弥生の雪
暖房はつけなかった。
ニュースでは都心に舞う雪の映像が流れている。
さほど寒いとは感じなかったが、うちのほうは霙、霰、雹の類らしい。
パチパチと窓ガラスにぶつかる音。
稲光には気づかなかったが、確かに春雷も鳴っていた。
ここ数年は春の訪れが早めだ。
そして、桜が散ると間なしに初夏になる。
私の好きな秋は来るのが年々遅くなり、昨年などはあっという間に冬になった。
四季のなかで、一番好きなのは晩秋から初冬。
寒さに向かう季節が好きだと言うと、ちょっと変わった人だと思われる。
世間では、春の気配や夏の予感に心ときめかせる声が多い。
私が春夏に心躍らなかったのは、GWや夏休みが楽しくなかったからかもしれない。
学校や会社が休みなのは嬉しいけれど、家庭もさほど居心地がいいわけでもなく、どこに行っても行楽客であふれる季節。
一人暮らしになってからは、一人で気ままにいられる家こそが、どんな旅先よりも心地良い。
故郷に轟く「ぶり起こし」は北陸に冬の到来を告げるものだが、春雷もまた冬がここで仕舞われるというしるしなのか。
明日を境に、ソメイヨシノは一気に開花に向かっていくのだろう。
今年も名所でないところで花を見たい。
一昨日は、花粉が「極めて多い」という最悪ランクの情報の中、認定日だったのでやむなくハローワークに行った。
先週買ったちょっとお高めの花粉症防止グラスをかけて。
買った甲斐があった。
花粉防御率99.9%という謳い文句は、あながち誇張ではないと感じさせるほど、痒みを感じなかった。
普通のメガネでも6割から8割くらいの花粉を防いでくれるそうだ。
近隣のショッピングモールが今月末で閉館となるので、明日もこのメガネをかけて出かけようと思う。
明後日は、ようやく重い腰を上げて、仕事の面接の予約をひとつ入れた。
来月からは失業給付もないので、残高が減る一方になるのは、経済的にだけでなく精神的にもよろしくない。
お金がなくなっていく不安と、確実に発生する仕事のストレスや疲労とを天秤にかける。
4月からは、光熱費のほかにもたくさんの商品の値上げが予定されている。
またかよ。
定収が得られる仕事が決まってほしいような、ほしくないような複雑な気持ち。
行きつ戻りつしながらも季節は確かな歩みを進めるが、世界ではいつ終わるともしれない戦争が続いている。
交渉が始まっただけでもマシなのかもしれないが、停戦合意も、我が国の政治公約と同様、破られるものと思っている。
融けない雪より、季節外れの雪のほうがマシなのか。
いずれにしても「マシ」という言葉の持つネガティブな響きは、悲観論に傾きがちの私にしても、さすがにうんざりする。
ニュースでは、推し活が動かす莫大なお金の話をやっている。
世界のあちこちで攻撃も止まず、国内の政治も混迷しているというのに、昨夜のトップニュースは、大谷さんだった。
活躍は喜ばしいが、推しのない、というかこれまでで持ったことのない私は、「なんだかなぁ」と「すごいなぁ」のせめぎ合いの中で、小さくため息をつく。
写真はベラスケス「目玉焼きを焼く女」(の絵葉書)
卵も高い。
卵を我慢しても、美術館には行きたいと思っている。
