遭遇「マッチ売りの少女」(不条理SS14)
ごく普通に、いつもの道を歩いていた。
すると声をかけられた。
「もしもし」
妙齢の女性だ。
爽やかな笑顔。
宗教か?
「あの」
それとも逆ナン?
「マッチはいかがですか?」
まさかの‘’マッチ売りの少女‘’!!!
せめてライターにして欲しかった。
ライターでも、僕はタバコを吸わないので必要ないけど。
よく見ると、彼女が手にしていたのはチケットだった。
マッチのコンサートチケット?
うーん、微妙。
手を伸ばすと、手の中にはポケットティッシュが。
そのまま手を引かれて道端のテーブルの前に連れて行かれた。
座った。
目の前には茶髪の青年。
「今お使いの携帯料金は、月々おいくらですか?」
なるほど、そう来たか。
目に必死さが宿っている。
僕はもらったティッシュで鼻を噛んでみた。
使い心地は悪くない。
このまま黙って立ち去るか、青年の話し相手になってやるか。
僕はスマホでその日の予定を確認しながら考え始めていた。
悪くない気分だ。
「さっき、ドトールでモーニングしてきたんだけど、やっぱりAセットが王道かな」
僕はこの状況を楽しむことにした。
青年はポカンと口を開けて僕を見つめている。
危ない人間、厄介な奴には関わりたくない、と顔に書いてある。
「そちらドコモさんですか?」
青年は僕の手にあるスマホを見て、もう一度僕の顔をチラ見してから口を開いた。
なんとかマニュアルどおりの会話に戻そうと必死だ。
しかし僕は、スマホをさん付けで呼ばれたため混乱していた。
仕方ないので、勝負球を放った。
「いや、たまにはCセットも良いかな、なんて思うんだけどね」
青年の顔から完全に表情が消えた。
「お疲れ様でした」
青年は僕にポケットティッシュを渡して、話を終わらせる方向に導いた。
僕は導かれるままに立ち上がり、歩き出した。
先程の妙齢の女性がまたティッシュをくれた。
僕はポケットティッシュ3個を左手に、右手にはスマホを持ちその場をあとにした。
しばらく歩くと、5メートル程先でおじさんがティッシュを配っているのが見えた。
僕は、左手のティッシュをポケットにしまい、臨戦態勢で突き進んだ。
悪くない日だ。
◇◇◇
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