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🟥Red Genesis 🟥Zero第三話|セルと呼ばれた日―エデン重度患者隔離施設―

エデン隔離施設

◆エデン重度患者隔離施設

瀬野衛は、ごく普通の高校一年生だった。

しかし一年前、政府から脳波異常と診断され、この施設へ治療のため送られた。

自覚症状はない。

だが数値は改善されず、ついには重度病棟の個室へ移されていた。

まるで独房のような部屋だった。

セルの病室

ベッドに横になり、本を読んでいると、隣の部屋から少女の声が聞こえた。

衛が顔を上げる。
いつの間にか、目の前に少女が立っていた。

「君、いつの間に僕の部屋へ?」

おかっぱ頭の少女は八歳ほどに見える。

深い黒い瞳。幼さの残る顔立ち。さらさらとした髪が肩にかかっていた。

少女は静かに答える。

「セル。私が君の部屋に来たのではない」

「だって、いるじゃないか」

衛は辺りを見回した。

すると、見覚えのないクマのぬいぐるみが目に入る。

自分の部屋とは、置かれている物が違う。


セルの前に現れた少女とクマのぬいぐるみ


「……ここは君の部屋?」

「そうだ。私と、この子の部屋だ」

少女はクマのぬいぐるみを指差した。

その瞬間だった。

何かを言いかけた衛の口元に、少女がそっと指を当てる。

ガチャン。

ガチャン。

扉の解錠音が響いた。

「診察の時間です」

衛は時計を見る。

確かに自分の診察時間も近い。

慌てて周囲を見回すと、少女が耳元で囁いた。

「大丈夫。今日は君の診察はない。だから今は静かにして」

衛は息を呑む。

扉の向こうでは、アンドロイドが何事もないように通り過ぎていった。

本来なら衛の部屋を訪れるはずなのに。

少女の部屋と、自分の部屋をまとめて飛ばしていった。

「もう声を出していい」

「一体、何が起こっている?」

「空間を書き換えたんだ」

その言葉と同時に。

椅子の上に置かれていたクマのぬいぐるみが、一人の少年へと変わった。

クマのぬいぐるみの代わりに現れた少年


「……君は?」

突然現れた少年に驚き、衛は振り返る。

「僕はカノンだ。狩野賢」

衛は深く息を吸い、落ち着こうとした。

「カノン。いつ来た?」

「さっきからいたよ。君には見えなかった?」

「セルって僕のこと?」

「瀬野衛だろ。だからセル」

衛は立ち上がる。

「そんなことより、どうやってこの部屋へ入ったんだ?」

「だから、さっきからずっといた」

そう言うと、カノンは再びクマのぬいぐるみになった。

「……えっ?」

衛が言葉を失う。

少女は笑いながらクマを見た。

「遊ぶな、カノン」

すると再び少年が現れる。

「君だって初めての時は、こんな顔しただろ?」

カノンは笑った。

「セルをからかうなよ」

衛は苛立ちを隠せず声を荒げる。

「君たちは一体何なんだ!」

少女の表情が真顔になる。

「あまり時間がない。端的に話す」

幼い外見とは裏腹に、大人びた口調だった。

「私は今、珊瑚という名を使っている。能力は封印と開放だ」

「能力?」

「君を含め、この隔離棟の人間は全員、脳波制御不能と診断された者たちだ」

珊瑚は淡々と続けた。

「処分対象者でもある」

「処分……?」

衛の背筋が冷たくなる。

口にした瞬間、最悪の予感が現実になった気がした。

「ああ。今月、この病棟の患者は全員処分される予定だ」

沈黙。

そして珊瑚は衛を見つめた。

「だから、君の力を貸してほしい」

衛は二人の顔を交互に見た。

カノンが肩をすくめる。

「僕の能力は認知操作だ。空間そのものは変えられない」

「だからアンドロイドは騙せても、この部屋からは出られない」

「能力があるから閉じ込められているの?」

衛が尋ねる。

「違う」

珊瑚が答えた。

「脳の振れ幅が大きすぎて、システムにバグを起こしているだけだ」

「君たちの話、本当に意味がわからないよ」

衛はベッドに腰を下ろした。

だが不思議と、「セル」と呼ばれることに懐かしさを感じていた。

珊瑚が続ける。

「私の能力で君のブロックを外した」

「その結果、君は空間を捻じ曲げられるようになった」

「空間?」

衛は眉をひそめる。

「ああ」

カノンが微笑んだ。

「僕と違って、本当に物理的に歪めるんだ」

衛は珊瑚を見る。

「つまり、君が僕の能力を解放した?」

「察しがいいな、セル」

珊瑚は笑った。

「なら我々をここから出せ」

「どうやって?」

珊瑚は隣に座る。

「目を閉じろ」

衛が従うと、珊瑚は額を重ねた。

セルに額を当てる珊瑚


頭の中へ何かが流れ込んでくる。
身体を離そうとしても動かない。

「もう少しだ。待て」

やがて額が離れた。

その瞬間。

衛の頭の中に、施設全体の構造が広がる。

「これは……?」

「建物の見取り図だ」

珊瑚が答える。

「君は場所がわからないと移動できない」

視界の中に、空間が揺らぐ裂け目のような場所が見えた。

「君は、その切れ目を移動できる」

次の瞬間。

気がつくと、部屋の外にいたセル


衛は扉の外に立っていた。
驚いて辺りを見回す。

すると壁の向こうから珊瑚の声が聞こえた。

「看守が来る。戻れ」

衛は声の方向へ意識を向ける。

視界が揺らぐ。

気がつくと、再び部屋の中。

目の前には珊瑚とカノンが立っていた。

珊瑚は静かに告げる。

「わかっただろう」

「それが君の能力だ」


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