと手の垂れ下がりの原因がはっきりと分かりました。

  • 手が下がっている原因: 胴回りから脇の下にかけての中綿が、重力や抱っこによって下へ偏っていたため。

  • 体が左に傾いている原因: 首周りと腰回りの中綿がへたり、左側のボリュームが極端に減っていたため。

原因が分かれば、あとは適切な場所に、適切な量の新しい綿を補充していくのみです。

3. 【手術・綿入れ】合計10箇所の切開。腕を差し込んで奥まで綿を届ける

ぬいぐるみの綿入れは、外側の「元の縫い目(解き口)」を探すことから始まります。

■ 人の「腕」が入るサイズまで解く

特大ぬいぐるみの奥深く、例えば足の付け根や首元まで綿を届けるには、指先だけでは足りません。元の縫い糸を慎重にカットし、大人の腕がすっぽり入るくらいの「穴」を作ります。

■ 10の穴から、大量の新しい綿を調節しながら投入

今回の作戦で開けた穴は、合計10箇所。 顔、首、両脇、腰、手足の付け根……。それぞれの穴から手を入れて内部の偏りをほぐし、新しい綿を押し込んでいきます。

ただ詰めればいいわけではありません。詰めすぎればガチガチになって可愛らしさが消え、少ないとまたすぐに傾きます。「手の感触」だけを頼りに、左右のバランスと抱き心地をコントロールする、ここが一番の職人技です。

脇の下にしっかりと綿が満ちると、だらんと垂れていた手が「シャキッ」と持ち上がりました。

4. 【縫合・完成】触っても分からない「コの字閉じ」で魔法をかける

綿入れが終わったら、開けた10箇所の穴を閉じる「縫合」です。 ぬいぐるみ修理において、最も大切な鉄則があります。それは「外から見ても、触っても、どこを縫ったのか絶対に分からないように仕上げる」こと。

「コの字縫い(はしご縫い)」という特殊な技法を使い、毛足を巻き込まないように一針ずつ細かく縫い閉じていきます。

10箇所すべてを閉じ終わり、ブラシで毛並みを整えると……。

前傾姿勢でうつむき、左に傾いていた姿が嘘のように、背筋がピンと伸びた堂々たる姿が復活しました。手も綺麗に上がり、まるでお客様の帰りを待ちわびて喜んでいるかのようです。

職人のあとがき

特大ぬいぐるみは、お部屋にあるだけで家族のような存在になります。だからこそ、へたってしまったからとお別れするのではなく、こうして「お風呂(クリーニング)」と「リフレッシュ(綿補充)」をしてあげることで、また何年も一緒に過ごすことができます。

もし、あなたのお家にある大切な「大きなお友達」が元気をなくしていたら、ぜひ職人を頼ってくださいね。

ぬいぐるみクリーニング&修理 デア

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Q1. 特大ぬいぐるみのクリーニング期間(納期)はどれくらいかかりますか?

A. 通常、3週間〜1ヶ月程度のお時間をいただいています。 特大ぬいぐるみは、生地を傷めないよう職人が手洗いで丸1日かけてクリーニングを行います。その後、中綿の芯まで完全に乾燥させるために数日間の自然乾燥期間を設けています。さらに綿入れや縫製補修の工程が加わるため、小さなぬいぐるみに比べてお預かり期間が長くなります。梅雨時期など天候によって前後する場合もございます。

Q2. 中の綿を補充すると、肌触りや抱き心地が硬くなってしまいませんか?

A. いいえ、元々の風合いに合わせて綿の量を職人が微調整するため、ガチガチに硬くなることはありません。 当工房では、弾力性と柔らかさを兼ね備えたぬいぐるみ専用の高級ポリエステル綿を使用しています。「元のふんわり感を残したい」「今回はしっかり自立させたい」など、オーナー様のご要望に合わせて綿の詰める密度(硬さ)をコントロールしますのでご安心ください。

Q3. 150cm以上のサイズでも宅配便で送ることは可能ですか?

A. はい、配送可能です。ただし梱包に少しコツが必要です。 一般的な段ボールに入らない場合は、大きめのビニール袋を二重にして包み、その上から市販の「布団袋(不織布製など)」に入れて紐で縛っていただくと、大型サイズでも宅配便(佐川急便やヤマト運輸の大型便など)で安全に発送していただけます。輸送中に濡れないよう、防水対策だけしっかりとお願いいたします。

Q4. 完全に破れて中綿が出ている状態でも、クリーニングと修復は両立できますか?

A. はい、全く問題ありません。先に破れを塞ぐ補修をしてからクリーニングを行います。 生地が破れたまま洗うと、中の綿が流れ出てしまい大変危険です。そのため、まずは職人が破れ部分を仮縫い、または本縫いでしっかりと塞ぎ、強度が確保できた段階でクリーニング工程へと移ります。生地自体の劣化が激しい場合は、裏側から補強布をあてるメンテナンスも同時に行います。

Q5. ぬいぐるみの「クリーニングだけ」「綿入れだけ」の片方だけでも依頼できますか?

A. 綿入れ(修理)のみのご依頼はお受けできません。クリーニングとのセット、またはクリーニング単品での受付となります。 長年愛されたぬいぐるみには、目に見えなくても皮脂汚れやダニ、ホコリが蓄積しています。汚れた状態のまま生地を解いて手を入れると、雑菌がさらに奥へ入り込んでカビや異臭の原因になるだけでなく、職人の手元での正確な型崩れチェックができません。清潔で衛生的な状態にしてから修復を行うため、修理を行う場合は必ずクリーニングをセットでお願いしております。

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